なぜ、
「漆の仕事では生活ができない」と言われるのでしょうか。
さてさて、まずは「漆の仕事」と言っても、いろんなケースがあります。
・漆の企業さん。(漆器の量産販売をする会社、工房が小規模な企業となった会社など形態は様々です)
・漆の職人さん。(工程が細分化されているので多くの職種があります)
・漆の作家さん。(美術工芸家、クラフト、木工等、作風や師事する先生によっての系統があります)
・漆に関連する仕事。(漆の道具の制作、漆掻き等)確かに、どれをとっても難しそうなものばかりです。
事業の規模が大きいと大きいなりの厳しさが、小さいと小さいなりの厳しさがあります。(たいへんだ…

)
では、なぜ厳しいんでしょう??
実際に詳しくリサーチしたわけでもないのですが、しばらくこの世界を見聞して感じるのは、この不景気もありますが、やはり伝統工芸のお客さまが少なくなったことでしょうか。
本物を見極める目を持った方、嗜好がはっきりしてそれをとことん求める方が、減ったことが大きく関係しています。
そんなお客様が少なくなると、材料の良し悪しはだんだん問われなくなってきます。そして質のよい漆、いい漆の副資材も需要がすくなくなり、するとそれを生産されている所は疲弊して、仕事を畳むことになります。(こういった技術は一度途絶えるともうもとには戻りません)
そういった伝統工芸の底辺を支える部分がぜい弱になって、やがて漆工芸全体が閉塞していくことになるように思います。

(とはいいつつも、お客さま自体が減っているので、全体の顧客層が沈んでいるといえます)
そんな状況で、昔はできたいわゆる「のれん分け」、弟子や分家の子供に仕事と顧客を分けるという余裕もなくなってしまい、広がることも難しくなりました。ということは、ますます先細りという自体になっていきます。
……そんな状況に、なんの理由もなくいきなりなったわけでなくって、ちゃんと歴史背景があるのですが、また別の機会に、ということで…。
また、漆をされる方が「食べて行けない」と言われる理由に、別の見方もできます。
個人でのお仕事の場合なのですが、漆工芸というと特殊な匂いがしますが、突き詰めればフリーの自営業なのです。なので、当然、営業や宣伝、信用、人とのつながりというものが欠かせなくなります。
だから、そういった観念がないまま「漆工芸は特別な仕事だ」と考えて漫然と物づくりをしているだけでは、行き場のない作品がたまる一方になることに…。
また、そうは思っていなくっても、いわゆる物づくりばかで、そういったおつき合いが苦手な方も難しかったりすることもあると感じます。(でもそういう方の作ったものはけっこう面白かったりして…)
さてさて、ごく表面的なことを、思いつくまま書いてしまいましたが (^_^;)(たぶん、同じ疑問を持っている方と話をしたらきっと話題が尽きないことでしょう)
「食べていけない」と言われるゆえんは、社会全体の事情とそして漆工芸という、一見特殊に見える仕事とどう向き合うか、という個人の姿勢との両方が、関係しているように思います。
でも、こういった状況は、漆工芸に限らず他の工芸、そして他の分野の職種にも言えることかもしれません…。
とにかくこういったことを「食べていけない」と嘆くだけではなくって、前向きに「知ってもらおう」という努力は忘れないようにしたいなあと思います。
posted by 宮崎佐和子 at 14:14|
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