いつもは“分根”した徳島産の漆苗を植えているのですが、今年からは実生の苗も植えよう!とさっそく準備に取りかかりました。
漆の実。昨年、工房の庭の漆の木に生った実なのです。

●脱穀● この実は、皮や果肉がついたまま。なので“脱穀”して中の「種」を取り出します。杵と臼があればよいのですが、ほかのもので代用。底が平たい容器に実をに入れて、杵代わりに桜の丸太で搗きます。

みるみる実から皮が外れて種が出て来ます。
何回か、搗いてふるう…をくり返すと、種がきれいに取れました。

左/漆の実、右/取り出した中の種。
●脱蝋● さて、取り出した漆の種ですが、この種の周囲には堅牢な“蝋(ロウ)”がついていて、そのままでは発芽しにくいので“脱蝋”という作業を行います。
この脱蝋、熱湯あるいは薬品を使う方法がありますが、今回は熱湯で脱蝋することにしました。

まず容器に種と木灰を入れ(量は適当)熱湯を注ぎます。
そして“櫂”を使って、底に沈んだ種を撹拌します。(櫂は松本のお手製です)
さて、水面にたくさん漆の種が浮かんでいますが、この浮かぶものはすべてシイナ。(中身のない種)シイナは発芽しないので除去します。そして半日ほど、この状態のまま放置しておきます。

さて、種を水洗い。これでだいぶロウが取れたことでしょう。
この作業で、もうすっかり日が暮れちゃっています


●水漬け● さてこの種は、播種(種まき)の時まで、毎日水を変えて水に漬けたままにしておきます。
見慣れないバケツに、むぎは興味しんしん…。(あとでこのバケツの水を飲んでいました。^_^;)

今回の種は2種類。
自然交配された2種類です。新しい品種作りのみなもとになることを願って…。順調に発芽してくれますように。

さて、この脱蝋法ですが、いろいろバリエーションがあります。
松本が平成17年度に文化庁の新進芸術家国内研修制度で各地・各漆かきさんの行う方法を取材していますので、興味のある方はごらんください。
大森俊三さんの脱蝋法1
大森俊三さんの脱蝋法2
渡辺勘太郎さんの脱蝋法
さてこの漆の脱蝋や播種ですが、私が漆芸研究所でいたころは「神秘に満ちた謎の世界」といった風情の内容で授業で触れたことがありました。
そう思うと春になって「いよいよ苗の準備だ!」と、せっせと自分たちがこんな作業を行うのは、なんとも不思議というか感慨深いものがあります

いや、それよりも、なかなか一般に知られていない情報を写真付で発信していただき感謝。漆が取れるまではかなりの年月でしょうが、育っていくだけでも楽しみですね。
あ、それから思い込みかも知れませんが、「漆の実る国」(藤沢周平の小説)では、挿木(分根?)でしか増やす方法がないとかで、将来の収益性を上げるためらに、泣く泣く漆掻き前の木をなぎ倒して…。もう一度確認してみたくなりましたが、種から増やしていく方法も有るなんて、またひとつ博識になりました。
そこでグッドアイデア。
脱蝋に薬品を使わず、コケコッコ=ニワトリ に種を食べさせて、胃液で脱蝋するのです。
「ケッコ−」・・・ (意味わかるかな?)
鶏糞ごと蒔けば手間要らず。ついでに新鮮卵も!
ところがですね〜このロウも旨味のひとつらしくって、香油が取れいろいろ料理に使われる話も聞きます。(日本では漆の種をローストしたコーヒーが一番有名ですが…おいしいのかな?←あっ飲んだことのある松本は焙煎が上手く出来れば非常に美味しいと言ってます)
でも私はまだ試したことがないので、手を広げてみようかなあ〜。
分根でしか増やせない、ということはないんですが種から発芽させる方法は西日本では「秘伝」だったのでその辺も関係しているのかもしれません。
「漆の実る国」、私も読んでみますね。
これからもヨロシクお願いします。
楽しいアイデアありがとうございます。(その方法なら肥料も一緒に撒けますね、なーんて☆)
脱ロウに使う薬品は硫酸(しかも希釈しない)とかなので、やはりこわくて使えません。^_^;
下準備、いっけん手間がかかるようだけどそれはそれで楽しいものですヨ。
今回、どれだけ発芽するか楽しみです♪