そんなきゃしゃな角重箱は、その木地と木地との合わせ目を補強するために、布か和紙を下地にしっかり貼ります。

こうすることで、しっかりとしたものになっていきます。

漆をされている方なら、見慣れたものですね。^^
さて、糊漆とは名前の通り、糊と漆を混ぜたもの。粘りをつけて布や紙を貼る時によく使います。レシピは簡単です。
糊(米糊や麦糊)を自分で好みの固さに炊いて、それを冷まして漆を約1:1でよく混ぜてできあがり。
この比率とかも、仕事の内容によって変えたりします。

今回は米糊です。上新粉を使いました。
漆は大森俊三さんの14辺目の漆。(←下地に使いやすく、最近重宝しています。ほんとに下地から日本産、使いまくりです♪)
なんだか、美味しそうな?色になっていますね。
この「糊炊き」、お料理が苦手な人は炊くのが面倒かもしれません。カスタードクリームを作る要領なので、きちんと手順をふまないと糊がダマダマになってしまいます…。ダマダマになった糊を使うのはご法度です。
実は、松本は糊炊き大好き。「こんなに使わんぞ!」をいうくらい作ります。
でも今は不在なので、しぶしぶ?自分で炊きました。出来は、まあまあかな。
さて、下地の和紙はの大福帳を使っています。

厚みがあって、しっかりした和紙なんです。ぱりっと貼れて、気持ちいいんですね。
さて、この大福帳が面白いんです。
これは明治時代くらいの生命保険会社の帳簿みたいなんですが、ほんとうにきちんきちんと筆で書いて会計をつけてるんですね。
二つ折りにした厚手の和紙を1ページとしているので、墨で書いても文字が裏写りしてませんし、増えるアルバムみたいに綴じていていくらでもページが増やせるみたいです。
これ一冊で1フォルダなんですね〜。
(修正液なんでないですが、誤字とかは上から紙を貼って直しています)
当時のお客様の名前や入金の様子等を事細かにつけていて、まさにこれって個人情報だなあ。;;
しかも、ときおりメモをはさみ込んであったりします。(二つ折りにしたページの間とかに)
今でいえば備考をポストイットで貼っているようなものだと思いますが…。


