2008年03月31日

■箸の木地をけずる作業。

今日は、松本がお箸の木地を手削りしているところをちょっとのぞいてみました。^^

工房のお箸に、好評の「先細(さきぼそ)のお箸」というお箸がありまして…。
その「先細のお箸」用に用意した木地です。
3/31箸の木地1
以前、高松の材木屋さんで買い付けしたナラの材。
それをお箸の木地用に細長く切りました。

もちろん、このままだとただの長い四角い材なので、これからお箸用に手で削っていくのですね。

3/31箸の木地けずり1
まずは荒削りです。
用意した自作の治具に木地をセット。そして、鑿で少しずつ削っていきます。
3/31箸の木地けずり2
このように「面を取る」作業なのですね。
ていねいに削っていきます。

3/31箸の木地けずり3
少しずつ「お箸」の形に近づいていきます。


それからきちんと削り込んで成形し、鉋で仕上げ削り。
3/31手削りした箸の木地
こんな感じでしょうか。
「先細のお箸」ナラの木バージョンです。

3/31作った箸の先
箸先、そうとう細いです。
この木地では先端の太さは0.85ミリ。
(1ミリないんですね〜あせあせ(飛び散る汗)

今回手に入れたナラ材では、これぐらいが妥当かな…。
繊細に作るものなので、木地選びは吟味します。

この「先細のお箸」は、優雅な気分で使うお箸なのです。
例えば更科のおそばを一本、ぴっと引っ張ったり魚の小骨をピンセットのようにつまむことができます。
たいへん細いので、唇びるから抜くとき、とても心地いい。
そんなお箸です。

ところでお箸は、ちょっと前まではあまり積極的に作れなかったのですが、最近はいいお箸、手作りの気の行き届いたお箸を探される方との出会いが増えて、こちらもゆとりを持って材料を仕入れたり開発できるようになりました。
お箸の材(木)が変わってもおもしろいです。
いま、手がけているのはお箸の材は、クリ、ミズメザクラ、ナラ、カエデ、アスナロ。工房では、溜め塗り仕上げがほとんどなので、漆の飴色を通してそれぞれの木目豊かさを楽しむことができると思います。


さて作業の休憩中…。

3/31木工作業台で眠るうり坊1
なんとうり坊が、作業台の上で
熟睡しちゃってました。

3/31うり坊寝顔のアップ
木クズの上に乗っかって、鉋に頭をもたれかけて…。スヤスヤ 眠い(睡眠)
そんなに気持ちいいのでしょうか。


3/31むぎ君。さらにその後。→
うり坊が起きて出て行ったあと、なんとむぎ君が同じ場所に収まっていました! …どうも、ライバルうり坊が気に入った場所は確認してみないと気が済まないらしいです。



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posted by 宮崎佐和子 at 21:45| Comment(4) | TrackBack(0) | ■ 工房の仕事

2008年03月30日

■ウルシの新芽と工房の猫ミルミル。

今日は雨が降っています。
かなりの冷え込みで、日中もずっとアラジンストーブをつけていました。
最近はだいぶ暖かくなったので、昼間はストーブの火をを落としていることが多かったので「灯油がいらないなあ」とちょっと喜んでいたんだけどな。(来月からの燃料価格、気になりますよね)

さて、昨日はよく晴れていました。
しかも漆の木に赤い新芽が出ていたので、夕方松本が写真を撮っていました。

バッド(下向き矢印)これです。^^
3/30漆の新芽1
ウルシの若葉って赤いんです。(若いときだけ)
個体差はありますが…。
これがよく伸びて新芽らしくなってます!

3/17のウルシの芽←今月17日(つまり12日前)のウルシの芽のひとつ。その時はこれが一番よく伸びていた方でした。
今は、たいていの芽がこれに追いついてます。


…さて、写真を撮っているとお約束です。
ミルミルがどこからともなくやってきました。
3/30漆の新芽とミルミル
ここはミルの大事なナワバリでもあるんですね。


バッド(下向き矢印)ミルの横顔とウルシの枝。
3/30漆の新芽とミルミル2
…どうしても松本が載せろというので。あせあせ(飛び散る汗)
(しかもトリミングの指定あり)
表情が分かりにくいミルですが、横顔がきれいです。


