
岡山で9/19〜21に開催されました、第12回「西日本の漆を守る会」に行ってきました。2日目と3日目の様子をご報告します。
2日目(9/20 日曜日)
1日目と同じ会場で、採れた漆の分析結果報告がありました。この分析は、林原化学研究所の方がしてくださいました。岡山の備中漆は林原共済会が応援してくれています。
この分析では、漆樹液の成分だけでなく、ラッカーゼという漆樹液内にある酵素の活性も調べてあります。ラッカーゼ酵素の元気さの測定だそうです。ラッカーゼ酵素があまりに弱っていると漆が乾かないそうで、ウルシノキから樹液を採取して切り倒した切り株から出てくる漆樹液がそれに当てはまる結果でした。
熟成の糖質の変化も調べてありました。熟成開始時に0.8%あった糖質が、熟成3日でほぼ無くなるという結果でした。私はもっとゆっくり進むものかと思っていたので意外でした。
次に、縄文時代の遺跡の発掘をしている方の話がありました。
漆を掻いた跡のある漆材や漆樹液を用いた工芸品、赤色顔料のついた物など様々な物が発掘されており、6500年前には既にウルシノキを育て、掻いて、塗って、掻いた木を建材として利用する総合的な利用法がなされていたのではないか?と言われていました。まだ確定ではなく、現在調査中だそうです。ずいぶん前からいろんな利用法がなされており、人々が生活を営むということの根本はさほど変化していないものなんだなと思いました。
3日目(9/21 月曜日)


奥に見える木もウルシノキです。


幹か枝かわからないけれども、直径10p以内の細い材に15センチ間隔に一周傷がつけられていたそうです。先の尖った石器で傷をつけました。そんなにでてきません。漆樹液が塗られた物が大量に出てきているのにこの掻き方でほんとにあれだけの物が出来上がる量まかなえるかな、と思ったより量がないことに疑問が深まった様子でした。この掻き方でも時期や採り方などもっと工夫すれば出でくるような気はしましたが、縄文の人はどうしていたのでしょう

次は、この続きの様子と郷原漆器をご紹介します。
ありがとうございました。
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宮崎です。
詳しくご存じない方には意外?に思われるらしいのですが… 漆の文化の歴史は古く、なんと縄文時代までさかのぼります。
過去の日記でも、少し触れているものがありますので、よろしければごらんくださいね。

※縄文の漆に触れた思い出。(青森県の是川遺跡)
※古墳時代の「うるし採取あと」を見て来ました。
(埼玉県比企郡吉見町西吉見条里遺跡)
それにしても…。
漆を「分析」という化学的な立場から、そして、古人の視点に戻って再び眺める…というのは対極的にも見えますが大事なことですよね。^^ なかなか心にくい企画じゃないですか…。
そして、最終になります、次回3回目の報告を楽しみにしてくださるとうれしいです。
>>ラッカーゼ酵素があまりに弱っていると漆が乾かないそう
素人考えで恐縮なんですが、これはすなわちラッカーゼを混ぜると漆が早く乾くということなんでしょうか?
この日記にコメントを下さいまして、ありがとうございます。^^
ばたばたしていて、お返事が遅くなってしまい… 申しわけありません。;;
どうぞ、よろしくお願いいたします。
ラッカーゼに関しましては…。
この会ではいろいろお話を聞いたのですが、まだ分からない事の方がうんと多いです。そして、「漆が乾く」というメカニズムに関しては、さまざまな要素が複雑に作用していていまして…。
なので、ラッカーゼの追加だけで酵素の弱った漆の乾きがよくなるかどうかは、私のような素人がここでお答えするのはちょっとふさわしくないように感じます、役不足でごめんなさい。^^;
もし、ご興味がありましたら、林原さんの研究所におたずねしてみてはいかがでしょうか ??
きっと、わかりやすくお返事して下さると思いますよ。
さてさて余談ですが…。
工房では、木から出た漆樹液そのままを生かそうという主義なので「○○を添加して乾きを早くしよう」というようなことには、あまり関心がなく… あっさりとしたお答えになってしまい恐縮です。
unaさんは、好奇心の旺盛な方なんですね!(そして漆がお好きなんですね)
とてもすてきなことと思います。
これからもこの日記をときどきのぞいてくださるとうれしいです。
どうぞ、よろしくお願いいたします☆