2007年11月09日

■maさんの浄法寺漆かき体験記/1

この夏は、浄法寺に漆掻きの短期研修生として、本当にたくさんの方が浄法寺に行かれました。その中のひとり、maさんの浄法寺体験をご紹介したいと思います。
maさんは、東京の漆器専門ショップ「輪島キリモト」にお勤めです。
事の発端は…
今年6月に工房が東京で作品展をした時、会場の同じフロアにショップがあり、会期中に松本と意気投合。
「私も漆かき、見てみたい!」と彼女が言うのに、松本が「おお〜行け行け〜保存会は短期でも研修受けられるから!」と粉かけ。彼女は本当にそれを2ヶ月後に、実行しちゃったというわけです。(このノリ、いいですね)

日本一の漆樹液産地の岩手県浄法寺町。
そこで行われる「うるしかき」には、いろいろなドラマが詰まっています。
竹内さんや臼杵さんたちからも、漆掻き研修生としてのお話を聞いたりその内容を一部この「和うるし日記」でもアップしているのですが…
いかんせん、松本をはじめ職人気質の男性からはイキイキとした現場の雰囲気や素直な感動を汲み上げるのが難しく(笑)「うーんもっとフレッシュにとりあげたいものよ…」と思っていたところ、彼女から「浄法寺、行ってきましたよ」と嬉しい連絡があったのです。
「ねえ、体験記を紹介してもいい?」とお願いしてみたら「私みたいに5日間しか行っていない者の体験でいいんですか?」とmaさんは快諾してくれました。


では、前置きはこのくらいにして…
maさんの研修報告書を引用し、私の解説も加えながら、さっそくこの5日間の漆かき体験記を紹介したいと思いますexclamation


maさん
maさん。
「浄法寺に行ってきました〜!」


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2007年8月21日(火)

●佐藤春雄さんの漆掻きを見学(一戸町来田/約90本/13辺)
 ・漆掻きの流れについて
 ・道具の使い方について


朝6時ごろ、夜行バスで安代に到着し、そのまま佐藤さんと合流して、さっそく漆掻きに向かいました。すごく山奥でびっくりしました。(ma)

maさんの初めての漆掻きの講師は…
浄法寺でもベテランの漆掻き職人の佐藤春雄さんです。(現在、岩手県浄法寺漆生産組合の組合長さんでもあります)

8/21佐藤春雄さんの漆畑
約1時間車で走り、細い山道を抜けると
漆の木が広がっている林に到着しました。(ma)

maさんたちのまわりの木は、ほとんどウルシです。(ほぼ平地で、うるしかきがしやすそう…)
ここは山の中に見えますが、たいていはもと畑なのです。
「うるしかき」をする漆の木は、自生しているものではありません。地主さんやうるし掻き職人さんが苗を育てて、計画的に植栽しています。そういった「漆山」「漆畑」があちこちにあり(時には青森などの県外まで)、その年の漆掻き計画で、漆を採る場所や本数を決めて、初夏からもう準備をはじめるのです。

8/21佐藤春雄さんの漆掻きを見学
まずは、今日の講師・佐藤春雄さんの仕事を見学。
東京から来ていたデザイナーさんも一緒です。


初めて、漆が皮からにじみ出るのを見た時、何とも言えない興奮に包まれました。手際よく一定のリズムで進められていく作業風景に、佐藤さんの身のこなしにただただ見入ってしまいました。
手際よく一定のリズムで進められて行く作業風景。佐藤さんの身のこなしにただただ見入ってしまいました。後半に、佐藤さんがカンナ(注※ 漆の木の幹に傷の溝をつけるためのU字型に刃先を曲げた刃物)を入れて下さったのをひいてキズを実際につけさせていただきました。
力を入れ過ぎても曲がってしまうし、弱すぎても途中で切れてしまうしで想像以上に難しく、奥の深さを痛感ました。(ma)



仕事中の佐藤春雄さん
とても76才とは思えない佐藤さん。
軽い身のこなしに驚かされました。
1日山の中を歩いて、健康でないと
できない仕事だと思いしらされました。(ma)


午後7時頃に作業終了、そのあと、佐藤さんの自宅で採集した漆を樽に移すところも見学させていただきました。
最後は、丁寧に道具を油で洗って、本日は終了となりました。(ma)


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さて、この漆の採集あとの仕事ですが…
maさんの採った写真をもとに、仕事の解説をしようと思います。^^


