2012年08月05日

■『夕凪の街 桜の国』こうの史代

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yuunagi.jpg


昭和30年の広島市。建築会社で働く普通の元気な23才の女性、皆実。
街には活気が戻り、周囲の人たちは不自然なくらい「あのこと」を話題にしなくなった。が、彼女は10年前のことを思い出すたび、自分は幸せになってはいけない、人を好きになってはいけないという思いに苦しんでいた。
そんな中、ついに一歩踏み出す決心をした皆実だが、突然彼女の体調が急変する…。

現在を生きる私たちと重ねながら考えられる作品で、発表当時は「こんなヒロシマの描き方があったのか」とたいへん話題になりました。
しかし大震災後のいま、別の意味で再び注目されるようになってしまったのが残念でしょうか。
最近は、図書館でも置いているようですので、ぜひ読んでいただきたい1冊です。


posted by 宮崎佐和子 at 23:33| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ BOOK

2010年12月13日

■『CULTURED PEARLS』 著/アンディ・ミュラー

漆の美しさ…
それは、ダイヤモンドのような硬質で主張する美ではなく、もっと静かなやさしい美しさです。
同じ有機質だからなのでしょうか?
琥珀や珊瑚、真珠などに、漆と共通の美を感じてしまう私です。

真珠黒蝶真珠5

そんな私が、以前から欲しかった本を、やっと手に入れる事ができました。^^


バッド(下向き矢印)アンディ・ミュラーの CULTURED PEARLSです。
12_11_pearls_1_.jpg

真珠(養殖真珠)の専門書なんです。ぴかぴか(新しい)
誕生から100年以上経った、養殖真珠。
その誕生の場が日本だったとこうことは、あまり知られていないかもしれません。

これは、スイス人の真珠商、アンディ・ミュラー氏が30年近い活動の中で書きつづった良書で、真珠の歴史や養殖、南洋真珠(タヒチ、インドネシア、オーストラリア、フィリピン)、あこや真珠(日本)、淡水真珠(中国)、マベ真珠 の特長、養殖地について、詳しく書かれていて、とても興味深いです。


バッド(下向き矢印)こんな懐かしい風景も…。アコヤ貝を採る海女さん。
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誕生からまだ日の浅い養殖真珠、登場当時は、やはり天然真珠との市場の混乱が起き、現在は養殖真珠が世を席巻してしまったわけですが…。
おかげで、多くの女性が美しい真珠を間近にすることができるのですね。

個人的には、養殖真珠(特にあこや)に行われる、漂白や調色(トリートメント加工)のこととか知りたかったんですけど、やっぱりオープンな話題ではないのでしょうね。あせあせ(飛び散る汗)

真珠好きさんには、おすすめの一冊です。


採れたてあこや真珠さて、2年前に宇和島の真珠養殖所さんにおじゃまして、いろいろ見学させていただいたことがありました。※レポはこちら
生きた貝の肉の中から、輝く真珠を取り出す瞬間は、とても感動的でしたよ。ぴかぴか(新しい)


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2010年08月01日

■「櫛かんざし」発行/澤乃井櫛かんざし美術館

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東京都青梅市にある「澤乃井 櫛かんざし美術館」の所蔵品を主にした図録なのですが、これをご紹介したいと思います。^^
コレクターであった岡崎智予さんのをなんと4000点にもおよぶコレクションを中心に、清酒澤乃井の醸造元がひらいたこの美術館におさめられているのだそうです。

櫛などは、蒔絵のものが大半をしめています。
光琳、羊遊斎、是真といった作から無名の作のもの、素材も黄楊、鼈甲、象牙、貝とさまざまで、意匠も季節の花や美しい四季の景色、可愛らしい小鳥やユーモラスな虫、または物語の情景など、手のひらに乗る小さな髪飾りに、日本人の美意識が凝縮されていて、本当に見ていて飽きません。

作り手からの視点からみますと、例えば「櫛」という制限された形、大きさの品の限られた世界に、意匠を凝らすということは、難しくもありさぞ取り組みがいもあっただろうな…と思うのです。

櫛かんざし2

時代事に区分けされており、近年に近づくとセルロイドやガラスなどの新素材の髪飾りもコレクションに加わります。(これもとってもかわいらしいのです)