老年のお父さんがどうしたのでしょう。
いろいろあったんでしょうか…。
わ〜、すごく気になります。(でも、解読していたら仕事にならない

工房は、松本の父譲りのものまた父の師匠からのものをよく使わせてもらっているので、時にびっくりするようなレトロなもの(古新聞とか、古い材料のパッケージとか)一緒に出てきて、しみじみ見入ってしまいたくなることがよくあります。
私には無関係だった昔の人の過去が、その度にふっと浮きあがってくるようで、不思議な気分になるのです。
わたしも漆の加飾をして何十年にもなりまが、最近では自分の技を言葉でたどり返すことをしています。つまり言葉で漆の技をも一度生きてみようとしています。
小説の形で、少しずつ本に書いていますが、宮崎佐和子さんの「和うるし日記」はとても参考になります。
コメントを書いてくださって、ありがとうございます。^^
>とても丁寧なところがすべてにわたってうかがえて、ずっと見て読んで楽しませていただいています。
わたしも漆の加飾をして何十年にもなりまが、最近では自分の技を言葉でたどり返すことをしています。つまり言葉で漆の技をも一度生きてみようとしています。
美由紀さんはもう長い間お仕事をされている、ベテランさんなんですね!
ふだん、何げなく進めているお仕事を、第三者の方に読んでいただくような文章にするのは、意外と難しそうです。(私は、ただ自分の目線を通して見た事実を、こんなので分かるかな?と悩みながら書いています。;;)
>小説の形で、少しずつ本に書いていますが、宮崎佐和子さんの「和うるし日記」はとても参考になります。
わあ、素敵ですねえ!
漆の仕事がからむストーリーは、あまりないと思います。でも、とても情味のある素材ではないでしょうか。
(って、この日記って参考になるのかな?とちょっと恥ずかしいような ^^)
文章を書くことはとても人間的なことだと思います。
書くことで、心の中が整理されたり、よく知っていると思っていたことが実はそうでなくてもう一度見直したり、今まで忘れていた昔を思い出したりもしますし…
また、書くことであらわしたいものが必ずおありでしょう。
自然で知的な、人間らしい欲求だと思います。
おそらく、かなり大変なお仕事になるかと思いますが… ぜひ完成させてほしいです。
頑張ってくださいね!
これからもよろしくお願いいたします。
漆とつきあっていると、
漆ってなんて劇的なんだろうと(笑)。
漆ってその一番初めから劇的なんですよね。
ウルシの木に掻き子さんが掻き溝を入れますよね。
すると、樹液の通り道が切断されたので、
このままでは衰弱するか枯れ死することになってしまいます。
そこですぐ代わりの、新しい道作りを開始します。
ところが急ごしらえ迂回路は狭いために、
粘っこい樹液は通過することができません。
生きていくための非常手段として、
全精力を集中し、酵素が働き、
粘っこい樹液は、サラッとしたウルシに劇的に変化します。
それで狭い迂回路を通ることができます。
生きるために全精力を集中したエネルギーの結晶それが、ウルシなんですね。
でもこのウルシは、迂回路を4日、5日で完成させて通過し終わると、酵素が働いて、またもとの樹液に変化し、樹間を移動してしまいます。
だから掻き子さんは規則正しく4日、5日目にウルシを掻くわけですね。
そうしなければ掻き子の技がアマイと、
ウルシの木に笑われ、キツイとウルシの木を泣かすことになりますね。
漆は深い物語なんですよね(笑)。
お返事をくださいまして、ありがとうございます。
今夜は少し冷えてきました。
漆掻きの際の、理論(というか理想論かな)は、私たちは美由紀さんとは違う見解を持っていますが‥
私も、漆って誕生から不思議だな〜とつくづく思います。^^
ほんとう、漆がお好きな方がよくおっしゃるのですが最初に木を見つけて使った人はすごいなあと。
漆の木って、存在自体が神秘的に感じてしまいます。
もちろん、漆に限らず、万物に深い物語があるのでしょうが‥。
深部まで触れられる人が、それぞれ探求して、いろんな形で表現して見せてくださるのは、とても楽しいものです。
ぜひ、完成させてくださいね!
この貴重な日記が、く続くことを願います。
わたしも東京の三越百貨店で個展を去年の暮れにやりました。こんど佐和子さんの作品展会場でお会いしたときには、声をかけますね(笑)。
ではその日まで。
もし、お出でることがありましたら、声をかけてくださると嬉しく思います。^^
(なんだか、恥ずかしいなあ)
どうぞ、よろしくお願いいたします。
こちらはそろそろ初雪の季節です。
庭の浄法寺苗はすっかり葉を落としました。
麦漆は使いずらいのでついつい米糊に頼ってしまうのですが夫々、糊の作り方に一工夫あって面白いですね。
和紙は年数を経たものが良いと教えられたので地元の紙屋さんでもなるべく古い物をと我儘させてもらっているのですがなかなか良し悪しが分かりません。
漆と同じで“枯らす”のに意味があるのでしょうか。
浄法寺の漆共進会の様子、興味深く拝見しました。
(ふゆかぶさんの画像も拝見しました。)
白っぽい漆は水分の多い漆…納得です。
もうそちらは、初雪がいつかという季節なのですね。思えばもう年末が…
1年経つのってほんとうに早いです。;;
麦糊も使いだすといいんですが…
なぜか最近は米糊ばかりです。なぜだろう? たぶん、上新粉の袋が空になったらまた麦糊に戻ると思います。
でも、家庭料理とどこか似たところがあって、地域によって糊炊きの工夫もさまざまでしょうね。
もし、いちご納豆さんの得意技があったらこっそり教えて下さいね。^^
>和紙は年数を経たものが良いと教えられたので地元の紙屋さんでもなるべく古い物をと我儘させてもらっているのですがなかなか良し悪しが分かりません。
漆と同じで“枯らす”のに意味があるのでしょうか。
さて、どうなのでしょうか。(?。?)
(すみません、私も和紙の良い悪いはよくわかりません。実際に使って『これ、いいな〜』と気づく程度です;)
でもいちご納豆さんがなるべく「古いもの」を探される、というのはなるほどな〜と思いました。
昔ほど良い材料を使い、職人さんも大勢で切磋琢磨して作られるので、古いものが手に入るならぜったいその方がいいですよね。
時代が新しくなるにつれ、残念ながら素材も豊かな地盤を失うのでだんだん貧相になってきてよいものを探すのが難しくなってきます。
>浄法寺の漆共進会の様子、興味深く拝見しました。
(ふゆかぶさんの画像も拝見しました。)
白っぽい漆は水分の多い漆…納得です。
わ、見てくださってありがとうございます。
ふゆかぶさんの記事、シンプルですがとても分かりやすいでしょう。
白っぽい漆‥ 水が多いので精製するとがっくりするほど目減りしてしまうんですよね。
白っぽい生漆は、見るだけでテンションが下がってしまいます。今年の共進会ももし見に行っていたら、よい時期を知っているだけによけい落ち込んだかも‥。
来年は、出来のいい年であることを願うばかりです。
いつもコメントを下さいましてありがとうございます、これからもよろしくお願いいたします☆