2008年10月19日

■「漆百科/山本勝巳著」

10/19漆百科

この本を読んで、たいへん驚きました。
本書は、化学の分野で活躍し、多数の著書や論文を持つ著者が「漆」について長年の取材や見聞に基づき、多岐にわたって記した快作です。

何が一番衝撃だった内容かというと…。
漆業界では当たり前でになっているにもかかわらず、消費者には大変不親切で不明瞭な「漆器」の原材料、産地などについての表記について、ズバリと切り込んでいるところでしょうか。

「非漆化」が進行してひさしい漆器業界…。
戦後、多いに変った日本人の生活スタイルと化学産業の発展によって漆器業界も大きく様変わりし「伝統的な漆器」と合成樹脂などを使った「新興漆器」という、異質な漆器が、生産と市場の両方に混在するということになったのです。
この結果、伝統的な漆工芸品よりも安価な新興漆器が、大半を占めることとなり、本来の力を著しく弱体化されたその功罪を著者は鋭く追求しています。
冷徹で公平な著者の視点はそれにとどまらず、漆文化の将来や生き残りについての意見も述べており、本書は「漆百科」のタイトルにふさわしく数百文程度の270個ものコラムの集約、という構成になっているにもかかわらず、きちんと起承転結をつけてうまくまとめられて読みやすいです。
(日本産うるしについても、しっかり書かれています)


さて、話は変わりますが、実は先日、本書の著者である山本氏にお会いする機会に恵まれました。
出版にあたってのご苦労など、いろいろお話を聞かせていただくことができて、とても感銘を受けました。
歯に衣を着せぬ書きっぷりだったので、眼光鋭い?学者肌のような方を勝手に想像して、実際にお会いするまで緊張していたのですが…あせあせ(飛び散る汗) 
ご本人はたいへん穏やかで理性的、なおかつ情熱的な方でした。
漆の文化は、多くの人に支えられている、若い世代の私たちは負けずに頑張らなければいけないと実感したのです。
ぜひ、多くの方に読んでいただきたいと思います。

※丸善株式会社/2008年5月発行

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posted by 宮崎佐和子 at 21:25| Comment(2) | TrackBack(1) | ■ BOOK

2008年10月18日

■いよいよ浄法寺漆の認証制度が始まります。

10/18漆の木


岩手県二戸市浄法寺町は「日本のふるさと」のイメージをそのまま形にしたような、のどかな町です。
空は澄んで夜は星がこぼれそうなほど天に近く、地元の人々は農業や畜産にいそしみ、夜の席にはその家の自慢のどぶろくも出る…
そんな素朴な町です。
そして、日本一の漆樹液産地でもあります。

その浄法寺町が、明日は活気付く日です。
きっと多くのテレビカメラや新聞も入ることでしょう。
明日、開催される第30回浄法寺漆共進会は、いつにもまして特別な日なのです。

浄法寺漆は、この時勢に合せて、二戸市が産地ブランドの確立にたいへん力を入れてきました。日本一の生産量(いっても1トン前後くらいなのですが)を誇るこの町のことは、漆のお仕事をされている方ならたいていご存知でしょう。
しかし、残念ながら消費者であるお客様の認知はまだまだ低いといわざるを得ません。
しかしながら、ほぼ「日本産漆 イコール 浄法寺漆」と言っても過言ではないくらい、漆産業にとっては大事な地であるんですね。

その産地ブランドの格付けである第一回目の認証のセレモニーが、明日の共進会で行われるのです。^^
それにともなって、いろいろ関連の発表があるかと思います。
しかし残念ながら、今年は私たちは行けないのですが(来週からまたもや作品展がたらーっ(汗))その代わりに、研修生の本間さんが共進会のレポをしてくれることになっています♪
ドキドキ…あせあせ(飛び散る汗) 工房でオーダーしている漆(大森俊三さん・大森清太郎さんの漆)も、この共進会に出品されるんですね。
とっても楽しみです。ムード


バッド(下向き矢印)浄法寺漆にはこんな出荷票が付くそうです。(サンプル)
10/18出荷表

バッド(下向き矢印)こちらは、出荷・精製履歴証明書です。(サンプル)
10/18出荷証明書
これらの書類は見本として、浄法寺漆生産組合から送られてきたもの。これからは漆の出荷後にこのような明細が送られてくるんだそうです。