櫛かんざし3

巻末には、資料として江戸時代のさまざまなスタイルの結髪のモデルが掲載されているのですよ。(美術館には、もっとたくさんの種類のモデルがあります)
日本女性が「垂髪」から、技巧を凝らした「結髪」をするようになったのは江戸時代からで、こうした美しい髪飾り達も、それにともなって進化し、多くの女性の髪を飾るようになったのですね。

こうした髪飾り達を見ていると「これを身につけていた、当時の女性たちの人生はどうだったのだろう」と思い、幸多かったのかそれとも苦難が絶えなかったのだろうかと、いろいろ思いを馳せてしまいます。ぴかぴか(新しい)


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2010年02月25日

■『漆の実のみのる国』著/藤沢周平

漆の実のみのる国

『熟すれば漆の実は枝先で成長し、いよいよ稔れば木木の実が触れ合って枝頭でからからと音を立てるだろう、そして秋の山野はその音で満たされるだろう』

これは、貧窮する江戸時代中期の米沢藩、その若き藩主(上杉鷹山)と執政たちの人間ドラマ。


人に例えるなら「瀕死の重病人」にひとしいこの貧しい藩に、豊かさを、少しでも人びとにまともな暮らしを、飢えない日々を、と苦心する青年藩主は、起死回生の策を打ち出します。
「漆木百万本、桑木百万本、楮百万本を植栽する」

十五万石の貧しい藩を、実高三十万石に……。
文字通り、命を削るごとくの財政立て直しに、一縷の望みをかける人びとにとって『漆の実のみのる国』とは、わが愛する郷土が息を吹き返し、しあわせな生活がおとずれる象徴でもあったのです。
(作中では、樹液よりも実から採れる「木鑞」を主に当てにして計画が始まります)

その起死回生の計画の末路は…。


漆の実(左写真は漆の熟した実)
本作は、著者の藤沢周平さんが病床で綴った最後の作品で「遺書」とも言える作品だそうです。

いま、私たちは「漆を育てて漆の樹液でものづくりをする」ことで生活をするという、たいへんありがたい仕事をさせていただいていますが…。ふと油断すると、自分たちだけで漆を守り、自分たちだけが漆を理解しているという、不遜な錯覚に陥りそうになってしまいます。
先人たちが苦しみ、励み、苦境に負けず地道な営みを続けていた、その「残滓」が私たちの手元に残されている…。
そう考えると、うまく表現できないのですが、私は先人の累々たる死体を踏みしめて生きているのだなという、なんとも不思議な、そしてうまく表現できないような畏れの気持ちが、鈍化した体の内側から、わき上がってくるようです。

多くの方に手にとっていただきたい一冊です。

posted by 宮崎佐和子 at 15:00| Comment(2) | TrackBack(0) | ■ BOOK

2009年12月20日

■「アンネとヨーピー」著/ジャクリーヌ・ファン・マールセン

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ホロスコートの象徴、アンネ・フランク。
あまりにも有名すぎる彼女の日記に『ヨーピー』という名で登場する、彼女の親友ジャクリーヌの著書なのですが、たいへん興味深いものでした。
ユダヤ人の父を持つジャクリーヌは、15才で収容所で死んだアンネの一方、戦争を生き延び、平凡な主婦となった女性。(「隠れ家の八人」の中の唯一の生き残り、アンネの父オットー・フランク氏が収容所開放後にすぐ訪れた一人がこのジャクリーヌだった)
そして、ナチスの恐怖の去ったあと、平和に平凡に生きたいと願っていた彼女ですが、戦中に死んだ幼友達の「日記」の名声が高まるにつれ、否応なしにジャクリーヌも平穏な人生を送ることができなくなっていく様子がつぶさに書かれています。

「あんな無名の15才の女の子の、個人的な日記なんて、本になっても誰が読みたいと思うでしょうか。ましてや戦争の頃のことなどもう思い出したくない」

ジャクリーヌにとって、死んだ幼友達の日記は複雑な心境のものであり、忌まわしい戦争の記憶とともにあるもの、そして思春期の女の子同士の秘め事といったプライベートも書き込まれたアンネの日記の存在は、率直に言えば苦痛でさえあったらしいのです。