漆を貯蔵している、杉材のうるし桶、五貫樽。
中央に黒字で「風代 ふうたい」と書いていますが、これは桶自体の重量をさします。(容器の素材が天然物なので、重さが一定ではなく最初に計っておきます)
また、桶にはタテに黒い筋が書かれていますが、この位置で蓋と身をあわせる目印になっています。
8/21漆の桶
この桶も、すぐには一杯になりません。
最盛期と言われる夏で一日400〜600匁くらい。
採った漆は、いっぱいになるまで注ぎ足していきます。

採った漆の計量。
8/21漆の重量を計る
佐藤さんは、バネ計りで今日の収穫を計ります。(これもタカッポ<=カキタル>の風代分の重さを事前に引いています)使う計りも、人それぞれなんだとか。(松本はデジタル計量器を使用)

そして職人さんによっては、ノートに記録を取り、その日のデータ(場所、天候、温度、湿度、採取量など)をきちんと書き付けて残します。
それは後年、同じような天候の年の時に参考にするのです。(ただ、やみくもにやっているわけではありません)


さて、今日の収穫を桶の中に流し込んでいきます。
8/21漆を桶に移す。
桶の上には「カケゴ」と呼ばれる桟をかけておきます。
流し込める漆が落ちきったあと、写真の佐藤さんが右手に持っている「ゴーグリ」と呼ぶ刃物で、タカッポの中の漆を取り、「カケゴ」でこそいできれいに桶の中に落とし込むのです。


漆を移し終わったら、道具の掃除。
これを怠ると漆が乾きついて、道具が台なしになります。
8/21道具のそうじ
フジの枝の先を叩いて刷毛状にした道具を使います。
穂先に油をたっぷりと付けて、タカッポ(=カキタル)をよく洗います。
この際、いちばん丹念に洗うのは、中よりもタカッポのふち。漆を採る時、掻きヘラで当てる大事な所で、漆で固くせず常にソフトな当たり心地になるように、油でしっかり洗い、そして朝の仕事はじめに叩いて繊維をほぐしたりと、手入れに余念がありません。
このあと、タカッポは明日の朝まで逆さに置いておき、自然に油が落ちるようにしておきます。

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さて、ぶじに初日を終えたmaさん。おつかれさまでした。
一緒に見学する仲間にも恵まれて、たくさん楽しそうな写真も撮っていました。^^
明日もがんばってください。


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posted by 宮崎佐和子 at 19:20| Comment(0) | TrackBack(1) |   maさん研修報告(2007年)

2007年11月08日

■明日から「漆かき体験記」アップします。

今年、日本うるし掻き技術保存会の短期研修生として、5日間のあいだ岩手県浄法寺町で「うるし掻き」を体験した、輪島キリモトのmaさんの体験記をアップします。
毎日、1日ずつ出していこうと思います。
漆器店に勤めている都会の女性の新鮮な体験記、ぜひ見て下さいね。^^




posted by 宮崎佐和子 at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ お知らせ

■漆の木とカマキリさん。

今日から、立冬だそうですね。^^
香川県はまだ気温が20度近くあって、そんな実感はありませんが…。着実に季節は冬に向かっています。

11/8 カマキリさん。
漆の幹にとまっていた、カマキリさん。

おなかが大きいので、産卵する場所を探しているんでしょうか。(漆の木には、よくママカマキリが卵を産みます。※こんな感じです

5/7小カマ
今年の5月に見つけた
カマキリの赤ちゃん。

季節の移り変わりって、いいですね。


posted by 宮崎佐和子 at 19:38| Comment(4) | TrackBack(0) |   漆の木の住人

2007年11月07日

■漆フリーカップとかぼちゃプリン

11/7漆フリーカップとかぼちゃプリン1
おやつのかぼちゃプリンは、お店で買ったもの。
カップに移す時にくずれてしまいましたが、それもご愛嬌ということで…あせあせ(飛び散る汗)
夕暮れ時に逆光で撮ったの見えにくくなってますが、フリーカップは鎬の入ったものです。やっぱり少し鎬があると手にした時、ちょっと特別な気分になります。

11/7漆フリーカップとかぼちゃプリン2
本当にこのフリーカップとベビースプーンは、一緒に使うためにお互いがあるような感じ。きれいにプリンを残さずすーっと乗せることができるのです。