いつも、漆掻きさん自身から詳しくヒアリングしていた内容がきちんとお墨付き?の書類にまとめられるというわけですね。とてもいいです。

さてさて、もう少し詳しく…。
これらの認証が適応されるのは、岩手県浄法寺漆生産組合の組合員さん、もしくは主として浄法寺町で伝統的に行われてきた漆掻きの技術で漆を採取する人であるか、浄法寺漆認証委員会が特に認めた人が採取する漆で、なおかつ採取地域が岩手県全域、青森県三戸郡、八戸市、十和田市、秋田県鹿角群小坂町、鹿角市、大館市であるもの、また品質に関しては増量等を目的にして意図的に異物を混入していないこと、浄法寺漆以外の漆を混入させないことがあげられます。(浄法寺漆認証制度の運用についてより抜粋)
※岩手県浄法寺漆生産組合 組合員
佐藤春雄(組合長)、三浦義美(副組合長)、漆田吾郎(副組合長)、工藤竹夫(幹事)、吉田信一(幹事)、大森正志(幹事)、砂子田進(監事)、横浜正雄(監事)、大森清太郎(会計)、鈴木健司(会計補佐)、大森俊三、漆田兼蔵、大森貴太郎、澤田文雄、岩館正二(顧問)、小沢純、田口長吉、田畑与吉、田口武夫、佐藤正勝、漆田忠八、横浜善蔵、砂子田宏雅、樋口昭吉 (敬称略)


ここまでの制度の組み立てには、浄法寺漆に関わる多くの方々の並ならぬ努力とご苦労があったことでしょう。それだけに、明日の共進会はたいへん、心待ちにしておられると思います。
滞りなく無事成功することを遠方よりお祈りしております。
私たちも、本間さんからのレポを楽しみに、自分たちの仕事をしていようと思います。^^


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posted by 宮崎佐和子 at 21:19| Comment(4) | TrackBack(1) |   浄法寺うるしについて

■きのう会った猫さんです。

昨日は、こまごまとした用事で近所に外出していました。
そこで思わぬ拾いもの?がありまして…。
とある病院の駐車場で、可愛らしい猫さんと出会ったのです♪

カメラを持っていたので、記念代わりに撮りました。

バッド(下向き矢印)この子です。
10/18猫

10/18猫

10/18猫

白黒ぶちで、おハナがピンク色の美人さんです。ぴかぴか(新しい)
(うちの猫さんはみんな地黒なんで、新鮮に見えます)
最初はまったく姿が見えなかったんですが…。
彼方から、ニャ〜オ ニャ〜オ ニャ〜オ ニャ〜オ…と声だけが近づいて来て、うんとこの子が側にまで来てからやっと気づきました。
この日は、なんだか得した気分でしたよ。^^


さて、話が変わりますが…

バッド(下向き矢印)きのうのミルの仕事です。ふらふら
10/18おねず
ぴかぴかほどんど無傷のおねずさんです。

この間はコオロギなんぞを捕まえていたミルですが…。さっそく仕事のカンを取り戻しました。
かなりの腕になってきましたねえ…。コレを始末する飼い主の身にもなってほしいものです。

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posted by 宮崎佐和子 at 16:46| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 工房のネコ

2008年10月17日

■第30回浄法寺漆共進会のお知らせ

10/17浄法寺の漆

浄法寺漆生産組合による共進会もいよいよ30回目を迎えます。
(工房で使う予定の漆たちも、出品されます)
今年は、浄法寺の漆産業にとって大きな節目になりそうな大事な行事になると思います。どなたでも参加できますので、興味のある方はぜひごらんください。


バッド(下向き矢印)昨年の共進会の様子の一部です。


■第30回浄法寺漆共進会の開催について

日 時/平成20年10月19日(日) 午前10時〜
場 所/二戸市社会福祉会館(二戸市浄法寺総合支所前)
その他/当日は、浄法寺漆認証委員会による第1回認証も開催されます。
問合せ先/二戸市うるし振興室 TEL:0195-38-4471


※詳しくはこちらもごらんください。^^


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posted by 宮崎佐和子 at 19:13| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 浄法寺町の漆かきだより

2008年10月16日

■9日ぶりに工房に戻りました。

高島屋日本橋店での作品展が14日に終わったあと、翌日の15日は人とお会いたり次回の会場の下見に行ったりとばたばたと過ごしましたよ。
そして今回、銀座くのやさんにやっとご挨拶をすることができました。

バッド(下向き矢印)その際、くのやさんに「おしるしに」といただいた、新年のご挨拶セットですが、これが可愛らしいのです。
10/16くのやさん
くのやさんのオリジナル干支セットです。
10/16くのやさん
来年の干支にちなんだ絵柄のガーゼの手拭いと
ハンカチを小振りのたとうで包んだセットです。