その一方、アンネの死後に出版された日記が人気を博し、「ブランド化」していくにつれ、当時はアンネには見向きもしなかった人たち(もしくは全く彼女を知らなかった人たち)が「実は彼女の友人だった」と次々と名乗りをあげ、メディアの寵児となり、アンネファンの望む「アンネ像」を作り上げていく。
そして絶大な影響力を持つにいたった「アンネ・フランク財団」の利権に群がる人びとを、冷静な目で見つめていた数十年の足跡は、興味深いものでした。

そして半生を愛娘の著書のために捧げたアンネの父オットー・フランク氏(彼は日記がねつ造だとするネオナチの裁判に何度も引っ張りだされもした)を敬愛しながらも、「アンネ・フランク」が当事者の手を離れ、脅威的なカルト化していく経緯の中で、オットー氏自身さえもその渦に引き込まれていくさま(そして彼女自身も)を敏感に感じ取り、率直につづります。

それの言葉があまりにもリアルすぎるので、アンネが愛した親友、大人になった「ヨーピー」のなまなましい肉声に最初は驚かされてしまうのですが、やがてなぜアンネがこのジャクリーヌを愛したのか、最後まで読み、分かるような気がしました。

それにしても…
著書にはジャクリーヌとアンネ、その周囲のユダヤ系家族の運命も克明に切り出しています。その明暗をわけたものを考えるのも、この混沌とした社会を生き抜く大きなヒントになるような気がしました。

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2009年02月08日

■「風と共に去りぬ/マーガレット・ミッチェル著」

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初の黒人大統領が就任して話題になっているいま、改めて読むとおもしろいかも知れません。
「Gone With the Wind」、知らない人は誰もいない、南北戦争を背景とした壮大な物語です。1936年に出版された名著で、作者は生涯でこの一つの作品しか書きませんでした。
鮮烈なヒロインを中心にその魅力的な恋愛ドラマが特に愛されて、映画も舞台もそれをメインに構成されているので、原作を読んだことのない方は「恋愛物語」だと思っている人も多いかもしれません。
が、改めて見るとたいへん濃密な人生についての著なんですね。
また、ミッチェル氏による非常に綿密な取材により、当時の南部アメリカの様子がたいへん詳しく力を入れて書かれており、当時の世相を知ることができて、たいへん興味深いものがあります。(ミッチェル氏の父はアトランタの弁護士で、南北戦争の様子を明細に記録していた)
戦争の始まりへの高揚感とみじめな敗戦。故郷の荒廃、戦争よりもつらい「再建」。勝者(北部)による敗者(南部)の支配。そしてクー・クラックス・クラン団(KKK)の台頭。戦後の南部の人々は苦難の末、北部の知事を失脚させて南部の民主党の押す「自分たちの知事」をやっと掲げるまでになります。
その激しい時代を背景に翻弄されながらも力強く生きたヒロインの16才から28才までのの12年間は、数十年の年月を濃縮したような激しさです。

私も何度も読んだ本ですが、今読むと、当時はまったく分からなかった情景や登場人物の心情がくっきりと浮き出て、昔は読み過ごした台詞の意味、その奥にあるものを感じ取ることができるようになり、全く違う読み物となってしまいました。
そういえば、ラスト、ヒロインの夫が彼女の元を去る有名なシーンがありますが、以前は「彼女は必ず夫を取り戻せる」と信じたものですが、今はその逆に感じるようになってしまいました。(人の絶望の深さが少しは分かるようになったからでしょうか)
また、勝者の北部の、敗者の南部の支配の仕方は、戦後の日本を何やら思わせるものもあり、それもちょっと複雑な気分になってしまいます。

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2008年11月15日

■「貴道裕子のおびどめ」

帯留の本


着物をお好きな方ならご存知の方が多いと思います。
京都の小さな骨董屋「てっさい堂」の貴道裕子さんのそれはそれは美しい「帯留」のコレクション集です。
彫金、木彫、象牙、珊瑚、陶、宝玉、鼈甲、蒔絵、螺鈿、貝細工、硝子、セルロイド‥。
さまざまな素材の作り手さんの技を集めた、ため息の出るような帯留がずらりと並びます。
武家社会が終わりを告げた明治、刀装具等の職人さんが新しい仕事として粋を極めた帯留を作ったそうで、そうしたものは円熟した江戸の技術と美のセンスがいきいきと残されており、逆に新鮮さを感じてしまいます。

