4/25に紹介し仕事で使った「盛漆(さかりうるし)」。漆かきの時期は、初夏〜秋(地方や流儀によって微妙に時期は異なる)ですが、おおまかに分けて、初夏の漆を「初漆(はつうるし)」真夏の漆を「盛漆(さかりうるし)」秋の漆を「遅漆(おそうるし)」と言います。(呼び名は地域でやや異なりますが)
一般的には、時期によってそれぞれ特長の違う漆が採れるように木を作ります。
この中でもっとも高品質とされるのがこの“盛り漆”なのです。(一般的に“高品質の漆”とは、ウルシオールが多く水分が少なく硬化後の塗膜が非常に美しい樹液のことを差す。こういった漆は、最も強度に優れ、乾きが遅い。)
ではなぜ、真夏に一番いいうるしが採れるのか?
ちょっとイメージを膨らませて下さい‥ たくさんの太陽の光、高い気温、適度に絞り込まれた水。夏は一年の中で、木が大きく伸び、元気な葉を付け、いっぱい光合成をする時期です。“うるし”は木の樹液。この季節にいちばん内容の濃い漆樹液が、ウルシノキの中で作られる条件が揃うのです。
真夏のうるしの木でのうるし掻きの様子。
(岩手県浄法寺町、大森俊三氏、8月撮影)
木の幹に逆三角形に重ねられた、掻き傷が見えるでしょうか?
ところで今年手に入れた、最高の盛り漆がこれです。
“盛り”の時に採ったうるしだから、必ず高品質とは限りません。自ら漆かきをし、自分で使う松本が「これぞ」という漆を指定して手に入れます。
この漆の分析結果もありますので、ごらん下さい。
=== 分析結果 ===
盛り漆(生うるしの状態)
ウルシオール 80,79%
水分 13,42%
ゴム質 4,81%
含窒素 0,97%
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先日、紹介した“枝漆”がウルシオール63%、水分30%でしたからその差は歴然としています。(採取した人は同じ大森氏です)
このブログのカテゴリ「工房の仕事」で紹介した、作業中の器の写真です。形はぜんぜん違いますが、同じトチ材で、作業も同じ木地固め1回。使った漆以外は、同じ状態のものです。
まず「色がずいぶん違う」と、お思いになりませんか?
奥の黒に近い色の器が“枝漆”、手前の明るい色の器が“盛り漆”をそれぞれ木地固めに使ったものです。こうした明るく透ける漆はたいへん貴重で、高品質を示す特長の一つでもあるのです。