工房は、連日おなかをすかせたむぎ君の雄叫びが響き渡っています…。

工房の3ニャンズのうち一匹、キジトラのむぎ君。ストルバイト尿石症の持ち主なので、厳しい食事制限があり、ふだんはそれに甘んじているのですが…。もうガマンも限界です。

瞳孔拡大した目をギラギラさせて、赤ずきんちゃんのオオカミさんのように口を耳まで開き、カッと見開いた目のままでズンズン迫ってくる様子は鬼気せまるものがあります。

腹一杯のゴハン… むぎ君の願いが叶えられる日は来るのでしょうか。
さて、そんな秋らしい一日だった今日は、これをご紹介したいと思います。



いよいよ旅立つ直前の茶櫃と、茶托です。
茶櫃は径が一尺二寸(約36cm)、茶托は四寸五分(約13cm)。どちらもトチ材です。
オーダー当初は、すべて木地溜で仕上げる予定でしたが、途中でお客様のご要望により、茶櫃の蓋の裏に絵付けをすることになりました。


シンプルですが、堂々とした風格があります。

もうずいぶん前に引退された、香川県のとある伝統工芸士さんの挽いた木地です。吸着旋盤ではなく木製のはめ木で丁寧に挽いた木地で、とっても姿がよい茶櫃なんですよ。もう木地がないかも…と思いましたが、入手できて本当に良かったです。
茶櫃は、蓋をひっくり返して給仕盆にもなるのですが、その蓋の裏に絵付けをしています。



葉と実がついたミズナラがよい、とのご要望でしたが、絵でつぶしてしまうとせっかくの杢が見えなくなってしまうなあ〜と思い、葉は線描で描かせていただきました。
どの方向から見ても違和感のない構図にしています。
葉も表現はシンプルですが、その分、主役のドングリちゃんは、しっかりと仕掛けをして描きました。
実の部分は、立体感が出るよう、炭粉上げで少し盛り上げています。お盆の用途もあるので、少しの盛り上げで効果が出るようにがんばりました。
そして、ドングリのカサの部分は、モコモコした感じが出るように、漆で膨らませていた上に銀彩をしました。実の部分は、金箔を貼り、素材感の違いを出してドングリが可愛く見えるように工夫しています。
葉っぱが舞台で、ドングリちゃんが主役というようなかんじでしょうか。


なんと、どれも虎杢入りです。




この茶托は「あさがお型」と呼ばれる形で、香川県ではよく見られるもの。この茶櫃と一緒に使われる事が多いようです。
この茶托の裏にも、ドングリをワンポイントであしらっています。

絵付けが追加になったこともありますが、予定よりかなり遅れての納品となりました。

ご注文は、2年以上も前にいただいたのですが、本格的に絵付けを開始できたのは、娘が保育所に通うようになって、落ち着いた頃になってからの遅いスタートでした。本当にお待たせして、申し訳なかったですが、おかげでしっかりと仕事をすることができ、有り難く思います。
…ドングリを描くのは初めてでしたが、とても楽しかったですよ〜。
ドングリについて調べたり、ドングリの実る木がある場所に敏感になったりと、とっても勉強になりました。
仕事が終わって嬉しい反面、ちょっと寂しいような気もします。
改めてドングリが好きになりましたので、また他のシーンでも登場させたいな〜と思います。


今日のおまけ写真は、冒頭のむぎ君です。
…こわいでしょ、こわいでしょ、この顔!!!
一日分のゴハンをしっかり食べても、ぜんぜん足らないようです。

ローカロリータイプのフードに切り替えた方がよいのかしら…。