漆のお仕事をされる方の多くの方はそうだと思うのですが、「予定通りに漆が乾いてくれる」ということは、とても大事なことです。
特に、コンク−ル用の出品作品を作っている方にとっては切実ではないでしょうか? 搬入までの残り時間の間にできる限りの創意を加えるために「すみやかに漆が乾いて」くれないと、出品できずたいへん困ってしまいます。
うちの工房の場合は、そこまで乾きの早さは気にしません。
逆に「乾きの遅い漆」「なかなか乾かない漆」の方が好みだったりするんですね。(特に上塗りの漆)
ゆっくり乾く漆は、回転率が悪く、作業性こそよくありませんが…。
急いで早く乾かした漆の塗膜にはない、味わいがあるんです。
ときどき、この日記でご紹介するヘンな?塗り肌のうつわ(
こんなのとか
こんなのとか…)は、たいがい時間を気にせずじんわりと乾かしたものなんですよ。
そして今。
工房の漆室の中に、なかなか乾かないお椀があります…。

このお椀たちです。塗って室に入れて10日経ってます。

白息がかかるので、もうかなり乾いていると思うのですが…。
(手前のお椀の左側が丸く白っぽく曇っていますが、息をかけたあとです)
塗膜に乾きがきているかどうかは、このように、塗膜にハア〜ッと息をかけてその息のかかりぐあいで確認します。
その息のかかりぐあいことをこの世界では「青息、白息」と呼んだりするものです。(息が青くかかると乾いておらず、白いと乾いている)

…もうほとんど乾いていると思うんだけどなあ…。
でも、この色艶が乾いているように見えないんですよね。上塗りした時のまんまの色艶なんです。
たいていは乾くと色が濃くなったり塗り肌の様子が変わってすぐ分かるのに…。(しかも、このお椀はほんとはつや消しに塗りあがるのを期待していたのです)
これはこれで、なんとも色っぽい塗り肌ですが、逆になまなましすぎて乾いていないようにも見えます。
さて、工房の漆ならではの「乾いた色・雰囲気」というのがあって、いつもなら息をかけて塗り肌を見てすぐに判断できるんですが、このように、たま〜に分かりにくい時があります。こういった色艶に乾いた時は、見た目ではほんと区別がつきにくいです。
触ると、一発で分かるんですが… もし不用意に触れてしまって、まだ肌がやわらかかったりすると、せっかくの塗り肌をだいなしにしてしまうことになってしまいます。;;
自由きままな塗り肌の表情を持つ、工房の日本産うるしですが、まぎらわしい?時もあります。

お椀の中に息をかけてみました。

底の一部分だけ、息がのりません。
ここはあきらかに乾いていないです。(息をかけないと、お椀の内部もおなじ色つやの塗り肌に見えるんです)
じゃあ、ほかの部分はなまなましく見えるけどやっぱ乾いているんだ…
と思う。(←弱気 )どのみち、乾いてない部分が多少なりとあるのは確実なので、もうしばらくきつめの漆室に入れて様子をみますね。
でも、あまりにも風変わりな漆なんで、松本に聞くと「大森俊三さんの2006年の12辺目の生漆…」というではありませんか。
(これまた、なんという風変わりな漆を…)このお椀は松本が東京に出張に出る前に「乾くまで時間がかかる漆を上塗りしたものだから、心して漆室の管理をするように!」と言われていたものなんです。
どうしても、気になります…。
さてさて、今日、三越日本橋さんで作品展をしていた時の荷物の一部が帰ってきました。
荷物と一緒に、ご来場されたお客様や友達が持って来てくれた、お菓子やおみやげがいっぱい入っていて、びっくりしました

松本はぜんぜん言ってくれないんだもの…ほんとに嬉しかったです。(さっそくいただいています☆)
お礼が遅くなってしまいましたが、本当にありがとうございました。
これからも頑張りますので、どうぞおつきあい下さると嬉しく思います。