私たちが、お客様や取材の方とお話するとき、どうしても上記のようなご質問を必ずといっていいほどいただきます。
でも、これって一言でお答えするのが難しいのです…。
それは両国のウルシが、同じ土俵で比較できないからです。
そして、同じ文章のご質問の言葉でも、問いかける方によって、知りたいと思っている意図が違うのを感じます。
「日本産漆と中国産漆の違いはなんですか?」
これには、
1「一般人には同じように思える漆だけど、どこが違うのか」という方、
2「日本産の優れている部分を知りたい」という日本人らしい意識で聞かれる方、
3「わざわざ日本産を使う意味を知りたい」という気持ちがこめられている方
…のだいたい三様があると感じます。
その方向によって、答え(私たちの考え)の内容も違ってきます。
<1の場合>
・DNAが違う
DNAの違いはすなわち、品種の違い、産出されるウルシ樹液の性格の違いにつながります。
・性質が違う。それに伴い、展開する技法が違う。
日本産漆/塗膜が堅くて薄い(蒔絵に向く)
中国産漆/塗膜が柔らかくて厚い(堆漆に向く)
「蒔絵の加飾だけは、上質の日本産漆を使わないといけない」といわれるゆえんです。そして中国産漆は、やはり中国漆芸の技法の物を作るのに合っているのです。
・漆の扱い方が違う。
日本産漆は扱いが特殊です。中国産漆で慣れた方が日本産漆100%で仕事をしようと思ったら、それまでしていた道具を変え、感覚を全く変えてしまわないといけません。
<2の場合>
日本産漆のよい所をあげれば、こういった点があげられます。
・塗膜が堅く、密着度が高い。
・表情が繊細で美しい。
どちらも特筆すべきもので、特に丈夫であるのは、国産漆がたっぷり使われた古い骨董の椀は壊れにくく、時代の新しい明治昭和の椀はぼろぼろの物が多い事でもいくらか想像ができます。
<3の場合>
これは私たちの仕事のポリシーについての疑問かな。^^;
・価格が違う。
数倍〜10倍くらい価格の差があります。
これは大きいですね… (もうこれだけで使おうと思う人は、うんと少なくなります)
それでも私たちがこの仕事をしているのは、やはり日本産漆が魅力的なこととそして〈日本人のやせ我慢〉といったところでしょうか。
犬に例えれば、日本産漆は「秋田犬」。中国産漆は「チャウチャウ犬」でしょうか。
同じイヌでも、まったく見かけも気質も違います。
ただ、やっぱりチャウチャウ犬より秋田犬の方がしっくりくるわ、という方が多いのではないでしょうか。そういった素直な感性ってやっぱり大事だと思います。具体的な数値では計れない「気持ち」って、やはり最後まで裏切れないからです。
さてさて、内容が大きすぎるので、これでも今回はごく表面的なことしか書けませんが…。
そういえば、漆器を扱うお仕事をされている方が「中国産漆が、というより今は中国というお国柄がちょっとねえ〜」と話された方もいらっしゃいました。(なるほど

それにしても、いつも「日本産VS中国産」という構図になってしまうのは、どうしてかなあ…。
