すっかり冷え込んできて、「冬だなあ」と感じる日々が増えました… が、木々たちにとって、この落葉がおわったこの時期は大切な季節。
来年の春にむけての準備を、ちゃくちゃくと進めています。

さて、そんなこの季節、茨城の奥久慈漆生産組合さんから、漆の苗を植栽したというお知らせをいただきました。^^
その漆の里づくり事業の一環で行われました「奥久慈漆植樹祭」の模様を、事務局の小野瀬さんが報告してくださいました。


本日(12月6日 日曜日)奥久慈漆生産組合の「奥久慈漆植樹祭」が行われました。
漆畑は常陸大宮市家和楽(やわら)地区の休耕地をお借りすることが出来ました。(ちなみに「壱木呂の会」で行った「植樹会」の畑はすぐ南側のところにあります)
今回植えた畑は3年ほど前までは耕作されていましたので少しは肥えているかとは思いますが、今後肥培管理をしながら育てていく予定です。<事務局・小野瀬さん>
今年の「壱木呂の会」さんの植樹に参加した弟子は「フカフカの土で、素人目にも良さそうな畑」と言っていましたが…。
こんなに広くて条件の良さそうな土地に植えられるなんて、いいなあ〜。



午前10時から事務局の司会の下、組合長の飛田祐造さんの挨拶を皮切りに式典は始まりました。
来賓は茨城県を代表して県北農林事務所林務部門長の大森豊様と、市町村を代表して常陸大宮市山方総合支所支所長の浅川明様にそれぞれ御挨拶をいただきました。
その他、茨城県林政課課長補佐の本多様、同じく林政課主任の山野辺隆様、県北農林事務所大子林業指導所所長の村松晋様、同じく林業振興課技師の鈴木孝典様、大子町農林課係長の塚田孝男様、(財)グリーンふるさと振興機構調査役の川上博行様と、多数の御来賓をお迎えして厳粛(?)に執り行われました。<事務局・小野瀬さん>
茨城の森林のお仕事に関わる方たちが、駆けつけてくださったのですね。^^
皆さんの漆畑に対する熱意がとってもよく感じられます。

続いて植樹に入りましたが、その前に我が奥久慈漆生産組合の副組合長の神長さんから、今日植える漆の苗のことについての説明と植え方、見本林として植える間隔や今後の管理の方法などについてや、看板の設置についての計画などを話していただきました。
漆の苗の根が沢山生えているほうを北側にして植えると成長が良いそうです。<事務局・小野瀬さん>



神長さんが、丹精込めて育てた健康優良児ですよ。
ヒゲ根がモッサリ生えていて、一見するとあんまり赤ちゃんぽくない?かな。笑 勢いがあって、根付きと成長がとっても良さそうです。
苗の良さは、とっても重要なんです。



細かな説明がされた後、全員で一気に植え始めました。
今回の畑は1,000uほどだったので、約80本の苗木を植えましたがあっという間に終わってしまいちょっぴりあっけなかったような感じでした。<事務局・小野瀬さん>
わっ、黒くて良さそうな土が…

確かに準備はあんなにタイヘンなのに、植えてしまう作業自体はすぐ終わって「あれれ?もう終わっちゃった?」みたいな感じになっちゃいますね。
次回は、もっと多くの苗木が植えられるような畑を探さなくてはいけないと組合内で反省の声が上がりました。
茨城の漆は結構成長が早いほうなので、約10年後には立派な漆成木となってしっかり漆を出してくれることを期待しましょう。
植樹祭が終わったら、漆畑のすぐ前の食事所「藤」において昼食会を行いました。特選?お弁当に舌鼓を打ちました。<事務局・小野瀬さん>
皆さま、本当にお疲れさまでした。^^
奥久慈では、新しい漆掻き職人が育つことになっています。
昨年一人、今年二人と茨城県の支援をいただき、若い人たち(菅原さん、岡さん、清宮さんなど)が順調に技術を学んでいますが、そんな中、この茨城でも、漆が掻けるような成木の漆の木が年々減ってきているんだそうです…。

近年、植樹を積極的にしていなかったそうで絶滅危惧種ではありませんが、これではいけないと反省の声で、今後は積極的に植樹をしていこうということになり、畑を探して植えていくことになりました。
今回の植樹祭はそんな事業の一環として、「漆の里つくり」として行われたわけなのですね。とてもすばらしいことです。
この「漆の原木不足」はたいへん深刻な問題なのです。
日本一の樹液産地の岩手県浄法寺町でさえ、近年原木不足に悩んでいます。一度、日本の漆は絶滅するのでは?という危惧の声さえ一部聞こえてきて、悲しくなってしまいます。

樹液産地の方々はいつも「この漆掻きの仕事も、私の代でもう終わりだろう」と、将来感のないままずっとお仕事されてきていました。
そんな中、積極的に苗木を植えていこうという仕事は、たいへんエネルギーを要することでもあり、なかなか出来ないものです。「未来を信じる」から、木を植えるのであって、閉塞感の中ではそういったことはむつかしかったことでしょう。
この「掻く漆の木がない」というのは、新米漆掻きさんにとっては痛手です。技術を習得して「さあ、来年から自分で漆を採ってみよう」と思った時に木がないのです。
新人の彼らにとってここが「分岐点」になります。「食えるか分からないけど、プロの漆掻きとしてやっていってみよう」と思う若い志は、ここでさっそく出鼻をくじかれることになってしまうのです。
木の成長は、人の世の営みに比べてうんとゆっくりとしたスパンで動いています。ウルシの木は不要の木として打ち捨てられに近い状態になっていました。が、ここ2、3年は世の動きが少し変わり、急に脚光を浴びるようになってきたのですが…。
でも、人の都合で、急に必要なだけの成木をどんどん登場させるなんて、できるわけはなく

でも、急にできた需要は止められません。
そして漆樹液産業の起死回生のチャンスでもありますから、こうした植栽活動はたいへん重要になってくるのです。
(産地によって、また立場によっていくらかこまかい内情は異なるのですが… 大枠では、漆樹液産地は、いまこんな現状だと思ってくださると幸いです)
こうした地元の皆さんの努力を、少しでも多くの方に知って頂けますよう、微力ながら私たちも頑張りますね

どうぞ、よろしくお願いいたします。