それは「真珠」なんですね。

天然真珠の、どことなく輪郭のぼんやりした、しかし深い部分でキラリとしたみずみずしさを感じさせる不思議な美しさ…。
その素材感が国産漆、ことに浄法寺の漆かき職人、大森俊三さんの採る真夏の漆に似ているのです。(工房では上塗りは大森俊三さんの漆を塗っています)


その微妙な質感を、私のカメラでは写し出すことは難しいですが…;
これは、なかなか気に入った塗り上がりのお椀の一つです。
表面が乱反射して輝き、なおかつ透明感も感じさせてくれます。
本当に微細な表情ですが、これは上質の国産漆ならではの表情だと思います。(和珠にも選抜きの中国淡水に劣る粗悪品が当然あるように、漆も日本産漆なら、必ずしも美しいというわけではないんです)
どの世界にもその道の名人はいるもので…大森俊三さんの採る漆は、間違いなく最高ランクで本当にすばらしいと思います。


南洋のバロック真珠。白蝶貝の真珠ですね。
(奄美の養殖場で買ったものです)

黒蝶貝の真珠。
とっても気になる輝きです。

こうして見ると、漆も真珠もおだやかで優美なものですね。
貴金属や宝石のように強いインパクトは持っていませんが… いつまでも見つめていたくなる優しさや潤いがあります。
さて、同じ年度の大森俊三さんの盛り漆を使っても、上塗りのタイミングや漆の熟成などによって、塗り上がりの微妙な雰囲気がかなり異なります。
これがブレンドや調合をしていない、生ものたる山出しの漆の気難しさです。(漆を扱う業者さんの漆芸用の漆は、主力商品の中国産漆をふくめ、仕事をしやすいよう漆を調合してくれています)
でも、工房で扱う1本立ての漆はそうはいかないんですよね…。けっこうなじゃじゃ馬揃いです。;
漆が喜ぶような漆室をつくり、丹念に塗り上げて入れ、深く輝くような塗り肌に仕上がると「やった!」と嬉しくなります。
気に入った塗り上がりになった時は、漆室から出した器をずらりと並べて、松本と二人で吸い込まれるように見入ります。
今年の春は、宇和島の真珠養殖を見に行ったりしていましたが、養殖場の方々が丹精こめて育てた母貝から、真珠を浜あげする時の気持ちに近いものがあるのかもしれません。


上のお椀よりも、つやがあってうるうるした感じですね…。
手触りもしっとりしています。こうしたツヤ感のある塗り上がりの方が好きだと言われる方も多いです。
これも、大森俊三さんの漆なんですよ。

濃いめの色の黒蝶真珠。
…やっぱり漆ににているなあ。
…やっぱり漆ににているなあ。
漆と真珠、共通点があるとすればどちらの生き物である木と貝の「山の恵み」と「海の恵み」ということでしょう。
木が傷つけられた体から流す樹液と、貝が体内に入った異物に巻いた分泌液、どちらももの言わぬ生命が必死で流した血そのもののようなもの、と言ったらセンチメンタルすぎるでしょうか。
こうした素材を手に取ることができるというのは、本当にぜいたくなことと思います。
そして真珠は、美しい本物を比較的容易に見ることができますが、漆はそうはいきません。ピュアで最高品質の日本産漆を実際に見る機会は、複雑な事情により、そうそうないのが現状です。
もし、作品展会場に来られましたら、いろんなドラマを持った器の数々を実際に手に取って見てやってくださいね。^^
お久しぶりです。^^
今年もいよいよ西条まつりが始まりますね! …練習の方は順調でしょうか??
>うわ〜っ 私好みの仕上がりですねえ。特に上のお椀。いいなあ・・・最近、株が安くてお小遣いがないけどそのうちに買いたいなあ・・・
ありがとうございます。笑
ほめていただいてとても嬉しいです。
(舁だんじりさん、株をやってらっしゃるんですか。今、厳しいシーズンですね;)
当日はけがをしないよう、楽しんでくださいね。
だんじりの勇姿、ぜひ見せびらかしてください☆