
工房の床下には、国産漆をタップリ詰めた樽が、ところ狭しと貯蔵されています…。
国産漆はたいへん貴重な高額の素材ですが…。申し訳ないのですが国産漆でありさえすれば、すべて高品質、というわけでありません。当然ながら、品質にはムラがあります。
そこで工房では、子供の時分から漆オタクだった松本が、目利きで選んた「これは好み

それらの漆の樽の一部が、10年前後の長期間の熟成を経て、眠りから復活することがあります。


2008年産の浄法寺漆、五貫樽(19キロ弱)です。大森正志さんの盛辺漆(真夏に採取した漆)のようです。精製していない生うるし、荒味漆です。
久しぶりに蓋紙を外し、中身を確認。水分の揮発により、かなり量は減っているようですよ〜。
よく考えたら、仕入れた時は、その減った分の水分に対しても、しっかり払っているわけなので、もったいないといえば、そうなのかも…。

でも、それだけ漆の中身が濃厚になり、よりグレードアップしていることにもなるんですね。
この浄法寺漆ちゃんは、木の樽で8年間過ごし、ほどよく熟成してきていたので、これから樽から出てくるのです。


ううむ…。

まったく精製していない生うるしのはずなのに、精製漆にしか見えないこの不思議…。


これは、漆掻きをした時に出る、カンナからでた木くずです。
この木くずが入ったままの濾していない生うるしを「荒味漆」と呼びます。一見、よけいな異物と思われるこの木くずですが、松本は長期熟成の場合は特にイゴソを重視していて、濾し取らず一緒に保存しちゃいます。(もともとは同じ木だったもんね…)
このイゴソと漆樹液をしっかりと練って一心同体にし、200gのチューブにツメツメします。



漆の情報を記載しナンバリングをする松本。ナンバー80までいったようなので、水分が飛んだとはいえ、さすが五貫樽はデッカイなあ…。タップリ入っています。
この2008年の大森正志さんの盛漆は、仕入れた時は「下地か中塗りにでも」と思っていたんですが…。
なかなか出世して、黄味の強くてきれいな、いい感じの漆になっていました。

木樽での熟成は終了して、これからチューブ内で緩慢な熟成を待とうと思います。