漆のスプーン、ここ数年で作られる作家さんが本当に多くなりました。^^ スプーンは、口に入れるものだけあって、漆のまろやかさが楽しめる本当にぜいたくな食器だと思います。
松本は「漆のスプーンがあれば、100円のプリンが贅沢なデザートになる」とよく言っていますが…。
今日は、ほんとうにそんなお茶時間でした。ムード






posted by 宮崎佐和子 at 20:46| Comment(2) | TrackBack(0) |   今日の漆フリーカップ

2007年11月06日

■うり坊の漆かぶれ、その後。

さて、猫なのに漆にかぶれてしまった、うり坊。
ずいぶんと苦しい思いをしたらしいですが(ずっと寝床に引きこもりでごはんもあまり食べなかった)今はすっかり元気です!

11/6うり坊1
お昼寝も、お気に入りの一番高い棚で…。眠い(睡眠)
(寝息が異様に太いうり坊…肺活量が大きいのかな?)

11/6うり坊2
かぶれた所はまだ痛々しいけど
乾いてかたぶたになってます。
もう新しい皮膚ができて、痛くないみたい。ほっ。

先週の月曜日に、行きつけの獣医さんに診てもらったのですが…(ついでに去勢手術の抜糸も完了)
私「あの…実はこの子、先週うるしの容器に足をつっこんでかぶれてしまったんですけど…」
医「ええ?うるし?…ありゃ〜こりゃひどいなあ。でもこの症状のお薬なら出せますよ。塗り薬はネコは向かないんで飲み薬で様子みてください」

11/6うり坊のくすり
いただいた内服薬。朝晩でお薬の内容が違います。
(ネコのバイオリズムに合わせてるんだとか…)

このお薬が、とってもよく効きました! 診ていただいて良かった。飲み始めて二日後には、うり坊はもう調子良くなって、ごはんを食べたりおもちゃをつついたりしてました。1週間経った今は、傷あと以外はまったく普通で、心配していた、生皮がむけるという痛々しい状態にはならずにすみました。
もちろん、お薬のおかげもありますが…野生児うり坊の体力はたいしたものです。

さて、元気になったうり坊。最近入ったストーブ横で
御満悦のむぎ君と、たまにこんな感じで過ごしています。
(手前がむぎ君。そういえばうり坊は初動画ですね。^^)↓

びっくりした〜!
びっくりした〜!
by waurusi


…それにしてもネコさんって、めんどうくさくなるとシッポで返事するって、本当ですね。^_^; 
とにかく元気になって良かったです。これからは気をつけてやらなくちゃ!

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posted by 宮崎佐和子 at 17:45| Comment(6) | TrackBack(0) | ■ 工房のネコ

2007年11月05日

■実は京都に行って来ました。

11/5京都の酒蔵
さて、おとといは、日帰りで京都に行ってました。
伏見区の酒蔵のたくさんある所です。シーズンだけあって、観光の方が大勢です。
11/5カッパカントリー
黄桜酒造さんの『カッパカントリー』。
地ビールと京おばんざいが楽しめるとか。


うーん、素通りするには惜しい所ですが…
私たちは観光じゃなくって、商用で行っているので、用事をすませたらトンボ帰り…。今日お会いした方に、試飲もできるお店なども教えていただきましたが、名残り惜しくも帰りの便に飛び乗りました。もうやだ〜(悲しい顔)

11/5船
柳並木の濠川の観光船。初めて見ました!
もうすっかり夕方でしたが…。いい景色が
眺められるんでしょうね。


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posted by 宮崎佐和子 at 19:25| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 日記

2007年11月04日

■「普段づかいの漆の器展」のお知らせ。

明日より、横浜の「ぎゃるりーげん」さんにて、高森寛子さん企画の「普段づかいの漆の器展」が始まります。
高森さんの新著書「うるしが、いいね。」の発刊記念催事の一つの作品展で、伏見眞樹さん・高橋敏彦さん・手塚英明さん他、著書でご紹介している作り手さんたちの器が展示されます。

11/4普段づかいの漆の器展
ほか、若手作家の作品の展示もあり、私たちも出展してます。
(スプーン、箸、弁当箱、お椀等)


『うるしが、いいね。』発刊記念催事
普段づかいの漆の器 展
2007年11月5日(月)〜11日(日)
ぎゃるりーげん
(東急東横線・大倉山駅より徒歩10分)
tel 045-543-2169 午前11時〜午後5時



posted by 宮崎佐和子 at 21:02| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ お知らせ