バッド(下向き矢印)菜の花とミルミル。
3/30ミルと菜の花
これも昨日撮った、松本のお気に入り写真です。
ミルの足元にいっぱいツクシが生えているのが可愛いです。工房の裏手にある空き地(ミルのナワバリ、野ネズミ捕獲地)なのですが、菜の花の種が飛んできたらしくて荒れた空き地もこんなふうに黄色い花がぼかしたようになります。春らしい景色で、こうしてみるとミルも女の子らしく見えます。


さて、少しずつ大きくなってきたウルシの新芽ですが…。
実は今までのようにあたたかく見守っているだけではありません。
今年もウルシの芽の天ぷらをいただこうと待ちかまえ中ですexclamation
昨年、その美味を知ってしまった私たち。
赤くふくらんできた可愛い新芽も、おいしそうに?見えてしまいます…。笑

かなり待ち遠しいです。^^


posted by 宮崎佐和子 at 20:29| Comment(2) | TrackBack(0) | ■ ウルシの木の記録

2008年03月29日

■制作中の漆のペンダントトップ。

そういえば、思いおこして?昨年秋頃に塗った漆のペンダントトップを仕上げています。
上塗りは朱漆です。アクセサリーなので、顔料は黒田の水銀朱(赤口と黄口)を使っています。

いま、ちょっとだけ研磨して、すり漆を重ねているところ…。
あんまり磨きこまずにすり漆だけで自然なつやを出そうと思ってます。

3/29ア漆のアクセサリーパーツ1
小物は小さくて転がるので、こんな金網の
ふるいに入れて漆室で乾かしています。


思えば、なかなか乾かなくて往生した子たちですが…。(半分くらいはあきらめてた)
数ヶ月たってもうカチカチになってます。笑 
3/29漆のアクセサリーパーツ2
どれも木彫りしたものです。シンプルな面カットばかり。
左は赤口+黄口少々、右が黄口。
今までは革ひもとあわせることの多かったペンダントですが、暖かくなることだし、軽やかなゴールドチェーンとも合せてみようかなあと思っています。

3/29漆のアクセサリーパーツ3
小さいホオズキみたいなトップ。
実は自分用にちょっと狙っています。笑




posted by 宮崎佐和子 at 22:11| Comment(8) | TrackBack(0) | ■ 工房の仕事

2008年03月28日

■桜とネコとトビウオです。

先日は、桜の花を求めて惨敗?しましたが、近所のおじさんから情報をもらって今日の夕方、総本山善通寺に行きました。
善通寺は、工房から車で10分くらい。
すぐ近くなんです。

わっexclamation咲いてますexclamation×2
3/28善通寺の桜1
もう開花してしばらく経つみたいです、すでにだいぶ散った木もありました。
3/28善通寺の桜2
3/28善通寺の桜3
やや細面の上品な桜だなあ…と思っていたら、ソメイヨシノではなく特別種の桜なんだそうです。
「涅槃桜」1973年の弘法大師生誕千二百年祭を記念して新居浜市の明正寺から贈られた桜で、今年は3月初旬には3分咲きになっていたんだとか。
どうりで、もう散っているわけですね。
来年はもっと早く来よう!

3/28善通寺のツバキ
桜だけでなくツバキも
あちこち咲いていました。ムード

そういえば、今日の善通寺で今年初めてのツバメを見ました!
いつも3月下旬には見かけるので「今年はまだかなあ…」と楽しみにしていたんで、うれしかったです。

ところで善通寺は近くだけどめったに行くことはないのですが、建築物の木彫がたいへん素晴らしいのです。
今日は仕事の合間にあわただしく行ったので、今度ゆっくり見に行こうかと思います。



さて、今夜のおかずと対面のうり坊。
3/28トビウオとうっちゃん
トビウオです。
(もちろん私たちのおかずですが)

3/28トビウオとうっちゃん2
だんだん引いてきたうり坊。
けっこう後ずさりしています。たらーっ(汗)

春先に一瞬出回るのですが… とにかくデカイです。
(これは35〜40センチくらい、身体が厚くてズッシリ)
3/28トビウオ ←トビウオさん、翼がコウモリ傘みたいぱかっと開きます。
こんな鳥みたいなお魚が、海の上を飛んでいるんですね〜不思議。

