2009年04月29日

■香川県漆芸研究所について。

漆芸研究所の看板

今月の11日、漆芸研究所は香川県文化会館(高松市番町1)内に移転し、新規一転オープンしました。
今年の春は、新しいスタートを切った喜ばしい春でもありました。^^
そして、香川県漆芸研究所について、興味のある若い方が最近増えているように思います。
「漆の学校ってどうなんだろう?」
情報収集のために検索で探してみている方も多いのではないでしょうか。でも、意外と参考になる文献や資料が少ないようなので、一私見ではありますが… そんな方のために、香川県漆芸研究所について修了生の立場から見て語ってみようと思います。

* * * * * * * *

まず、香川県漆芸研究所はとは、全国に先駆けて昭和29年に設置された県の施設です。
目的は、香川県の伝統的な漆工芸である蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、彫漆(ちょうしつ)の三技法の伝承、後継者養成です。50年以上もの歴史の中で、多くの著名な漆芸作家や漆器業界で活躍する優れた技術者を輩出し、漆工芸の拠点施設として重要な役割を担ってきました。
( ↓詳しくは、公式ホームページを)

※香川県漆芸研究所 (香川県ホームページ内)


移転した際、少し状況が変わっているかもしれませんが、以下、漆を目指す若い人が知りたいだろうな〜と思う項目を挙げて箇条書きにしてみますね。

●応募資格
・漆工芸の高度な技法の修得を希望している。
・高等学校卒業以上の学歴がある人、もしくはその年度に高等学校卒業見込みの予定の人、または中学校を卒業した人、または漆工芸の基礎的技術を修得したと認められる人。
・満30歳未満の人。

基本的には香川県内の募集が主流ですが、県外からの応募もできます。「若い後継者を育てる」という名目なので、年令制限があります。(『行って漆を勉強したい』という、ちょっと年配の方もよくいらっしゃるんですが…残念です)
応募枠は10人です。
志望者が多いと激戦?になりますし、枠より志望者が少ないとよほど問題がない限りはまず合格するのでは…と過去の実績を見てそう思います。^^


●受験内容
私の時は、面接、小論文、実技(デッサン)でした。
弟子に聞いてみたところ、彼女の時も同じだったそうです。小論文は受験当日にテーマが出され、それについて書きます。デッサンは小さな静物を出されそれを鉛筆デッサンしました。面接は、志望動機などを聞かれたと思います。
受験そのものは難しいもの、緊張するものではありません。


●研修内容
研修期間は3年間です。その間に、香川県の伝統技法、蒟醤(きんま)、存清(ぞんせい)、彫漆(ちょうしつ)の三技法を習得します。ほか、きゅう漆、乾漆、木彫、籃胎などの授業があります。私が在所中には、蒔絵の授業もありましたが、今はなくなっているようです。
講師は、日本工芸会正会員の方々がメインとなって指導にあたります。
一日のスケジュールは、8時30分〜朝礼、8時35分から授業、午後4時半ごろには授業が終わって放課後となりました。教育委員会管轄のためか(当時)、公立高校とほぼ同じ時間割でだったと思います。土、日が休み。移転した今は少し変わっているかもしれません。


●授業料、材料費
こんなに濃厚で特殊な授業内容なら、授業料もさぞ…と思われるのですが、授業料、材料費は無料です。(一部材料、自分の道具は除く)香川県が、地元の伝統技法の保存に力を入れて予算を出しているのですね。
これを知って、グッと心が動く人は多いと思いますexclamation
地元の人なら交通費くらいしか日々かからないし、県外の人でも衣食住をちゃんとしていればそれだけで勉強ができるのです。
…そうくると、夢みたいな条件なんですが。
この恵まれすぎた環境が、のちのち逆に「縛り」となるのもまた事実。居心地よい研修所を修了して世に出たあと、その後の人生の目的を定められずに長きにわたってさまよい続ける人を多く見かけたりもします。
しかしこれは、本人自身がちゃんと目的意識を持っているかにかかっていると思います。

* * * * * * * *

…ちなみに、松本は19才の時に研究生として3年間、27才の時に研究員として2年間、私は27才の時に研修生として3年間、ここで勉強をしています。
ここを出て、かれこれ10年近くたちますね。^^
新たなスタートを切った研究所のために、またこれから生まれる後輩たちのために、ちょっとした参考になるようなことを書いていきたいと思います。ムード

posted by 宮崎佐和子 at 21:46| Comment(2) | TrackBack(0) | ■ 香川県漆芸研究所について
この記事へのコメント
はじめまして。いつも楽しく拝見しています。
私はいま学生で、漆芸を専攻しています。
ちょうど卒業後に研究所を受験しようかと検討している所なので
今回の記事、とても参考になりました。ありがとうございます。

研究所へは移転前に一度うかがった事があるのですが、
今年度中にもう一度きちんと見学したいと考えています。
ご質問させていただきたいのですが、
修了・卒業制作の製図ときゅう漆は研究生の皆さんがされるのでしょうか?
また、修了・卒業制作の作業工程が進んで
つや上げ一歩手前くらいになるのは時期で言うと何月くらいなのでしょうか?
(その頃に香川へ行こうと思っております)
お忙しいところ恐縮ですが、お答えいただければ幸いです。
Posted by citron at 2009年05月01日 11:58
citronさん、初めまして!
コメントをくださいまして、ありがとうございます。^^
学生さんなんですね。
検討している方の中には、輪島か香川か…と悩んでいる人もきっと多いと思います。(雪が嫌で香川に来たという人もいましたよ ^^;)

>研究所へは移転前に一度うかがった事があるのですが、
今年度中にもう一度きちんと見学したいと考えています。
ご質問させていただきたいのですが、
修了・卒業制作の製図ときゅう漆は研究生の皆さんがされるのでしょうか?

えーと私が在所していたころは、修了製作の素地は乾漆だったので図面が欠かせなかったのですが、今は状況が違っているようです。きゅう漆は1年生の時に週1日授業がありますよ。

>また、修了・卒業制作の作業工程が進んで
つや上げ一歩手前くらいになるのは時期で言うと何月くらいなのでしょうか?
(その頃に香川へ行こうと思っております)

移転したばかりでスケジュールが変わるかもしれませんが、例年では修了展が2月末なので、その直前です。(みんな殺気立っていると思いますが…;; 気にせずにね) 
ただそのころには募集が終わっている可能性がありますね。
citronさんのご希望どおりになるよう、連休明けにでも研究所に聞いてみて下さいね。

この研修所についての記事は、あと2回くらいアップする予定です。
ではでは、よろしくお願いいたします☆

Posted by 宮崎佐和子 at 2009年05月01日 20:48
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