2007年01月15日

■刷毛の切り出し/2


先日紹介した刷毛の切り出し/1の作業の続きです。
全通しの刷毛を、横から見て凸型に切り出しました。

刷毛_9_2.jpg
全通しの刷毛を、横から見て凸型に切り出しました。
切り口の真ん中に鉛筆等で等分線を引き、印をつけます。
(これが刷毛先の基準線になる)

今回は「上塗り用の刷毛」を作っているつもりなので、刷毛先は切りっぱなしではなく鋭角に削ります。極端に言えば、凸を△の形にするのです。

刷毛10.jpg
等分線を基準に、鉋(かんな)で削ります。
…が、糊漆で固めた刷毛先が思ったよりも柔らかく鉋をひとかけするとほぐれかけたので一時中止。
刷毛12.jpg
刷毛13.jpg
方法を変えて、今度はノミで毛の方向に
刃物を動かして削ることにしました。

かなりの力をかけて削り整えるのでが、刷毛の毛である髪の毛が糊漆でそうとうガッチリ固めてないと削れないのです。

刷毛15.jpg
気に入った刷毛先に削れたようです。

記した等分線は、髪の毛2本分ほど残して仕上げます。
等分線の両側は同じ角度になるよう削ります。角度を変えると、刷毛のコシにむらができ、均一に塗ることが出来なくなります。

刷毛16.jpg
こうして触ってみるとこんなに柔らかい…。がっくり。



最近、というか近年流通している刷毛は、毛を固めている糊漆が柔らかくて刷毛の切り出しがまともにできないものがほとんどです。
私が研究生の時に買った刷毛も柔らかく、しかも毛に“隙き間”があって「ハズレだー」と思った経験があります… が、これは不良品というわけではなくて、あまりにも漆刷毛の需要がなくなったので刷毛を作る職人さんも、その当時でさえ“日本で数人”という単位くらい少なくなって、良質な刷毛の生産が難しくなっている事情があります。
また、要の材料である良質の髪の毛の国内供給のシステムが崩壊し、中国からの輸入に頼っているのですがその量も少なくなってきたのも原因の一つだそうです。(髪の毛は全部使えるわけでなく、刷毛に向いた良質のものを厳選して使う)

かつては「日本の女性の髪は美しい」と言われていたのに…
こういった材料不足にはいろいろ背景があり、実際に丹念に取材してみないと全貌は分からないのですが、なんとも複雑な気分になります。

さて、次はこの漆で固まった毛をほぐす作業です。
(次回続く)






posted by 宮崎佐和子 at 22:15| Comment(9) | TrackBack(0) |   道具
この記事へのコメント
刷毛を作る職人さんも少ない中、
今、日本人の女性でパーマもカラーも一度も使用していない髪の毛の方も少ないと思います。
世界中で日本人の髪が一番綺麗だと言う話は聞いたことがあるのですが、今はシャンプーもスタイリング剤も数多く、便利でお洒落を楽しめる時代がかえって髪を傷めているし、その点も
中国に頼らなければいけないのかもしれませんね。

刷毛を初めて見ました。ちょっと感動です。

私は昔油絵をやっていたのですが、絵を見る前に筆を見ると仕事がわかると恩師に言われ、シャンプーをしていましたよ(笑)
Posted by SUWA at 2007年01月16日 13:23
SUWAさん、ありがとうございます。
(あっ隊長さん、お元気にしていますか??)
そうなんですよ〜〜おっしゃるとおり、薬品の影響を受けていない“バージンヘア”の持ち主じたいが周囲を見ても少ないですよね。まして刷毛に向くような髪質の持ち主となれば…。
“道具を見ると仕事がわかる”って、コワいすよね ^^;
仕事もそうだけど性格とかもばっちりもわかるらしいです。
Posted by 宮崎佐和子 at 2007年01月16日 22:51
泉さんの刷毛のパンフレットに最近はほぐしが楽なため柔らかい糊漆が好まれるとありました
 それでかんなの刃だけを使って おっしゃるようにのみのように使って一気に切っていると

ほぐしもシャンプーで洗ってブローしているとあります

私も油を突き出すのにへらを使ってると 痛みが早いように思って 油をつけた翌日くらいにシャンプーで洗って ブローしてすぐ使える状態でおくようにしだしたところです
良くないでしょうか?
Posted by 大塚 at 2007年01月16日 23:35
滝川隊長より

刷毛の素材は「海女さん」の髪で
海にさらされた直毛が理由だったと思います。
ただし、あくまでも伝聞なので本当のところは分かりません。

とのこと。

隊長が直接書き込まないのは松本氏に畏敬の念を抱いているとのこと
 >宮崎さぁ〜ん!この堅物の隊長を諭してください。
Posted by SUWA at 2007年01月17日 16:36
大塚さん
えっと、松本にきいてみます…お、それでかまわないと言っております。^^
次は刷毛の“ほぐし”を紹介します。(ちょっと立て込んできましたので、ちょっと後になりますが) これがけっこう根気がいるんですよね。よく糊漆がきいている刷毛は本当に堅くて永遠にほぐれないような気さえします。
Posted by 宮崎佐和子 at 2007年01月17日 21:54
滝川隊長、SUWAさん、こんばんは。^^
この話を初めて聞いた時「えっ尼さんの髪?」と聞き違えそうになりました私です。(もちろん海女さんのほうです)
油気がぬけてよいとか… たしかに海女をされている女性なら、健康的な食事をして天然素材としていい髪をしていそうです。
あと亡くなられた先生ですが、外国人女性のブロンドの刷毛を作ってみたというのもありました。

(あっ、隊長も気軽に書き込んでくださいませ^^。松本はただの漆のおじさんです〜)
Posted by 宮崎佐和子 at 2007年01月17日 22:00
ありがとうございます 松本さんのお墨付きがあれば安心です

ほぐしのアップ待ってます 練習せねばと思って何本かはほぐしてもらってないんで

Posted by 大塚 at 2007年01月17日 22:13
私も、前に滝川さんから話を聞き『尼さん』だと聞き違えていました(汗)

そう、…またまた隊長にお叱りをうけ、呆れられるところでした(笑)

宮崎さんからの温かいコメントに救われます。
個展準備でお忙しいところありがとうございました。
Posted by SUWA at 2007年01月17日 23:06
大塚さん、
刷毛ほぐしのアップは大阪展後になるかもしれませんが(^^;) それでよろしければ。

SUWAさん、隊長さん、
いつもありがとうございます〜〜。大事な道具だけに刷毛の話はほんと話題が尽きません★
Posted by 宮崎佐和子 at 2007年01月18日 20:22
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