ものすごく人気なんだそうですが、やっぱり分かります。さりげなく可愛らしい包みで、さっぱりとしたガーゼの手拭いとハンカチを新年のごあいさつにいただいたら、とてもうれしいですね。(しかもお手頃価格なんですよ)
くのやさんでは、松本とそれぞれ風呂敷を買ったりとついついお買い物もしてしまいました。またいつか、ご紹介したいと思います。ムード


さて、昨日は東京で予定がいろいろあったので、香川県の工房に戻るのが夜遅くなってしまいました… でも、ネコさんたちはぶじ家に連れて帰りましたよ。

バッド(下向き矢印)秋の日射しの中のミルミル。
10/16ミル10/16ミル
10/16ミル

今回は9日くらい留守にしていたので、ネコたちも落ち着かなかっただろうと思います。
10/16コオロギ
ミルと一緒に捕まえたコオロギさんです。
コオロギ捕まえるなんて、久しぶり…!

もうかなり朝夕肌寒いので、私のお布団にネコたちが押し寄せてきます。かなり猫団子率がアップ中です。あせあせ(飛び散る汗)(昨日は、むぎ君とうり坊にはさまれて変な姿勢で寝てしまい、体が痛くなっちゃいました)

今日は仕事明けということで、ゆっくりして家の掃除とかをしていましたが、明日からさっそく仕事を開始しようと思います。
今月22日から、高島屋玉川店さんで作品展の予定も入っていますのでそちらの準備もさっそくします。


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posted by 宮崎佐和子 at 22:47| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 工房のネコ

2008年10月14日

■日本橋での作品展、終了しました。

10月8日から、高島屋日本橋店さんで開催した作品展、今回もぶじ終えることができました。
閉場ぎりぎりまで、たくさんの方がお越しになって見て下さいました。
本当にありがとうざいます。もうやだ〜(悲しい顔)
ご注文もたくさんいただきました。
お時間、かなりかかってしまいますが、ちゃんと仕上げていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

日本橋は、毎年6月に三越本店さんで作品展をさせていただいているんですが、場所は近くても来場されるお客さまの好みや雰囲気がぜんぜん違っていまして大変興味深かったです。
三越さんの方では、ゆったりしたご年配の方が多いように思います。また、今回は連休をはさんだせいもあるのか比較的若い方、活動的な雰囲気の方や男性がとても多かった気がします。
いろんな方に、漆を紹介することができまして、とても幸せでした。
(そして日記を見て来て下さった方、重ね重ねありがとうございます)
これからも頑張りますので、よろしくお願いいたします。

10/14日本橋
これが地名の元の「日本橋」ですね。
連休中は観光客の方がたくさん見に来ていました。



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posted by 宮崎佐和子 at 23:52| Comment(0) | TrackBack(1) |   作品展の様子

2008年10月12日

■作品展もあと2日になりました。

うっかりしていましたが、世間は三連休だったんですね。;
今日も本当に多くの方がご来場してくださいました。本当にありがとうございます。ムード
会場のクロスロード7は7階なのですが、上の8階ではいま「美食の京都展」を開催中なんです。
京都の名物や美味を求めて、こちらはたいへんなにぎわいですよ。私たちもお客さまから、直送の豆もちをお土産にいただきましたが…とてもいいお味でしたよ。


さて、会場で実演(竹筒削りとスプーン木地作り)している松本ですが…。
バッド(下向き矢印) 今日はこんなものを作っていましたよ。
10/12耳かき
竹の「耳かき」なんですね。あせあせ(飛び散る汗)

通りがかった高島屋のお得意さまにご依頼されまして「道具を持ってきていないんだけどなあ〜」といいつつせっせと竹を削る松本です。
(十分水に浸してあとで熱を加えて首を曲げるそうです)


バッド(下向き矢印)さて、こちらは私のお昼ご飯です。
10/12ランチ
牛肉と大根の煮込み。

10/12ランチ
サンドイッチとベーカリーのディニッシュ。

やっぱりいつもより食べる量が減っているみたいです。
(あまり食べると眠くなるのでこのくらいがちょうどいいかな?)


