今日は初日とおなじ佐藤春雄さんの研修です。現地だけでなく、資料館や滴生舍に連れて行ってくれたりと、文化面を補強するとても考えたスケジュールにして下さったみたいです。
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2007年8月25日(土)
●佐藤春雄さん(浄法寺市浄法寺町)
・佐藤さんの漆かきを見学
・ヘラで漆を採る
・滴生舎・資料館を見学
早いものでもう最終日。
まずは、佐藤さん自宅近くの畑の際にある漆の木4本を掻きに向かいました。
数が(注※本数が)少ないのでなかなか掻けずにいたそうで、約30年経った幹はとても太く、漆も溢れるように採れました。(ma)

約30年の大きな漆の木です。
佐藤さんが梯子を使って高い所まで
丁寧に掻いていきます。(ma)
佐藤さんが梯子を使って高い所まで
丁寧に掻いていきます。(ma)
うーん、とっても立派な木です…。
もう浄法寺でもこんな大木はなかなかお目にかからないのではないでしょうか。きっと漆の木も、早くうるしを採ってもらうのを待っていたんではないかと思ってしまいます。

約60年経った漆の大木も見せていただきました。
佐藤さんが小さく見えます。この1本から普通の
30本くらいの量が採れたとのことです。(ma)

佐藤さんが小さく見えます。この1本から普通の
30本くらいの量が採れたとのことです。(ma)

最終日、ということで特別に今日は違う
場所の漆の木の、キズから出た漆をヘラ
で採らせてくれたんだそうです。
・
出のいい漆を手早くカキタルの中央に落と
すのは何度やっても難しかったです。(ma)
場所の漆の木の、キズから出た漆をヘラ
で採らせてくれたんだそうです。
・
出のいい漆を手早くカキタルの中央に落と
すのは何度やっても難しかったです。(ma)
それから佐藤さんがせっかくだからと勧めて下さり、滴生舍と浄法寺歴史民俗資料館を見学に。滴生舎では塗師の小田島さんが工房の中を見せて熱く説明して下さいました。
中でも、国産と中国産の漆の樽の匂いに違いにかなり驚きました! 国産がいかに匂いが少なく、良質かを再認識させられました。
資料館では、ビデオを観て、漆掻きについて復習することができ、頭の整理になり、良かったです。
今回の研修を通して、更に漆への関心が強まり、必ず守り通していかなくてはいけない文化だと強く思いました。
たくさんの方に良くしていただき、充実した研修でした。本当にありがとうございました。(ma)
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さて、maさんの見学した滴生舍をご紹介したいと思います。

浄法寺御山の天台寺のほど近くに建っている「滴生舎」は、浄法寺塗りを展示販売している施設です。

浄法寺塗りの工房を兼ねていて、作業を見学できるほか、漆絵付体験教室も行っています。
浄法寺歴史民俗資料館では、浄法寺の文化的な資料をたくさん保存しています。小さい施設なのですが、その生々しい資料品の数は圧倒的。古いお椀等もたくさんあります。

資料館の資料ではありませんが…
これは「ひあげ」と言われる浄法寺の片口。
maさんが泊まった「天台荘」にありました。
(天台荘は私も1ヶ月間お世話になりました)
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あっと言う間の5日間を過ごしたmaさんですが…
「大変だったけど、すごく楽しくてためになった。浄法寺の人にとても良くしてもらえた」と言います。
この体験をもとに、作る人とつなげる仕事をしたいそうです。
そして輪島キリモトでも「なにか発展させたいなあ」と。
いいですね。^^
楽しみにしていますよ!
さて、maさんのでっかい浄法寺みやげ。

佐藤さんが、最後に漆の木を切ってくれたそうです。
持ち帰るのが大変だったけど「いい記念になった」。
…今、その木は彼女の自宅玄関のオブジェになってます。

佐藤さんが、最後に漆の木を切ってくれたそうです。
持ち帰るのが大変だったけど「いい記念になった」。
…今、その木は彼女の自宅玄関のオブジェになってます。
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さて、maさんの5日間の漆かき体験記、いかがだったでしょうか。この体験記を寄せていただいたのに合わせて、maさんから写真と報告書を送っていただき、何度も彼女と連絡を取りあい、打ち合わせして、ずいぶん時間がかかってしまいましたが、ここまでまとめました。(体験記中の写真は、すべてmaさんより提供)
maさん、ありがとうござます!
そして本当におつかれさまでした。^^
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…思えば、私が最初に浄法寺に行ったのは、2000年。
今からもう7年も前のことです。
この体験記を見ながら、いろいろ感じたことがたくさんあって、とっても感慨深いものがありました。
一つは、当然なのですが浄法寺の漆かきさんたちが、うんと年を取ってしまったこと。もちろん、今も現役でがんばっており、ひよわな若い人にはまだまだ負けないと自負されてらっしゃると思いますが… やはり7年の間に老け、そして残念ですが実際亡くなられた方も何人かいらっしゃいます。(ベテランと若手両方…とても惜しい職人さんでした)
また、実際にお話していると、体の不調をふともらす方もよくおいでます。
今でこそ最高の漆掻き技術、そして浄法寺漆が簡単に見ることができますが、こうした産地の長い蓄積による余力も、みるみる衰えていくのが目に見えていて、やきもきする気持ちは隠せません。
そして、他に感じたこともあります。
浄法寺が外からのお客さんを受け入れるのがうまくなったなあ…と。笑
松本が行った時は、県外研修生は初めてで「四国?そんな遠くからなんでわざわざ何しに来たんだ?」と浄法寺の方に言われたもので(笑)、いろいろスムーズでないことも多かったのですが、今は短期研修で都会の女の子が一人で飛び込んでも、うまく受け入れ体制が機能しているようです。
そして一番大きいのは「日本産うるし」に世間の関心がかなり高まってきているということでしょうか。
研修生の定員枠は長期も短期も(長期は2名のみ)すでに先までいっぱいですが、松本の時は長期研修生も定員割れしている状態で、すぐ入れたものです。ほんとうにわずかの間に様変わりしているのを感じます。
時に浄法寺は、公共事業で、現在降って湧いたような「バブル」が始まっています。今まで顧みられずだぶついていた日本産漆は、にわかに脚光を浴び、今後数年間は一般には入手困難になります。
今まで見向きしなかった人・企業が急に「使いたい」と思っても、残念ながらもはや手に入りにくくなっているのです。しかし、それは仕方のないことかもしれません。「漆はいいものだ」と言う一方で、日本産漆を顧みずここまで産地を疲弊させてしまったのですから。急に必要だから、と言い出しても、漆の木はすぐ大きくならないし、漆かき職人さんは増えません。そして、「無いもの」の無理な要求は、産地を退廃させる原因を作ります。それだけは覚えていてほしいと思います。
この数年限りの「バブル」が、浄法寺にどんな影響を及ぼすのでしょうか…。
期待と不安をこめて、その結果に残った良いことも悪いことも、私たちはすべて、しっかりこの目で見て行こうと思います。