2008年07月10日

■漆を『濾す』作業。

さて、漆の仕事に欠かせないものの一つに「濾す」作業があります。これはとても大事な仕事で、漆液の中の微細な異物を取り、そして、『濾す』ことで漆液の成分を均一化させる作用もあります。

この『漆濾し』のやり方は、濾す漆の用途によっても違います。木地固めに使う漆、中塗り用の漆、そして上塗り用の漆では、方法やその気遣いの仕方がかなり異なってきます。
…特に上塗り用の漆を濾す時は、細心の注意を払って、慎重に仕事をします。

さて、うちの工房の『漆濾し』の写真を撮っていたものがあるので、ちょっとご紹介したいと思います。

※今回の写真はすべてクリックで拡大します。


バッド(下向き矢印)今から濾す漆です。もちろん日本産ですが、ちょっと変った漆で、大森俊三さんの山で採った枝漆なんです。
7/10漆濾し

この漆は、今から濾しますが、木地固めに使います。
「枝漆」というのは、漆掻きの本当の最後の最後に採る、残り汁みたいなものなんです。
でも、名人の手によって、ていねいな仕事で採られたこの「枝漆」はどこに出しても恥ずかしくない、かなり良い漆だと思います。

バッド(下向き矢印)さて、松本の濾し方はちょっと独特だと思います。
7/10漆濾し2

渋濾し紙2枚で2回、濾します。
2枚の濾し紙を茶碗に重ねて置き、その中に漆を落し入れます。
そして、まずは上の1枚の濾し紙だけで漆を包みこみます。(松本は、漆濾しの時は『鉗子』を使っています)

バッド(下向き矢印)1回目の漆濾しです。
7/10漆濾し3

力をかけて絞らなくても、漆の重みですーっと落ちていきます。
7/10漆濾し4


バッド(下向き矢印)濾し終えたら、下に残っている2枚目の濾し紙の出番。
7/10漆濾し5

2枚目濾し紙の上には、1枚目で濾した漆が溜まっています。
これを2枚目の濾し紙で再度包んで、同様に濾します。

バッド(下向き矢印) それにしても美味しそうな?カラメル色。
 正直言って、枝漆には見えません…裏目漆みたいです。
7/10ウルシ濾し6

濾し紙の微細な目を通して、中の漆がいろんな表情を見せながらわき出して落ちていきます。すーっと吸い寄せられるように漆が落ちて行くさまは、なんだか不思議な気分です。

それにしても、学生時代に中国産漆を濾す時は、本当に大仕事でした。べたべたの漆を灯油で薄めて、そこそこの硬さに調節してから濾すのですが…。
ほんとうに、水あめかタールのように重い漆で、濾し紙に入れてもなかなか落ちず、ものすごく時間がかかったりしました。(あと、そうじも大変でした)
それを思うと、同じ漆を使っているはずなのに、この軽やかさはなんだろう?と今でも思い出して不思議になることがあります。

バッド(下向き矢印)…ちなみに、この枝漆で木地固めした椀です。
6/5木地固め
(この山で採った枝漆は、あっexclamationと言う間に使い切ってしまいました。…だって、使うの気持ちいいんだもん by松本)
つい去年のことですが、この枝漆はもういつ使えるかどうか分かりません…。あせあせ(飛び散る汗) この山で採る枝漆は、とても重労働なのです。だから、無理に欲しいとは、言えないんですよね。

また、こんなマイルドな漆で楽しい木地固め、したいです。ムード

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posted by 宮崎佐和子 at 23:59| Comment(11) | TrackBack(0) | ■ 工房の仕事
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