さてさて、高島屋日本橋店さんでの作品展もあと2日になりました。最終日の14日(火)は午後5時までとなります。どうぞお立ち寄りくださいませ。^^


posted by 宮崎佐和子 at 23:03| Comment(0) | TrackBack(0) |   作品展の様子

2008年10月11日

■和うるし作品/梅の花の帯飾り。

梅の花の帯飾り
「梅の花の帯飾り」2008年9月制作
(銀座くのや本店出品)
漆/岩手県産うるし 木地/クス

径3センチほどの梅の花を木彫した漆の帯飾りです。
お干菓子みたいに可愛くコロンとした形にしました。
下地をした木地に、金箔を全体に漆で貼ったうえに、色漆、生漆で彩色をしています。彫りあとをなるべく残した仕上がりにしています。


梅の花の帯飾り
組紐と結んでみました。

帯に挿す爪は、水牛の角を削り出したもの。
水牛の角は柔らかい半透明な部分と不透明な部分、そして黒く斑の入った部分といろんなニュアンスを持った素材で、とてもよく漆の質感に合います。
そして、この梅の花は、取り外しできる金具になっていて、ペンダントトップにも使えるようにしています。

さて、和装小物は今まであまり作ったことがなかったのですが…。
とても楽しいです。
私は着物を着る機会がない人間ですが、着物の取り合せで四季を感じる粋は、きっと日本女性ならではの楽しみなのでしょうね。


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posted by 宮崎佐和子 at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ 和うるしの作品

2008年10月10日

■日本橋滞在の様子です。

今日も、大勢の方が作品展会場にお越し下さいました。ムード
お客さまと話してばかりで松本の実演もまったく進まない1日でしたが…笑 今回はご案内状を特に作っていなかったにもかかわらず、この日記をごらんになってわざわざ来て下さった方もびっくるするほど多くいらっしゃいました。
本当にありがとうございます!
明日は土曜ですね… 
足が痛くなってきていますが、頑張らなくちゃ〜。


さて、最近恒例になってきている?百貨店さんの社員食堂のお昼の公開です。
福利厚生のために、店内の従業員スペースに必ず社員食堂が設けられており出入り業者も気軽に利用できるのですが、とっても安くて美味しいんです。とてもありがたい存在です。
また、百貨店さんによって雰囲気がそれぞれ違ってて、ウォッチングするのもなかなか楽しいんですね。

バッド(下向き矢印)カレイの唐揚げ大根おろし添え。
10/10昼食
パリパリの出来たて空揚げを食べられるなんて…幸せです。^^
ここの定食は、豊富な単品を自由に組み合わせられるのがいいです。その日のおなかの具合で組み立てられます。

高島屋日本橋店さんの社員食堂は…お店も新しくゴージャスぴかぴか(新しい)でしたよ。充実した社員用コンビニも入っていてベーカリーもあります。さすが都会だなあ、という感じです。

バッド(下向き矢印)長崎風野菜ちゃんぽん。
10/10昼食2
人気メニューで、列に並んでいた女性が次々と頼んでいました。
その女性たちが「野菜少なめで」とオーダーしていたので「?」と思っていたんですが… 
食べてみて納得です。
お野菜がすごく多い〜〜。得した気分ですよ。

ただ、残念なことに…いつもなら楽しみにしているお昼ご飯なんですが、いつもより緊張しているのか食欲がなくてあまり食べられません。
バラエティー豊かなメニューを尻目に、単品食べしています…。いつもは夕方にはおやつを求めて社員喫茶でデザート食べたりすることもあるんですが、今回は全然手が出ません。もうやだ〜(悲しい顔) 残念だなあ。


さて、今回は日本橋に宿泊しています。
この日本橋の風景にも少し慣れてきましたが… オフィスの多い場所なんですね。ビジネスマンの男性が忙しそうに大勢歩いています。そんな方を対象にした飲み屋さんも多いです。
そんな日本橋の宿泊先のすぐ近くに、ウナギ屋さんがあるのですが、いつもそのお店の前にいる子猫のことが気になっています。

バッド(下向き矢印)この子です。まだ2〜3ヶ月くらい?のちっちゃいネコさんです。
10/10ネコさん1
10/10ネコさん3
がりがりに痩せていて、汚れたネコさんですが…。
なかなかのツンデレです。笑
写真はアップでトリミングしていますが、警戒心が強くてなかなか近寄れないんです。

バッド(下向き矢印)近付くと、路地に入って『シャア〜〜』です。
10/10ネコさん2
勢い良く引っ掻こうとします。あせあせ(飛び散る汗)

