東京都青梅市にある「澤乃井 櫛かんざし美術館」の所蔵品を主にした図録なのですが、これをご紹介したいと思います。^^
コレクターであった岡崎智予さんのをなんと4000点にもおよぶコレクションを中心に、清酒澤乃井の醸造元がひらいたこの美術館におさめられているのだそうです。
櫛などは、蒔絵のものが大半をしめています。
光琳、羊遊斎、是真といった作から無名の作のもの、素材も黄楊、鼈甲、象牙、貝とさまざまで、意匠も季節の花や美しい四季の景色、可愛らしい小鳥やユーモラスな虫、または物語の情景など、手のひらに乗る小さな髪飾りに、日本人の美意識が凝縮されていて、本当に見ていて飽きません。
作り手からの視点からみますと、例えば「櫛」という制限された形、大きさの品の限られた世界に、意匠を凝らすということは、難しくもありさぞ取り組みがいもあっただろうな…と思うのです。

時代事に区分けされており、近年に近づくとセルロイドやガラスなどの新素材の髪飾りもコレクションに加わります。(これもとってもかわいらしいのです)

巻末には、資料として江戸時代のさまざまなスタイルの結髪のモデルが掲載されているのですよ。(美術館には、もっとたくさんの種類のモデルがあります)
日本女性が「垂髪」から、技巧を凝らした「結髪」をするようになったのは江戸時代からで、こうした美しい髪飾り達も、それにともなって進化し、多くの女性の髪を飾るようになったのですね。
こうした髪飾り達を見ていると「これを身につけていた、当時の女性たちの人生はどうだったのだろう」と思い、幸多かったのかそれとも苦難が絶えなかったのだろうかと、いろいろ思いを馳せてしまいます。