「トビウオは身が淡白だ」と聞いていて、初めて買った時は「どう食べようか」と悩みました。結局半身を塩焼きに、半身を香草でオイル焼きにしたのですが、その美味しさにびっくり。
トビウオもいろいろ種類があるそうで、これは大きいのでハマトビウオだと思います。
今日は珍しく「羽根つき」だったので思わず買ってしまいました。(これって大きなポイントですよね。笑)
この子はまるごと塩焼きにします。晴れ
(きっとうり坊もおねだりに来ると思います…)



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posted by 宮崎佐和子 at 19:24| Comment(2) | TrackBack(0) | ■ 日記

2008年03月27日

■桜が待ち遠しいです。

「桜の開花」のニュースをいろんなところで聞き、いぶかる松本(え?ほんとに咲いてるんかな〜とぶつぶつ)を連れて昨日、善通寺の護国神社に行ってきました。

うわ…

ぜんぜん咲いていない…

桜の花は、木によって数輪、しがみつくように咲いているだけでした。

3/27 護国神社の桜
今年初めて見た桜の花。

ここだけかとも思いましたが、近辺はみなこんな感じらしいです。
風が強い日が多いので、咲いたらすぐ散りそう… あと2、3日したらだいぶ雰囲気も違うのでしょう。

半分か八分咲きくらいをぜひゆっくり見たいです。晴れ


さて、夜ですが…。
3/27 おもちゃのネズミとむぎ君
おもちゃのねずみを竿で振ってやると
キャッチしたむぎ君。うれしそうです。

しかしこのあと、空気の読めないうり坊が、興奮のあまりむぎ君のねずみ(この時だけは)に飛びついてみごと奪ってしまい、その後のむぎ君の荒れようは、正視できないものがありました。あせあせ(飛び散る汗)


posted by 宮崎佐和子 at 23:20| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 日記

2008年03月25日

■お椀の木地のすり漆。

そういえば最近、工房の仕事の様子をあまりお知らせしていなかったので、今日は少し…。^^
今月の中旬ごろは、ご来客も多くて私たちも地元の展覧会に出向いたりとわりとばたばたしていて、あまり工房の仕事がすすまなかったのですが、最近は落ち着いてできるようになりました。
とにかく、ご注文いただいたものを主流にやっています。
小物では昨年秋頃からのご注文、今年明けてからの大阪・横浜展でいただいたオーダーものを中心にすすめているのです。
それにくわえて、私は来月の作品展の準備をしています。

そういえば、ずっと木地づくりの作業が多かったのですが、松本がお椀の下地であるすり漆作業をしていたので、久しぶりにちょっと作業風景を写真に撮りました。

3/25 お椀の木地固め1
すり漆の仕事… お椀に漆を塗って
しばらくして余分をウエスで取ります。
薄いけどとても丈夫な塗膜が得られます。

下地は、こういったすり漆仕事を数回くり返します。
うちの工房のお椀の下地は、漆下地。
純粋な日本産漆だけをひたすら重ねていくという仕事です。

3/25池の枝漆
今回、使っているのは
大森俊三さんの精製した枝漆

これは、池に浸けて取った枝漆で、水分が多くて(といっても俊三さんの漆なので、うんと水少なめの漆ですが)生うるしのままでは痛みやすいので、最初から精製してあります。
下地にはとても使いやすいので、松本はお気に入りです。

3/25 お椀の木地固め2
拭きあがったお椀の木地。
これを漆室に入れてしっかり乾かします。


3/25 お椀の木地固め3
完成するまでまだまだですが…
丈夫できれいなお椀になりますように。


さて、もう桜が開花しているんですね!
開ききらないうちに見に行きたいなあ、と思っています。


posted by 宮崎佐和子 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 工房の仕事

2008年03月24日

■ウルシの木の「箱」。

先日、お重箱のご注文をいただき、あわせて箱をあつらえることになりました。それで今回は、ウルシの木を桐箱屋さんに持ち込んで「ウルシの木の箱」をご用意してみました。
さて、ウルシの材といえば、ちょっと変わった色をしているんです。
no-title ←こんな色です。クチナシで染めたような透明感のある黄色をしているんですよ。
さて、どんな仕上がりになるかなあ。
ワクワクしながら待っていましたが、ついにできました。^^


