香川県独特の?みかん型?飯器。
今は、飯器に使われることはなく、菓子器や小物入れなどに求める方が多いうつわです。

「飯器」2006年 8月制作 Kazuaki Matsumoto
漆/岩手県産うるし使用 木地/トチ
漆/岩手県産うるし使用 木地/トチ
この飯器、ふっくらしたとてもいい形。
写真の赤・黒のほか、木目の見える溜塗りの作品もあります。
作品展の時は他の作品となにげに並べられていますが、新しく作った木地ではなく約35〜40年前に挽かれたもの。松本の亡父の師匠が持っていた木地です。
当時の香川県はよく工芸品が売れ、景気もよく、腕のいい木地師さんも大勢おり、そして材料の木も豊富にあった。技術も極まり、とてもいい仕事の木地がたくさんできたそうです。
いまの香川県は、木地師さんはほとんど廃業し漆産業も当時と見る影もなくなりました。この飯器の木地を持っていた師匠も、少し前に亡くなりましたが、その木地の一部をうちの工房に分けてもらっておいたものに手を入れて、作品の一つとして出すことができたものです。
サイズは径八寸(約24センチ)の横木取り。今はこれほどよい状態の大きな材料の木は入手困難で、しかも木地挽きもかなりよく、木が古いのでよく乾燥しています。
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余談ですが、この木地を持っていた師匠の奥さんが、師匠亡き後たくさんあった器の木地をもてあまして、なんとお風呂の焚き付けに毎日使っていたんだとか! 『よう燃えてええわ』という具合(うわ〜!!)だったのですが、なんとも惜しい話だなあ。(この飯器の類いは大きくって、燃やしにくいから残っていたとか)
この手の話はよく聞くんですが、仕事をしないご家族にとっては、場所塞がりのなんともめんどうな置き土産なのでしょう。
この時の木地は工房にいくつかストックしていますので、すこしづつ質のいい作品に仕上げて、新しい家庭でうつわとしての人生をスタートしてほしいと思っています

いい木地の風合いです。丸くってぽってりして趣味のお茶事で飯器に使ってみたくなりました。今は、お茶事できてないのですけどね。
トチの木はきめがこまかくて軽くて、女性的なふんいき。優しい感じなので好きです。
(ケヤキの方がブランドが通っているけど、威圧感もあるから…)
小さい飯器もあるけど、とっても可愛らしいですよ♪