この気になるネコさんですが、松本の目撃によると、ウナギ屋の人から何か食べ物をもらっていたらしいです。
…だからここの路地に住みついているんですね。小さいのに、たくましいです。


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posted by 宮崎佐和子 at 23:42| Comment(0) | TrackBack(0) |   作品展の様子

2008年10月09日

■日本産漆と真珠の輝き。

先日、琥珀は漆に似ていると書きましたが、最近、ほかにもつくづく「似ているなあ」と思うものがあります。

それは「真珠」なんですね。ぴかぴか(新しい)

天然真珠の、どことなく輪郭のぼんやりした、しかし深い部分でキラリとしたみずみずしさを感じさせる不思議な美しさ…。
その素材感が国産漆、ことに浄法寺の漆かき職人、大森俊三さんの採る真夏の漆に似ているのです。(工房では上塗りは大森俊三さんの漆を塗っています)


バッド(下向き矢印) いつものように、無溶剤、国産漆(主に岩手県)100%のお椀です。色をつけない漆の樹液そのままを塗り重ねたもので、フィニッシュの上塗りは、前出の通り大森俊三さんの漆です。
お椀
その微妙な質感を、私のカメラでは写し出すことは難しいですが…;
これは、なかなか気に入った塗り上がりのお椀の一つです。
表面が乱反射して輝き、なおかつ透明感も感じさせてくれます。
本当に微細な表情ですが、これは上質の国産漆ならではの表情だと思います。(和珠にも選抜きの中国淡水に劣る粗悪品が当然あるように、漆も日本産漆なら、必ずしも美しいというわけではないんです)
どの世界にもその道の名人はいるもので…大森俊三さんの採る漆は、間違いなく最高ランクで本当にすばらしいと思います。


バッド(下向き矢印)さて、南の海の真珠たちです。どことなく肌が似ていると思いませんか?
真珠
南洋のバロック真珠。白蝶貝の真珠ですね。
(奄美の養殖場で買ったものです)
真珠
黒蝶貝の真珠。
とっても気になる輝きです。ぴかぴか(新しい)

こうして見ると、漆も真珠もおだやかで優美なものですね。
貴金属や宝石のように強いインパクトは持っていませんが… いつまでも見つめていたくなる優しさや潤いがあります。

さて、同じ年度の大森俊三さんの盛り漆を使っても、上塗りのタイミングや漆の熟成などによって、塗り上がりの微妙な雰囲気がかなり異なります。
これがブレンドや調合をしていない、生ものたる山出しの漆の気難しさです。(漆を扱う業者さんの漆芸用の漆は、主力商品の中国産漆をふくめ、仕事をしやすいよう漆を調合してくれています)

でも、工房で扱う1本立ての漆はそうはいかないんですよね…。けっこうなじゃじゃ馬揃いです。;
漆が喜ぶような漆室をつくり、丹念に塗り上げて入れ、深く輝くような塗り肌に仕上がると「やった!」と嬉しくなります。
気に入った塗り上がりになった時は、漆室から出した器をずらりと並べて、松本と二人で吸い込まれるように見入ります。

今年の春は、宇和島の真珠養殖を見に行ったりしていましたが、養殖場の方々が丹精こめて育てた母貝から、真珠を浜あげする時の気持ちに近いものがあるのかもしれません。


バッド(下向き矢印)こちらは、また違った風情の塗り上がりになりました。
お椀
上のお椀よりも、つやがあってうるうるした感じですね…。
手触りもしっとりしています。こうしたツヤ感のある塗り上がりの方が好きだと言われる方も多いです。
これも、大森俊三さんの漆なんですよ。
真珠
濃いめの色の黒蝶真珠。
…やっぱり漆ににているなあ。



漆と真珠、共通点があるとすればどちらの生き物である木と貝の「山の恵み」と「海の恵み」ということでしょう。
木が傷つけられた体から流す樹液と、貝が体内に入った異物に巻いた分泌液、どちらももの言わぬ生命が必死で流した血そのもののようなもの、と言ったらセンチメンタルすぎるでしょうか。

こうした素材を手に取ることができるというのは、本当にぜいたくなことと思います。
そして真珠は、美しい本物を比較的容易に見ることができますが、漆はそうはいきません。ピュアで最高品質の日本産漆を実際に見る機会は、複雑な事情により、そうそうないのが現状です。

もし、作品展会場に来られましたら、いろんなドラマを持った器の数々を実際に手に取って見てやってくださいね。^^


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posted by 宮崎佐和子 at 23:59| Comment(2) | TrackBack(0) |   思うこと
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