2007年07月07日

■茨城の視察研修会で見た、茨城うるしの現状。

文化庁の委任団体「日本うるし掻き技術保存会」は、岩手県浄法寺町に事務所があります。竹内さんや松本のように、若い研修生を受け入れて、うるし掻きの後継者育成にも力を入れるようになったのは平成9年から。今年ではや10年目、計20人の若手を育てたことになるんですね。晴れ

今回の視察地の茨城県は、岩手県に次ぐうるし樹液産地
視察研修会は、準会員を中心にほぼ毎年、行われています。
今回は「浄法寺以外のうるし産地を見学して、情報交換したい」という希望が通って、視察地が茨城になりました。
今回は茨城の様子を視察させていただくのと同時に、今まで保存会と茨城の結びつきが弱かったので、若いうるし掻き後継者たちがうかがうことでお互い活気が出るきっかけになれば…という願いもあったのです。

7/7保存会研修生1
さて今回の参加メンバー。準会員(元研修生)と今年の研修生たちの8人と茨城の漆かきの飛田さん・神長さんです。

7/7保存会2
そして案内していただいた、茨城県大子町の西金うるし生産組合・奥久慈山方漆生産組合の方々。(うしろの二人は、松本と保存会の瀬古君です ^^:)

7/7保存会3
大子町にある漆畑の見学。若手で荻房の富永さんが今年掻いています。木は岩手のものとは雰囲気が違って、やっぱり南(中四国)の漆の木に似ています。右の男性は、西金うるし生産組合の飛田さん。
松本は2年前に文化庁の研修でもお世話になりました。

7/7保存会4
茨城の漆かきは、4辺目でした。

7/7保存会6
苗床の見学。岩手と違って分根で増やしています。
植えて10年以内で確実に漆が採れる、
現実的な苗作りをめざしています。
(岩手は実生。分根は親の性質をそのまま受け継いだ苗ができる)


7/7保存会7
あの「壱木呂の会」の主軸でもある荻房さんで。
ろくろを見学させていただきました。

7/7保存会9
推定樹齢50年のウルシの木。記念樹です。
みんなが見られる所(なんと小学校・中学校の間)
にあるのが産地らしくって、いいなあ〜。^^


日本で2番目の生産地、といわれる茨城県ですが、
しかし慢性的な後継者不足で、現在プロとして漆を採っているうるし掻き職人さんは、たった二人なのです。当然、生産量も多くありません。
直視するのがつらい現実がそこにあります。
「1年で1キロの国産漆を使おう」と漆芸家の方々が集まってできた会『壱木呂の会』では、毎年、この茨城の漆を使っています。この会の発足に関しての言葉に、茨城をはじめとする日本産うるしの現状について端的に述べられているので、よろしかったらごらん下さい。 ※壱木呂の会

短い日程でしたが、今回は出席率もよく、松本もひさびさに漆かきの仲間に会えてとても嬉しそうでした。
専門学校を出れば、誰でもすぐプロになれる訳でないように、漆かきを学んだ仲間もすぐ漆かきでやっていくのは厳しいです。また、どんなスタイルにしろ、ビジネスプランを立ててそれなりの下ごしらえが要ります。
でも、誇りと夢があれば、なんとかやっていけるような気が…。
主義主張は違えど、やはり同じ「日本産うるし」にかかわる仲間と将来の夢を語り合えたのは、松本もとっても刺激になって楽しかったらしいです。(工房に戻ったら、私と現実的な話ばかりになるもんネ。^_^;)

少しでもこの現状が良くなるよう、頑張っていこうという思いを新たにしました。


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posted by 宮崎佐和子 at 19:36| Comment(3) | TrackBack(0) | ■ 日本うるし掻き技術保存会

2007年07月06日

■松本が茨城の視察研修会から戻りました。

香川県は、ずっと雨…。
この梅雨らしい雨続きで、さすがに早明浦ダムもやや貯水率が戻りつつあるらしいです。
そんな雨降るなか、松本がぶじ茨城から戻ってきました。(しかも帰りの夜行バスに乗り遅れて、結局けさ新幹線にて… わ〜予算が ^^;)
ご報告は明日にでもしたいと思います。
 
7/6保存会
袋田の滝の前で。(松本は撮影者)


