2008年11月19日

■「西日本の漆を守る会」参加レポ/2

さて、第11回西日本の漆を守る会の交流会の2日目です。
参加者の皆さんは美しい高原のキャンプで、いい朝を迎えたようです。
この日はふたつの講習会があったそうで、西洋のラッカー技法「ジャパニング」の研究をされた北川美穂さん、日本の漆事情に詳しい(株)箕輪漆行の蓑輪圭二さんが講師として、興味深いお話をしてくださいました。


2008年8月24日(日)

塩原高原キャンプ場にて
 ・「海外の漆事情」のお話
 ・「国産漆の現状等について」のお話


二日目は、朝から二つの講習会がありました。
ひとつ目は「海外のラッカー事情」です。
ヨーロッパにある日本の漆芸品は、

●開国以前の日本国内向けに作られたしっかりした仕事のもの
●輸出向け用のヨーロッパ人オーダーの華美なもの
●輸出向けの下地なしの粗悪品

と、いろいろあるようです。そのうちにヨーロッパでも漆器を作ろうと試みて出来た、他の材料で漆器ふうに見える塗装・塗料技術があるそうです。しかしながら熱に弱かったり、多にもいろいろ弱点があり、食器には使えないそうです。(あじ)


11/19講習会資料
海外に出た古い漆製品。
11/19講習会資料
漆の表現をめざした「ジャパニング」の製品。
11/19講習会資料
「ジャパニング」に使われた材料。


漆本来の素材性よりは、日本漆器の持つ独特の色や質感、図柄等の見た目の美しさに当時のヨーロッパの人々が惹かれていたことがよく分かりました。(あじ)

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ふたつ目の講習会は「国産漆の現状等について」です。
今、日本産漆は日光東照宮の関係での大量使用により流通が減っているようです。これは、5年ほど続くそうで、増産のための方策として、漆掻きを休業していた人に再開してもらいやすくするための、今までの三割アップの値で掻いた分をすべて組合が買い取るというシステムにしたそうです。
そのために、2〜3年は大丈夫だとのことでした。けれど、だんだんと漆の木がなくなってきたその後が心配です。
この前は、国産うるしがだぶついていた状態だったのに、急に「増産」と言われても木はすぐに育たないし、今後安定した収入で漆掻きを続けていくためには計画生産の必要がある語られました。
漆の価格も、今回のことや景気に左右されて値の変動があり、漆掻きを専業で続けていくのは大変難しいと分かりました。漆掻きはとても技術のいる仕事なのにそんな状況だと、この先年季の入ったベテランの方々がいなくなり、漆本来の美しい漆も途絶えてしまうかもしれないと強い危機を感じました。
漆の仕事は本当にスパンが長く、一世代どころか三世代分くらいを考えていなくてはいけないと思いました。

今回は奈良県曽爾村(ぬるべの里)の方が町おこしで漆産地にするために参加しており、その方が「日本産漆がまさかだぶついていた状態だったとは知らず。このまま植林して育てても、何十年後の流通や使い道を考えていないとただ木のある所になってしまう」と危惧しており、私も同様に感じました。
日本産漆が、漆屋だけでなく産地から直で買えるようになればいいのになと思います。漆の木が樹液だけでなく、種(昔はロウを採っていたとき聞きます)や掻き殺して伐採後の木材などなど全て含めて活用したり塗料以外の使い道でも利用できれば、少しは1本から得られる利益が上がるのかなあ〜と単純なことを考えたりしています。
今回の会には、漆の科学的利用の研究をされている方も参加していました。

はじめて参加しましたが、皆さんそれぞれとても漆に熱〜い方々で、その熱さに圧倒されまくり?の2日間でした。こんな熱い方々がいらっしゃるんだから、私も日本の漆に少しでも貢献できるようがんばらねば!と身の引き締まる思いです。
皆様、本当にお世話になり、ありがとうございました。(あじ)


あじさん、どうもありがとうございました。晴れ

…当初は別の方がレポしてくれる予定だったのですが、その子が急に行けなくなってしまい、急きょピンチヒッターとして?「あじ」さんが書いてくれることになったものです。あせあせ(飛び散る汗)
アップするのがずいぶん遅くなってしまいましたが(もう11月‥)
皆さん、いかがだったでしょうか。

私は、この西日本漆を守る会の発足当時からのメンバーなのです。(発足した時は、まだ松本も私も研究生‥。会場は同じ徳島でした)
しかし、仕事を始めてしばらくしてから、いつも交流会が行われる8月末は秋から始まる催事の準備で忙しく、ずーっとご不沙汰。今年も、丹波の漆掻きのおっちゃん達が「顔くらい見せに来い〜」とおっしゃっていたんですが‥。ゴメンナサイ。

残念ながら、西日本の漆樹液産地は、非常に小さく生産量は各地でも10キロを超えることはそうないと思います。本当に、地元の有志の方々に支えられてこそ残っているものです。
漆をとりまく状況は刻々と変わっていっています。
こうした「地元力」に支えられている、小さな漆樹液産地ですが、若い世代の人が頑張って、それを大きくしそして担えるように力を付けていかないといけないなあとつくづく思いました。


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posted by 宮崎佐和子 at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) |   西日本の漆樹液産地
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