2008年06月05日

■「さゆり/アーサー・ゴールデン著」

さゆり/アーサー・ゴールデン


原題『Memoirs of a Geisha』。
ニューヨークで余生を送る、昭和初期に全盛を誇った元芸妓、さゆりが自身の人生をで口伝したメモワール。
祇園に売られた貧しい漁師の娘が、悲しみや理不尽に翻弄されながら『ある出会い』で強く生きる決心をし、やがて誰もが目を見張る美しい芸妓に変っていく。そのさまには心奪われるものがあります。
祇園の風景、置屋(芸妓が住む、家制度の所属事務所)の暮らし、お座敷、芸妓どうしの確執、彼女らの着る着物… それらがさゆりの京言葉でリアルに語られ、当時の祇園の美しさ賑やかさはかくや…とつい思い描いてしまいます。(特に着物の柄、色彩の描写が微細で、読んでいると華麗な織がついつい脳裏にうかびます)
日本語訳の本書は、訳者の小川氏の巧みな訳と、芸妓さんたちの京言葉や祇園ことばの監修により磨かれて、たいへん完成度の高いものになっています。
「さあて、どこから話しまひょか?」
といったさゆりの心地よい京言葉で語られ、あまりの人間くささに読んでいる最中は私も実話だと思い込んでいたんですが、実は巧みなフィクションなんですね。してやられました。読んでいて最後までだまされた人もけっこう多いと思います。笑
(あとがきで『モデルはいない』と書かれていますが、やはりゴールデン氏が取材し、ヒロインの原型とした実在の日本女性がいるそうです)


さて、本作といえば2005年に映画化されましたね。

SAYURI
主演:チャン・ツィイー

きっとごらんになった方も多いと思います。
…やはり日本では酷評が多いようですね。事実、私もそうです。
やはり外国人の女優さんでは着物の立ち居振る舞いに品を感じません。先輩芸妓の初桃さんの性悪ぶりが西太后か何かみたいだし…。髪型も中国風、メイクもアレンジしすぎて芸妓さんっぽくないし、演出も神社の鈴を振ると鐘を撞く音がする(!?)しで、なんだかさんざんでした。
…と観た当時はそう思っていました。

でも、あれからすこし経って今は感じ方が変わっていることに気づきました。
外国人のクリエーターたちが集まり「日本の素材」を使って作品に仕上げると、ああなったのではないかと。もちろん、日本文化を調べ尽くした上です。
日本人が観ると、違和感だらけですが、そのことは承知のうえのことなのでしょう。全世界に向けて発信するファンタジー作品としてはなかなかのだったのではないでしょうか。
…ファンタジー、そう、本書の「さゆり」もアメリカ人男性の書いた美しいファンタジー小説なんですね。

※文藝春秋/1999年発行

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posted by 宮崎佐和子 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ BOOK
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