さて、修理に出していた愛用のパソコン・シロ子(ibook)がやっと戻ってまいりました。
ただし、ロジックボード交換されて真っ白な状態になってしまったので、今までのメールの内容とかデスクトップのデータ、インストールしたアプリもすべて白紙! がく〜(落胆した顔)
使えるような状態まで、復旧作業にとても時間がかかりそうです。

マッキントッシュのOSはやっぱり9が一番安定して調子いいなあ。
このシロ子の後継者が欲しいのですが… もう新品もユーズドもあまり流通していないそうなんでちょっと心配です。

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posted by 宮崎佐和子 at 22:26| Comment(2) | TrackBack(0) | ■ 日記

2007年07月05日

■インドネシアの古い籠。

高松のギャラリーさんの企画展にて6年ほど前に購入しました。
収集家の方がインドネシアの民家で見つけたもの。骨董までは古くないものですが、実際によく使われていたもので(角とかちょっと擦り切れています)少し補修されて、そっと置かれていました。

7/5かご1
なんとも優しいフォルムです。
(以前見た是川遺跡の赤い籃胎漆器の籠を思い出して…)

生活の道具だっただけあって、実際に使い勝手のいい籠でした。
ちょっと大事なもの(工房の器とか)を入れて運んだり、軽食を包んだり、着替えをそっと入れたり…。
ゆったり「包む」というような、やさしい気持ちになれます。

7/5かご2
編みの細かい取手。
7/5かご3
蓋は「かぶせ」になってるんですね。
そして気づかないほどのさりげなさで
籠本体は、二重になっています。

7/5かご4
この二重籠、意外なところで重宝するんです。
急に荷物が増えた時とか、さっとはずして別々に使えるんですよね。(以前の持ち主もそうされていたんでしょうか)
二つ重ねになってることで、柔らかく軽いけどしなやかな丈夫さを感じます。大きさが変わらないので、すっと簡単に二重に重ねられるのが、今でもとっても不思議なんです。

7/5かご5
編み目の美しさに見入ってしまいます。


この「編む」という仕事、私も漆芸研修所の研修生時代に習いました。香川漆器には「籃胎(らんたい)漆器」があり、重要無形文化財保持者の先生がいらっしゃいます。
これはどういったものかというと、竹をひごに裂いて整え器に編んだものを胎とし、それに繊細な蒟醤をほどこすという仕事なのですが、あまりにも高度な仕事で、軽く凹ませただけの造形・編みも簡単なあじろ編みだったにもかかわらず「ほんとうに仕上がるのか」と夢にまで出そうだったなあ。あせあせ(飛び散る汗) (松本は『お〜藍胎は面白かったな』とか言ってましたが←彼は研究員に行ってるので2回作った)
そのせいか、こういった編んだ器には、時々目が離せなくなっちゃいます。

そしてこの古籠、「素材はなんだろう」といつも思ってしまいます。きっと現地の植物なのでしょうね。
香川の籃胎漆器は真竹を使うのですが、ハリがあるので硬質で精密なフォルムになります。このインドネシアの籠は、もっとおだやかな素材なのでふわりとしたかすかにたわんだ形になるんでしょうね。(そういえば、是川遺跡の籃胎漆器を編み上げている素材は、見学に行った当時は学芸員さんが「分からない」と言っていました。なんとも神秘的です)
この「編む」という世界、漆と強く関わりがあるのですが、とても奥が深そうです。

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posted by 宮崎佐和子 at 18:21| Comment(4) | TrackBack(0) | ■ お気に入り

2007年07月03日

■漆の芽を採ったあと…。

今年の4/4に、工房の庭の木から拝借したウルシの芽のてんぷらを賞味しました。
そのあと、大事な芽を採られた枝がどうなっているかというと…。

7/3漆の芽を採ったあと。
こんな感じ。新しい枝葉がしっかり茂って
葉っぱをめくらないともう分かりません。

芽を摘まなければ、そこから枝が伸びていたんだろうけど…。たぶん、これからは横から出た枝が本枝になっていくのだと思います。

7/4漆の葉1
真夏の葉っぱ。風で傷んでゴワゴワです。
(まるで柿の葉っぱみたいな感じだなあ)

不思議な事に、どうも今年は虫たちが少ないような気がします。庭に出ても、あんまりドラマに遭遇しません。どうしてだろう…?

