

左が松本の2000年末辺漆、右が大森さんの2006年末辺漆です。
どちらも浄法寺産の荒味です。(クリックで写真が拡大します)
どちらも浄法寺産の荒味です。(クリックで写真が拡大します)
左の松本が採った漆はもう数年、ビン詰めのままの状態なんです。この年の漆は、本当に良かったです。
いつの日か、タイムカプセルの如く開いて使う予定です。
さて、この時は杉で作られた漆桶から見本用にビンに詰められたばかりだった大森俊三さんの2006末ですが…
今は、こんなふうになっています。



だいぶ沈澱してきていますね。
すうーっと白いかたまりができて、ビンの内側の側面を伝って、マリンスノーのように降りているようです。



いつも、生うるしは大きな木桶か茶わんに入れて保管しているんですが、時間が経つとこんなふうに変化していくんですね〜。
よく使う漆は茶わんに入っており、そこから必要な分取り出しているんですが、本当にちょくちょくかき混ぜて使わないといけないなと思いました。


松本の採った浄法寺の漆です。
2000年の末辺(秋の漆)。
これは、採ってすぐにビンに封入した漆で、採った時からほとんど変化していません。なぜビンに封詰めしたかというと、当時は漆の保存法をいろいろ研究していた時代で、こんな実験もしていたんです。(今は、もうこの保存方法はしていません)
この松本の漆は、実はほとんど沈殿していないんです。
でも、これはうるしが粘いからではないんですね…。(実はシャバシャバのサラサラ漆です)以前も書いた通り、これはかなりマニアックなうるしなんです。
なぜ、そうなったのか前回は触れずにいたのでちょっと書き記しておこうと思います。
木から採って(2000年)すぐビンに入れたこの未熟なウルシ樹液…。入れた時は写真のような色でなく淡い黄色がかった麦酒色だったのです。
ビンに入れて2年ほど、まったくといって良いほど変化ナシのまま年月が過ぎました。しかしある日ふと「この漆って、中はどうなってるんだろう?」とむくむくと好奇心がわき、松本が封印していた蓋を開けてしまったのです!
その時はいろいろいじってまた蓋を閉まったのですが…
ビンの中が減圧されて、未熟なまま保たれていたこの生うるしにぐんぐん変化が起こりました。遅ればせながら、漆の発酵が始まったのです。
山出しの生うるし(荒味うるし)には木クズなどのごみが入っているのですが、この木クズ(イゴゾ)に発生した炭酸ガスのアワがついて、ビンの中でイゴソが上下するようになりました。(ビンの外から眺めて面白い光景でしたよ)
その時舞い上がったイゴソがビンの内側に浮き上がったまま付着してしまい、付着したまま白くなっていきました。
そして、今。
発酵はほどなくして収まったのですが、ビンの蓋が漆で固まってしまい開かなくなってしまいました。蓋を見るとちょっと盛り上がっているので、きっとビンの中の内圧も高くなっているのだと思います。(ふつうの人の手ではもう開きません…)
こんな経過を経た?かなりヘンな漆なんですね。
以前はサンプルとして展示会場に移動したり、いろんな方が動かしてごらんになったり…と安定しない時期も経て今は安静にしている漆です。
ちなみに、この松本の採った当時の浄法寺漆ですが…
この日の約半日分の収穫量で、ほかの日のものは混ぜていません。ほんとに「この時だけの漆」なんですね。
いつか使いたいけど、どうやって中身を取り出そうかな?とも思案する大事な貯金箱のようなビンなのでした。
