さて、今回の臼杵さんの中国うるし掻き視察ですが…。
ものすごく遠方だったので、旅費も日数もかかり体力も使ったそうです。本当にお疲れさまでした。
なのに、そんな臼杵さんに「次のご予定は?」と性急に聞いてしまいました。
「次はいつ行くかって? 気が早いねえ。いやあ、行きたいけどそう簡単にはね。なかなか大変だった。でもまた行って見たいものはたくさんあるよ。僕が見たのは、中国の現場の、ほんの一場面にすぎないからね」もちろん、この「中国のうるし掻き」は、誰でも中国に行きさえすれば簡単に見られる、というものではなさそうです。
こうした産業が行われている場所はまず中国でもかなりの地方の地で、交通が発達しているとは言えそうな感じではないです。(また、いろいろ伝手も必要そうで、今回、臼杵さんは情報をあつめて研究し綿密に計画を立てて行かれていました。足を運んだ畢節も、さまざまな候補地から選んだのだそうです)
‥それにしても‥。
最近の中国産うるしの品質の上昇には、目を見張るものがあります。(ほんの少し前の『中国産漆は、安かろう悪かろう』という感じでした)
それが今や、中国うるしはかなり高品質となり、四川省の城口漆のような「ブランド中国漆」といってもよいくらいのものまでピックアップされて、「少々高価でも、よい漆を使いたい」という方々にとって福音をもたらしました。
これも、ひとえに日本の漆材料を扱う業者さんの「質のいい漆を提供したい」という努力のたまものによるものです。
つまり、中国産うるし全体の品質が底上げになったというよりも、こうした日本の業者さんがたんねんに現地の漆を見てまわり、日本の使い手さんが喜ぶような漆を入れる流通を新たに作ったという企業努力によるものでしょう。
これによって、安価でかなり品質のよい漆を日本は使うことができるようになりました。
さてさて、臼杵さんが(そして私達も?)将来もちゃんと日本に入ってくるか心配していた中国産うるしですが、取材した感じではどうだったのでしょう。お聞きしてみました。
「しばらくは心配なさそうだね。漆の木は、日本人が想像できないくらいたくさんある。資源は豊富だね。」と、前置きをした上で、
「ただ、これからは値上がりは避けられないんじゃないかな‥。うん、そうだね。かなり上がってもおかしくないと感じたよ」と感想を臼杵さんは、お話してくださいました。
この地でも、情報の活性化はめざましいものがあり、漆かき職人さんでも携帯を持っていることが珍しくないそうです。
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さて、今回はたいへん興味深いお話をして下さって、臼杵さんには心から感謝しています。本当にありがとうございました。

以前から関心のあった中国の漆かきの様子をかいま見ることができて、とても楽しかったです。
また、イメージがぼんやりしていた中国のことを改めて知る機会にもなってとても勉強になりました。
「中国産うるし」に対して、どんな意見を持ってらっしゃるかは、本当に十人十色だと思います。
しかし、間違いなく言えること--。
それは、日本国内では日本人が欲する量の天然漆の産出は、もはや絶望的で(そうなったのは私達に責任があるのですが)、中国の広大な大地が生み出す潤沢な中国産漆なしには、日本が世界に誇る漆文化を維持できない、ということです。
この事実に目をそむけることはできません。
そして、中華人民共和国という外国、共産主義国家という日本とは違う体制、共存する多民族、貴重な現金収入として漆掻きの労働にせっせと励むミャオ族の人々。
そこからはるばるやって来た、豊かな中国うるしの恩恵に感謝したいと心から思いました。
おまけ。
さてさて、その臼杵さんですが‥。
今回の旅行中に、ミャオのうるし掻きさんの仕事道具(傷つけの刃物、漆を採取する刷毛、採った漆を溜める竹筒)の「三種の神器」?を手に入れたので、この年末の帰省の時にでも見せてくれると言ってくださいました。(香川がご実家なんですね)
わっ!!
ものすごく楽しみです!
本当に見せていただいたら、このレポの続編として、またご紹介したいなあと思っています☆