今年の浄法寺うるし掻き長期研修生の竹内さん。

先日、うるし掻き体験記をご紹介した
輪島キリモトのmaさんは、5日間だけでしたが、長期研修生は毎年定員2名だけで、5・6月頃から11・12月頃まで滞在して、最初から最後まで、しっかりとうるし掻きの作業一連を勉強します。
その竹内さんから、いよいよ追い込みの仕事の報告がありました。
漆の木の伐採と
裏目うるし掻きの仕事です。
10/9〜11/3までの間の約1ヶ月のうち、二十日ほど裏目を採りに畑をまわった。〈竹内さん〉木の幹から採取する、最後の漆が「裏目」と呼ばれ、辺漆(初辺・盛辺・末辺)とは区別されています。
※裏目漆について裏目うるしは、他の辺漆(初辺・盛辺・末辺)と比べると質が落ちると言われていますが、必ずしもそうではありません。竹内さんの
師匠(そして松本の漆かきの師匠でもある)大森俊三さんの採る裏目漆は、たいへん使いやすい漆で、工房でも重宝しているのです。
その後はチェーンソーで、木を伐採して幹の上方から漆を採り、枝切りをして枝を採っていく。残った材は一部支柱に使うくらいでほとんどは薪になる。持ち帰った枝は池に立て、11月7日で五十束になり水を張った。今年は百束の予定なのでいい所だけ枝を採り、あとは伐採してかたづけていく。〈竹内さん〉あいにく、裏目うるし掻きの写真が入っていませんが…
記事の最後に、竹内さんの裏目漆かきの動画を付けているので、ぜひ見て下さい。(その前に伐採のシーンが入っています)
さて、この裏目うるしが終わると、うるし掻きももう一区切り…といった気分になります。

悪天候にもかかわらず、今年もいっぱい漆を出してくれた漆の木。
役目をほぼ終えたこの木を、切り倒します。(木が可哀相とは言わないで下さいね)
今年掻いた木は伐採する。切った株からは春になると新しい芽が勢いよく出てくる。株からちょっと離れたいい芽を選んで伸ばしてやれば、やがて成長してまた掻けるようになる。親と同じ漆が出てくる。孫まで三代は良いが、その後は育たない。〈竹内さん〉 
切った切り株からも、うるし樹液がにじみ出ます。
「根うるし」と呼ぶ漆。これも大事に採取します。

トラックに積み込まれた漆の枝たち。100束作る予定だそうですが、この荷台には8束積まれているみたいですね。^^
竹内さんの言葉どおり、切った木は大半は薪になります。が、調子がよさそうな枝を100束集めて、それは『枝うるし』を採るのに使うのです。
※池の枝うるし採りについてこれも大変な作業ですが、最後の最後まで、出るうるしを活用しようという、うるし掻きさんの工夫なのです。
(↓竹内さんの聞き取りです)
俊三さんの昔の話…裏目の後、ちょうど今頃の時期に止め掻きをしていたが今はやらない。止め掻きでは、裏目のキズの間にさらにキズをつける。裏目の半分も三分の一も採れない。真っ白な漆が採れる。その後、ナタで枝を全て落とし、幹だけにしてから木を倒す。 枝のいいところは三尺くらいに切り、束ねてから二十日間ほど池に浸けた後、枝漆を採る。昔は雪の降る頃まで枝を集めて、春先まで枝掻きをした。また、さらに細かい枝は池には浸けず包丁でキズをつけて瀬〆漆を採った。それだけ注文があったし、手間になった。今はとても手間にならないから、そこまでやる人はいない。昔は捨てるところが無かった。伐採した幹は栗よりも腐りにくく小屋や畑の支柱、土手や田などの崩れ止に使った。また、材の赤身の部分を使って漁網の浮き(アバ)としての需要もあった。〈竹内さん〉 さて、いよいよ漆の木の伐採と裏目うるし掻きの様子の動画です。(松本が先月、浄法寺に行った時に撮りました)
前回の記事では、動画のメモリが足らなくなって、竹内さんのシーンが数秒しか入りませんでしたが…

今回は後半からちゃんと入っています。
前半/漆の木の切り倒し(大森俊三さん)
後半/竹内さんの裏目漆掻き(竹内義浩さん)
※約1分半ほどあります
…それにしても、山の仕事は体力が要りそうですね。

これに冬の寒さも加わってくるのですから、身体に気をつけて今年の仕事を無事終えてほしいものです。