3/24ウルシの木の外箱1
わっ!きれいです。^^
静かですがすがしく仕上がりました。

3/24ウルシの木の外箱2
この中にお重箱(6寸)を収めます。

3/24ウルシの木の外箱3
ウルシの木の木目。色はありますが、ウルシの木はキリとよく似ています。軽くて比較的耐水性があり、昔は漁網の浮き(アバ)や杭などに使われていました。

3/24ウルシの木の外箱4
この黄色もだんだん退色して
淡い色になっていくんですよ。


中には「えっウルシの木を使ってかぶれないの?」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんね。
ウルシの樹液が通過しているのは、木の幹で言えば表皮のすぐ内側あたりだけです。なので、身の部分は大丈夫です。

この木は、昨年の夏、岩手県からやってきたウルシの材を使っています。
資源が大事だった昔は、うるし掻きをしたあとのウルシの木もいろいろと次の役目があったのですが、今はそういうわけにはいきません。
たまに資料や草木染めの染料として使われるくらいで、切られてとりあえず積んだままだったり、薪になったりしているのですね。

こんなふうに生まれ変わるのもわるくないものです。




posted by 宮崎佐和子 at 21:57| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 工房の仕事

■ありがとうございました。

先日、OMエコショップすがさんが、和うるしの器(エコショップ店舗販売商品)をネット上にアップして下さいましたが、さっそくご購入くださった方々、ありがとうございます!

簡単ですが、取り入急ぎお礼申し上げます。


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posted by 宮崎佐和子 at 19:36| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 日記

2008年03月23日

■モクレン。

工房の庭にはモクレンの木があります。
以前、母が植えてくれたものなのですけど、最近になってたくさん花が咲くようになりました。

3/23モクレンの花1
今年は、いい間隔で雨が降ったので、
花もなかなか傷まずきれいに咲いたままです。

3/23モクレンの花2
3/23モクレンの花3

白いモクレンの花の色ってやさしいきれいな色ですね。
そういえば、マーガレット・ミッチェルの「風とともに去りぬ」のヒロインの描写に『モクレンの花のような肌』という表現がありました。彼女はこんな色白の美人だったのですね。

そういえば、毎年3、4月はかなり催事を入れていたので、春の花々を見る余裕がぜんぜんありませんでした。
今年の春はそんなに忙しくないので、ゆっくり景色が春に染まっていく様子を見ることができそうです。

no-title
お久しぶり!緑色のバッタさん。ムード



さて昨日、納品する予定の重箱の外箱が桐箱屋さんからあがってきました。
ふつう、外箱は「桐」で作るので「桐箱」とよばれるのですが、今回はなんとうるしの木で作ってもらいました!
これがなかなかいい感じなのです。^^
明日、写真を撮ってご紹介しようかなあと思っています。


posted by 宮崎佐和子 at 21:45| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 日記

2008年03月22日

■「漆かぶれ」と「未知の不安」。

来月の1日(4/1)で、このブログを始めてまる2年が経ちます。
この日記を書き始めた時、まず最初に書いたのは「漆かぶれについて」でした。
おそらく、世間一般の方達は「漆かぶれ」について、そしてその「漆かぶれ」からくるイメージについて、漠然とした不安を持たれているだろう…と思ったからです。

数年前、とあるミステリー番組で「漆樹液」が殺人事件の小道具に使われたことがあり、当時の私はひどく憤慨してそのことを話題のきっかけとして取り上げたのですが…。
のちに「漆」の陰にどことなく感じる「負」のイメージ… たいへん魅力的だけれども、たとえていうなら翳のある美女のような、そんな説明のしようがない微妙な陰湿な観念が、ミステリーを盛り上げる小道具にチョイスされる理由の一つになったのだ、だからいくぶんは仕方がないのかもと多少は思うようになりました。
決してあっけらかんとはしていないイメージ。
いったいそれはどこからくるのでしょうか。

江戸時代の医師、藤井好直による「片山記」という書があります。
現在の福山市近辺(備後国沼隈郡山手村)に住んでいた藤井好直は、地元にはびこる謎の風土病から住民を救済できないものかと苦心しますが、ついになし得ず、晩年「何もできなかった」と無念の思いを書き残して明治28年に世を去ります。