・・・・・・


さて、さっそくですが松本は今晩、香川を発ちます。
日本うるし掻き技術保存会の、視察交流研修会に出席するのでした。
これは、保存会の準会員(つまり漆かき長期研修生として、研修終了した人)の集まりで、若い後継者たちが集まります。
今回の視察地は、茨城…。
日本で2番目の大事な漆樹液産地の今年の様子と、若さあふれる漆かきを習得した貴重な仲間たちをご紹介できると思います。わーい(嬉しい顔)


7/3ミノムシさんおまけ。
ウルシの葉っぱの陰のミノムシさん。


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posted by 宮崎佐和子 at 18:17| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ ウルシの木の記録

2007年07月02日

■日本産漆と中国産漆の違い。

「日本産漆と中国産漆って、どんなふうに違うんですか?」

私たちが、お客様や取材の方とお話するとき、どうしても上記のようなご質問を必ずといっていいほどいただきます。
でも、これって一言でお答えするのが難しいのです…。
それは両国のウルシが、同じ土俵で比較できないからです。

そして、同じ文章のご質問の言葉でも、問いかける方によって、知りたいと思っている意図が違うのを感じます。

「日本産漆と中国産漆の違いはなんですか?」

これには、
1「一般人には同じように思える漆だけど、どこが違うのか」という方、
2「日本産の優れている部分を知りたい」という日本人らしい意識で聞かれる方、
3「わざわざ日本産を使う意味を知りたい」という気持ちがこめられている方
…のだいたい三様があると感じます。
その方向によって、答え(私たちの考え)の内容も違ってきます。

<1の場合>
・DNAが違う
DNAの違いはすなわち、品種の違い、産出されるウルシ樹液の性格の違いにつながります。
・性質が違う。それに伴い、展開する技法が違う。
  日本産漆/塗膜が堅くて薄い(蒔絵に向く)
  中国産漆/塗膜が柔らかくて厚い(堆漆に向く)
「蒔絵の加飾だけは、上質の日本産漆を使わないといけない」といわれるゆえんです。そして中国産漆は、やはり中国漆芸の技法の物を作るのに合っているのです。
・漆の扱い方が違う。
日本産漆は扱いが特殊です。中国産漆で慣れた方が日本産漆100%で仕事をしようと思ったら、それまでしていた道具を変え、感覚を全く変えてしまわないといけません。

<2の場合>
日本産漆のよい所をあげれば、こういった点があげられます。
・塗膜が堅く、密着度が高い。
・表情が繊細で美しい。

どちらも特筆すべきもので、特に丈夫であるのは、国産漆がたっぷり使われた古い骨董の椀は壊れにくく、時代の新しい明治昭和の椀はぼろぼろの物が多い事でもいくらか想像ができます。

<3の場合>
これは私たちの仕事のポリシーについての疑問かな。^^;
・価格が違う。
数倍〜10倍くらい価格の差があります。
これは大きいですね… (もうこれだけで使おうと思う人は、うんと少なくなります)
それでも私たちがこの仕事をしているのは、やはり日本産漆が魅力的なこととそして〈日本人のやせ我慢〉といったところでしょうか。


犬に例えれば、日本産漆は「秋田犬」。中国産漆は「チャウチャウ犬」でしょうか。
同じイヌでも、まったく見かけも気質も違います。
ただ、やっぱりチャウチャウ犬より秋田犬の方がしっくりくるわ、という方が多いのではないでしょうか。そういった素直な感性ってやっぱり大事だと思います。具体的な数値では計れない「気持ち」って、やはり最後まで裏切れないからです。

さてさて、内容が大きすぎるので、これでも今回はごく表面的なことしか書けませんが…。
そういえば、漆器を扱うお仕事をされている方が「中国産漆が、というより今は中国というお国柄がちょっとねえ〜」と話された方もいらっしゃいました。(なるほどあせあせ(飛び散る汗)

それにしても、いつも「日本産VS中国産」という構図になってしまうのは、どうしてかなあ…。ふらふら 安易な比較は難しいんだけど…。


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posted by 宮崎佐和子 at 12:37| Comment(15) | TrackBack(1) |   思うこと
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