今日は、松本が高松の実家に行ってきました。
お目当ては「黒田水銀朱」。
ごっそり、そのお宝の山

を善通寺の工房に持って帰ってきたのでした…!

これが黒田水銀朱。古いもので木箱にぎっしり入ってます。
ほこりをかぶってますが、これがなかなか貴重なものなのです。

今日のナビゲーターはむぎ君です。
『ウチに来た荷物は僕のチェックがいるんだよ』

木箱を部屋に担ぎ込むなり、猛烈なむぎチェックです。
(そしてそしらぬ顔でごはんをがっつくうり坊…)
この木箱、小ぶりですが1箱
15キロの重量があります!
さて、気をとり直して…


漆、といえば黒か朱色がまず頭に浮かびますが、漆本来の色は飴色です。これに着色をして黒や朱の美しい色を出しているわけですが、漆は古くから使われている素材だけあってその顔料はさまざまな種類があります。そして、それらはそれぞれ独特の色味を持っているのです。
※朱について
佐々木英著「漆芸の伝統技法」より引用させていただきます。
朱… 古くは天然に産出する辰砂(中国の辰州から多量に産出したので、この名があります)を使っていましたが、現在は同じ成分の硫化水銀から人工的に生産されます。天然の朱は産出した場所によって異なるのか、古い漆器の朱色には特長が見られます。
人工的に生産される朱は『銀朱』といいます。水銀と硫黄とを混合し、硫化水銀をつくるところからこの名があります。
つくるときの加熱温度により、本朱(紫紅色)、洗い朱(朱色、橙色)ができます。本朱、洗い朱赤口、洗い朱黄口、洗い朱淡口と、顔料が分かれていきます。
透き漆(木地呂漆、朱合い漆、梨子地漆、素くろめ漆)と混合させます。…(以下略)なにやらおだやかならぬ語句も並びますが…。
この黒田水銀朱がなぜ貴重かというと、もうずいぶん前に生産が終わっているから。
それで今は入手しづらくなっているヴィンテージ的な存在の朱ですが、たいへん美しい朱漆を作る事ができるのです。
さて、松本が未開封の木箱を開いています…!


わわっ、一面の黒田朱が…!
タイムカプセルを開くような気分です。

今回、持ち込んだ朱たち。
左二つが一番多く入っていた、黒田朱。(製造時期が違うのか、箱の色が違います)
真ん中が「ダイヤカラー」という見慣れない銘の朱で、少量数入ってました。(松本も実家で使っているのを見たことがないので、おそらくサンプルとして当時購入したのだろうということで、松本は全く興味がなさそうでした…)
右のが「竹屋」の紅色です。これは朱ではないですが、とても美しい赤色の漆ができます。
さて、これらの貴重な黒田水銀朱を包んでいた昭和の新聞紙も、なかなか見入ってしまうものがあります。

日付けが昭和49年…!
私も松本も生まれてますが
物心つくかどうかの頃ですね。
(テレビの広告も懐かしいものが…)
工房では、普段使いできる漆と見て楽しむ漆、両方を作るようにして多くの方に見ていただけるよう少しずつ仕事を続けています。
これらの美しい水銀朱たちは、きれいだけどやはり普段使いの器には使わないようにしています。(見て楽しむ器や、漆絵画などには使っています。この朱を使って描く
朱つばきがたいへん美しいのです)
さて、こんなに大量の朱を持ち込んだのには訳があり、これらの朱を使って美術工芸品としての漆も力をいれていこうと考えています。
日本産漆の中でも、高品質な漆にとって、この朱との出会いは欠かせないものだと思うのです。
形となるのは、そうとう先の事となりますが…、少しずつ準備をして輪郭をはっきりさせていきたいです。
今日は、古いものをひさびさに間近で見て触れて、手や床がざらざらになってしまいました。笑
無邪気な猫たちは古新聞に飛び込んで大はしゃぎ。軽い興奮状態におちいって、なんだか落ち着かない一日の締めくくりとなりました。

『…それにしても、こんなもののどこが
いいのか分からないにぃ〜

』
本日のむぎ君のコメントでした。^^
posted by 宮崎佐和子 at 23:59|
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