『西備神辺の南、川南村には、田の中に二つの小山があって、一つを碇山、一つを片山というがこの片山は「漆山」ともよぶ。はるか昔、この辺りは海で、漆を積んだ商船がこの山に碇泊していたところ、大風がおこり船が転覆してしまった。それからこの山を「漆山」と呼ぶようになったという伝説がある。昔は、ここを通ったものはみな漆にかぶれたそうである。最近二、三年のあいだにも、春から夏への季節の変わりめに、土地の人が田を耕しに入ると、足のすねに小さな発疹ができ、じつにたえられぬほどの痛さかゆさであった。牛や馬も同じような目にあうのである。これは昔の「漆の気」が残っているせいだと人々は思っている』
『さてこの病にかかると下痢や嘔吐に苦しむ者が多く、顔はしなびて黄色になる。寝汗をかき肉は落ち、脈は細くなりちょうど肺病にそっくりである。血やうみをくだす者もあり、しばらくすると四肢は削られるようにやせるのに、腹だけはふくれてツヅミのようになる。(略)そして最後には足に浮腫みがきて落命するのである』
『この病気のために死ぬ者は三十名を越し、牛馬も数十頭倒れた。(略)はたして「漆の気」にかぶれたためか、それとも水田にひたってその湿気にあてられたものか、私には判断することができない。私のみならず、村人はそれぞれ医者にかかるので、幾十人もの医者がここで治療しているが、だれもまだこの病を治したという話は聞かないのである。…』


つまり、かの地には昔、漆を積んだ船が難破したという伝説があって、そのせいか田植えをする時分に水につかる手や足が非常に痛がゆくなる。住民は「漆の気」のためだと固く信じているが、その後、やせ細り腹部がひどい水腫になり苦悶のうちに命を落とす、というのです。
藤井好直はその病を「片山病」と呼び「水田に入った時に手足にかぶれをおこす毒物であることは間違いないが」としつつも「その原因が何であるか、東西の医学書をひも解いてもいっこうに分からぬ」と嘆くのです。

さて、漆に少しでも詳しい方は「はて?」と思わないでしょうか。
だって漆にかぶれてこんな病気になるわけないし、何より難破した船に漆が積んであってそれが流出したとしても、それがもとで長年にわたってそこに住む人々がかぶれ続ける、というわけがないからです。

結局、この不気味な病はなんだったのでしょうか?
それはミヤイリガイ(宮入貝)を媒介とする日本住血吸虫の寄生による症状だということが明治37年に、研究の結果わかったのです。
つまり、皮膚から感染する未知の寄生虫症だったのです。(現在は撲滅)

当然ながら、漆はまったく関係なかったということなのですが、当時の人々の無念や不安はさぞかしだったろうと思います。
毎年、田畑に入るとおこる不気味で猛烈なかぶれ(虫の幼生が皮膚から侵入する反応なのですが)死の病の予告として人々をいいようのない不安に陥れたことでしょう。
今も昔も、漆の仕事はそんなに一般的な職業でなかっただろうし、漆に対する観念といえは「よく分からないけどひどいかぶれを起こす」ということくらいだったのかもしれません。
時代は違えど、現在とあまり変わらないくらいの認識だったのではないでしょうか。

改めてそう考えると「ミステリーの小道具に使われたくらいで目くじらたてなくても」と思う自分と「いまいや、ただでさえ形見のせまい漆なのに、よりイメージをあやしくすることはいけない」と思う二つの心があって、定まらぬ今日この頃なのです。



※追記 ------------------------------------------------------------
なお、藤井好直は、晩年の「片山記」の再記の終わりごろに「聞けば西洋に分理の術あり。術をもってその土質を分理すれば、毒の正体が分かるかもしれない。正体が分かればこの病を治す方法が見つかる。そうすれば数十年の痼疾が一朝にして氷解するだろう。村びと達に幸いが訪れることを祈りたい」としています。
結果としては、片山病は藤井好直の想像をはるかに越えた虫害だったわけですが、没後9年で岡山大学で片山病のネコから虫の検体が発見され、大正2年に原因が解明するのです。しかし撲滅までまた長い月日がかかるのですが、多くの方のたゆまぬ努力で、現在はこの病で苦しむ人はいなくなりました。
人と病の苦しい歴史の一端にふれ、これも忘れてはならない記憶だと思いました。
ペン


posted by 宮崎佐和子 at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) |   漆かぶれについて
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