■広島の石社さんから印刀が届きました。

…また、松本の刃物ネタです。^_^;
広島の鉋鍛冶屋の石社さんに頼んでいた刃物が届いたのです。
松本はそれはもうウキウキ!
一日中、新しい刃物にかかり切りです。

11/4石杜さんから届いた刃物。
二分五厘の印刀。鋼はスウェーデンアッサブ炭素鋼。
c1.25〜1.28(k-120とは違うそうです)
地金は錬鉄。黒裏。


この印刀は、石社さんの刃物の特徴を知るためにまず手に入れました。石社さんの刃物を使うのは、初めてなのです。
松本がこの印刀を使ってみて、石社さんの焼きの加減を知り、新たに自分の刃物をオーダーするための基準にします。

11/4石杜さん刃物の刃先
松本が、少し研いでみました。

研いだ感想は…。
「砥石当たりがすごく柔らかく、非常に研ぎやすい。鋼の硬さはおそらく硬めで研いでも『刃返り』がすごく少ない。非常に締まった感じがする。木材に刃を当てても、カミソリのような頼りがいのない切れ味ではなくて、非常に締まった鋭い切れ味と安心感のある安定した刃味がする。(松本談)」
…とにかく、よく切れるし、松本も気に入ったみたいです。

11/4石杜さんの銘
石社さんの刻印。


11/4石杜さんの刃物を漆の木で柄入れ
今回の刃物の柄は「ウルシの木」です。^^


「次に注文する刃物は、もっと硬めにしようっと!」と松本はうれしそうに言っていますが… ええっ、次は何を作るのでしょうか。…そしていったい幾らかかるんでしょう?と、ちょっと不安な私でした。あせあせ(飛び散る汗)




posted by 宮崎佐和子 at 20:13| Comment(4) | TrackBack(0) |   道具

2007年11月03日

■「知と愛/ヘルマン・ヘッセ」

知と愛/ヘルマン・ヘッセ


ヘッセを読んだのは初めてです。
この「知と愛」は、とても美しくそして円熟した作品だったので、久しぶりに心打たれました。(原題はNarziss und Goldmund -ナルチスとゴルトムンド-)
この物語は、修道僧の学者の青年と放浪の芸術家の青年の友情を描いたもの。僧侶になるため父に連れられ修道院に入った少年が天性の芸術家であることを若い修道僧は見抜き、やがて少年は自分の内なる炎に気づいて奔走。放浪の人生を送るが、どんな状況にあっても二人は友でした。
彼は人生の大半を放浪して過ごしたうえ遅作だったので、残した作品はわずか。長年の不摂生のため、ペストの流行にも耐えた頑強な肉体も力尽き、修道院長になった友に見守られながら静かに短い人生を終えます。
彼は生涯かけてつくりたかったもの…胸の内に秘めたイメージ、それは母なる女性の像でした。ただしその母とは、生み出す母であり芸術に向かわせる母であり死に向かわせる母であり、しかもその「母」は、彼に自分の神秘をあらわにされるのを望まず、傷ついた彼の胸から指を入れて心臓を取り出そうと甘美な死の微笑みをたたえているのでした。(主人公は幼い頃に母と生き別れになっている)

キリスト教思想が背景にあり、なじみにくい表現も多々ありますが、表現をする人には、ぜひ読んでいただきたいと思います。

…さて、この中で私が興味深いと思ったのは、主人公の青年に表現の技を授けた、名工と言われた木彫家ニクラウス親方の存在。突然弟子入りを願って来た、二十歳過ぎの青年に「普通の弟子入りは13か14才、最低15才で修行に入るもんだ、ひげのある徒弟なんて見たことない」と言いつつも「俺もありきたりの親方じゃないし、あんたもありきたりの弟子でなくていいだろう」と迎え入れますが、頭でっかちなところがあり、むら気で手が遅く女癖の悪いこの青年を工房に入れたことをすぐ後悔します。笑 
それでも青年の仕上げた親友を模したヨハネ像が、彼の予想どおり素晴らしかったので、創造力の乏しくなってきた自分の仕事場の将来の後継者にしようと愛娘との縁談さえ考え、組合と話をつけて型破りな彼のためにいろいろ苦心するのですが…。
時代や国が違っても、こういった現場の苦労はどこも変わらないんだなあとちょっと苦笑いしてしまいました。

※:グーテンベルク21、新潮文庫発行

posted by 宮崎佐和子 at 17:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ BOOK
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