2008年06月28日

■浄法寺の「遅霜」の被害について。

香川県では、今年は順調な天候で、工房の庭の漆の木も元気な姿を見せてくれています。
しかし、肝心の漆樹液生産地である岩手県二戸郡浄法寺町ではどうなのでしょうか?

実は、日本文化財漆協会で『5月に協会の植栽地(熊沢地区、吉田地区)遅霜の被害があった』という報告があって、とても気になっていました。(協会の植栽地と、浄法寺でうるし掻きをしているところはすごく近いのです。ほぼ同じエリアといっていいくらい)
そこで、いつもお世話になっている浄法寺町の漆掻き職人、大森俊三さんにお聞きしたところ、「霜?そうだよ、5月に霜にやられて、今年の新芽がだめになってしまったよ」とのこと。(…さらっと言われてしまいましたが)
がく〜(落胆した顔) ええっexclamation
…いちばんの新芽って大事なんです。

東北地方は寒冷地なので、こんなことがあるのでつねづね心配はしていたのですが。

どんな状況か、すごくすごく心配だったですが…。
東京展の準備で忙殺されてそのままになっていました。
(葉っぱの様子、写真がみたいけどなあ… 新人研修生の本間さんに頼むのも悪いしあせあせ(飛び散る汗)
…と思っていたところ、昨年の研修生の竹内さんが浄法寺入りしているという話を、東京滞在中に本間さんから聞きました exclamation

そこで、さっそく竹内さんに電話。
(そう、竹内さん、しっかり今年の漆掻きのお仕事に参加していました!)
そして、
「もう、だいぶ新しい芽が伸びちゃって分かりにくいかもしれないけど」と、霜被害の名残の写真を撮ってくれることになったのです。


バッド(下向き矢印)そして先日、いろんな写真を送ってくれました。
6/28竹内さんの浄法寺の漆の写真2
五月の中頃に遅霜に芽がやれて、次の芽が育ってきたところです。今年は掻けません。<竹内さん>


わ… 葉っぱが少ないです。たらーっ(汗)

竹内さんが「今年は掻けません」と言っているので、今年はこの漆の木たちからうるしを採る予定にしていたのでしょう。
こんな状態ではがんばってキズを付けても、うるしは出ないです。
せっかくの貴重なウルシの木…。
来年以降に見送ったという判断は、賢明だと私も思います。

6/28竹内さんの浄法寺の漆の写真3
もう一枚。通常なら、びっしり葉が茂っているはずの枝先ですが、まばらにしか葉が付いていません。

バッド(下向き矢印)この写真なんか、分かりやすいです。
6/28竹内さんの浄法寺の漆の写真
先の芽がやられ、次が延びています。<竹内さん>

…木もがんばってます。ふらふら
でも、新芽を傷めて最初の葉っぱが出なかった影響は大きいですね…。こんな少ししか葉をつけられないなんて。

似たような事例が、うちにもあります。(うちの場合は霜で春の新芽が焼けたのではなく『新芽をもいで食べた』んですがあせあせ(飛び散る汗)) →新芽を採った3ヶ月後の枝
地域の違い、経過時間の違いはありますが、こんなふうに木は、無くした葉をカバーしようとするんですね。

バッド(下向き矢印)そして、最後にまったく雰囲気の違う木の写真。
6/28竹内さんの浄法寺の漆の写真1
吉田の谷、向かいの斜面は霜があたらなかったようです。<竹内さん>

わっexclamation 
ほんと、こっちの地区の木の葉っぱはとってもきれいによく茂っています。
霜の被害のあったという吉田地区ですが、その向かいではそれといったダメージを受けずに、こんなに木が生き生きとしているんですねえ。
ほんの少しの条件の違いで明暗が分かれるなんて、ほんとうに自然界はシビアです。

****************************************

…さて、読んで下さっている方の中には「葉っぱが茂っているかどうかが、そんなにうるし掻きにとって大事なの?」と、不思議に思われる方もいらっしゃるかもしれません。
葉っぱが大事かどうかと言われると… 大事なんです。

「ヘチマ水」なら、ヘチマが根から吸い上げた水分を切ったヘチマの茎の断面から、どんどん採ることができますよね。
でも、うるし樹液は、ヘチマ水とは違います。
うるし樹液は、葉っぱが光合成をして作っているものなんですね。
なので、健康な葉っぱがたくさん茂っているかどうかは、品質のいいうるし樹液が、その木からたくさん生産されるかどうかに大きく関わってくるのです。
つまり、葉はうるしの生産工場みたいなものなんですね。

葉っぱ、とても大事です…。

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posted by 宮崎佐和子 at 23:59| Comment(2) | TrackBack(0) | ■ 浄法寺町の漆かきだより
この記事へのコメント
漆の世界は奥が深いです、驚きました。
写真の場合はシャッターさえ押せばいいのでゴマンという人がやっています。
私がもっと驚くことはこれだけ内容が素晴らしいブログなのに反応があまりないように
見えるということです。
漆というものに興味ある人が少ないからでせうか。
私も漆には興味はないですが物を作るとか育てるとか自然に触れて生きていくお姿に感動してここにアクセスしています。
Posted by 鮭缶 at 2008年06月30日 09:21
鮭缶さん、こんばんは!
いつも見て下さって、ありがとうございます。
今日は初夏らしいすがすがしい1日でしたね。^^

>漆の世界は奥が深いです、驚きました。
写真の場合はシャッターさえ押せばいいのでゴマンという人がやっています。

ありがとうございます。
漆は、かなり特殊な部類の工芸だと思いますので、一般に広く…というわけにはいかないでしょう。(もともとはごく一部の人たちのためのものでしたし)
どの世界も、足を踏み込むととっても奥が深いと思います。
写真は、確かにカメラを持っている方なら誰でも表現できますが、私でもある程度なら、撮る方の個性は分かります。
「いいな」と思う写真に出会うと、見入ってしまいますよ。

>私がもっと驚くことはこれだけ内容が素晴らしいブログなのに反応があまりないように
見えるということです。
漆というものに興味ある人が少ないからでせうか。

わ…
そこまで言ってくださってありがとうございます。;;
ちょっと「漆工芸」っていうイメージとはかけはなれた内容ですが、私たちの視点でなるべく多角的になるよう努力しています!

たしかに、「漆に興味がある」というのは、ほんのごく一部の方達だと思います。^_^;
私たちも、「この日記、見て下さっている方はいるのかなあ〜」と思っていましたが…
この東京展で、ほんとにいろんな方から「見てますよ」と教えていただいたので、ほっとしました。
だから(たぶん?)大丈夫ですよ。

私もネコさんたちの様子を楽しみにしています。
これからも、よろしくお願いいたします!!


Posted by 宮崎佐和子 at 2008年06月30日 20:31
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