収集家の方がインドネシアの民家で見つけたもの。骨董までは古くないものですが、実際によく使われていたもので(角とかちょっと擦り切れています)少し補修されて、そっと置かれていました。

なんとも優しいフォルムです。
(以前見た是川遺跡の赤い籃胎漆器の籠を思い出して…)
(以前見た是川遺跡の赤い籃胎漆器の籠を思い出して…)
生活の道具だっただけあって、実際に使い勝手のいい籠でした。
ちょっと大事なもの(工房の器とか)を入れて運んだり、軽食を包んだり、着替えをそっと入れたり…。
ゆったり「包む」というような、やさしい気持ちになれます。

編みの細かい取手。

蓋は「かぶせ」になってるんですね。
そして気づかないほどのさりげなさで
籠本体は、二重になっています。

この二重籠、意外なところで重宝するんです。
急に荷物が増えた時とか、さっとはずして別々に使えるんですよね。(以前の持ち主もそうされていたんでしょうか)
二つ重ねになってることで、柔らかく軽いけどしなやかな丈夫さを感じます。大きさが変わらないので、すっと簡単に二重に重ねられるのが、今でもとっても不思議なんです。
この「編む」という仕事、私も漆芸研修所の研修生時代に習いました。香川漆器には「籃胎(らんたい)漆器」があり、重要無形文化財保持者の先生がいらっしゃいます。
これはどういったものかというと、竹をひごに裂いて整え器に編んだものを胎とし、それに繊細な蒟醤をほどこすという仕事なのですが、あまりにも高度な仕事で、軽く凹ませただけの造形・編みも簡単なあじろ編みだったにもかかわらず「ほんとうに仕上がるのか」と夢にまで出そうだったなあ。

そのせいか、こういった編んだ器には、時々目が離せなくなっちゃいます。
そしてこの古籠、「素材はなんだろう」といつも思ってしまいます。きっと現地の植物なのでしょうね。
香川の籃胎漆器は真竹を使うのですが、ハリがあるので硬質で精密なフォルムになります。このインドネシアの籠は、もっとおだやかな素材なのでふわりとしたかすかにたわんだ形になるんでしょうね。(そういえば、是川遺跡の籃胎漆器を編み上げている素材は、見学に行った当時は学芸員さんが「分からない」と言っていました。なんとも神秘的です)
この「編む」という世界、漆と強く関わりがあるのですが、とても奥が深そうです。