先日紹介した刷毛の切り出し/1の作業の続きです。
全通しの刷毛を、横から見て凸型に切り出しました。

全通しの刷毛を、横から見て凸型に切り出しました。
切り口の真ん中に鉛筆等で等分線を引き、印をつけます。
(これが刷毛先の基準線になる)
今回は「上塗り用の刷毛」を作っているつもりなので、刷毛先は切りっぱなしではなく鋭角に削ります。極端に言えば、凸を△の形にするのです。

等分線を基準に、鉋(かんな)で削ります。


方法を変えて、今度はノミで毛の方向に
刃物を動かして削ることにしました。
かなりの力をかけて削り整えるのでが、刷毛の毛である髪の毛が糊漆でそうとうガッチリ固めてないと削れないのです。

気に入った刷毛先に削れたようです。
記した等分線は、髪の毛2本分ほど残して仕上げます。
等分線の両側は同じ角度になるよう削ります。角度を変えると、刷毛のコシにむらができ、均一に塗ることが出来なくなります。

こうして触ってみるとこんなに柔らかい…。がっくり。
最近、というか近年流通している刷毛は、毛を固めている糊漆が柔らかくて刷毛の切り出しがまともにできないものがほとんどです。
私が研究生の時に買った刷毛も柔らかく、しかも毛に“隙き間”があって「ハズレだー」と思った経験があります… が、これは不良品というわけではなくて、あまりにも漆刷毛の需要がなくなったので刷毛を作る職人さんも、その当時でさえ“日本で数人”という単位くらい少なくなって、良質な刷毛の生産が難しくなっている事情があります。
また、要の材料である良質の髪の毛の国内供給のシステムが崩壊し、中国からの輸入に頼っているのですがその量も少なくなってきたのも原因の一つだそうです。(髪の毛は全部使えるわけでなく、刷毛に向いた良質のものを厳選して使う)
かつては「日本の女性の髪は美しい」と言われていたのに…
こういった材料不足にはいろいろ背景があり、実際に丹念に取材してみないと全貌は分からないのですが、なんとも複雑な気分になります。
さて、次はこの漆で固まった毛をほぐす作業です。
(次回続く)