私が一番好きな作は、一鳩作の「炒豆帯留」。
木彫ではぜた炒りそら豆が三つ並んでいる素朴でかわいらしい作なのですが、まさに本物の炒り豆そのものといった風情でついつまんでしまいたくなります。
(そして、豆をリアルに表すのはたいへん難しい…)

この本の装丁も愛らしいです。
11/15帯度の本
小さなほぼ正方形なんですね。
帯留たちは、布地や帯と組み合せて撮影させていて、その取り合せも楽しむことのできる凝ったつくりになっています。

日本の文化の豊かさを知ることのできる一冊です。

おびどめ第2弾もあります。

※2001年出版

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2008年10月19日

■「漆百科/山本勝巳著」

10/19漆百科

この本を読んで、たいへん驚きました。
本書は、化学の分野で活躍し、多数の著書や論文を持つ著者が「漆」について長年の取材や見聞に基づき、多岐にわたって記した快作です。

何が一番衝撃だった内容かというと…。
漆業界では当たり前でになっているにもかかわらず、消費者には大変不親切で不明瞭な「漆器」の原材料、産地などについての表記について、ズバリと切り込んでいるところでしょうか。

「非漆化」が進行してひさしい漆器業界…。
戦後、多いに変った日本人の生活スタイルと化学産業の発展によって漆器業界も大きく様変わりし「伝統的な漆器」と合成樹脂などを使った「新興漆器」という、異質な漆器が、生産と市場の両方に混在するということになったのです。
この結果、伝統的な漆工芸品よりも安価な新興漆器が、大半を占めることとなり、本来の力を著しく弱体化されたその功罪を著者は鋭く追求しています。
冷徹で公平な著者の視点はそれにとどまらず、漆文化の将来や生き残りについての意見も述べており、本書は「漆百科」のタイトルにふさわしく数百文程度の270個ものコラムの集約、という構成になっているにもかかわらず、きちんと起承転結をつけてうまくまとめられて読みやすいです。
(日本産うるしについても、しっかり書かれています)


さて、話は変わりますが、実は先日、本書の著者である山本氏にお会いする機会に恵まれました。
出版にあたってのご苦労など、いろいろお話を聞かせていただくことができて、とても感銘を受けました。
歯に衣を着せぬ書きっぷりだったので、眼光鋭い?学者肌のような方を勝手に想像して、実際にお会いするまで緊張していたのですが…あせあせ(飛び散る汗) 
ご本人はたいへん穏やかで理性的、なおかつ情熱的な方でした。
漆の文化は、多くの人に支えられている、若い世代の私たちは負けずに頑張らなければいけないと実感したのです。
ぜひ、多くの方に読んでいただきたいと思います。

※丸善株式会社/2008年5月発行

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posted by 宮崎佐和子 at 21:25| Comment(2) | TrackBack(1) | ■ BOOK

2008年06月05日

■「さゆり/アーサー・ゴールデン著」

さゆり/アーサー・ゴールデン


原題『Memoirs of a Geisha』。
ニューヨークで余生を送る、昭和初期に全盛を誇った元芸妓、さゆりが自身の人生をで口伝したメモワール。
祇園に売られた貧しい漁師の娘が、悲しみや理不尽に翻弄されながら『ある出会い』で強く生きる決心をし、やがて誰もが目を見張る美しい芸妓に変っていく。そのさまには心奪われるものがあります。
祇園の風景、置屋(芸妓が住む、家制度の所属事務所)の暮らし、お座敷、芸妓どうしの確執、彼女らの着る着物… それらがさゆりの京言葉でリアルに語られ、当時の祇園の美しさ賑やかさはかくや…とつい思い描いてしまいます。(特に着物の柄、色彩の描写が微細で、読んでいると華麗な織がついつい脳裏にうかびます)
日本語訳の本書は、訳者の小川氏の巧みな訳と、芸妓さんたちの京言葉や祇園ことばの監修により磨かれて、たいへん完成度の高いものになっています。
「さあて、どこから話しまひょか?」
といったさゆりの心地よい京言葉で語られ、あまりの人間くささに読んでいる最中は私も実話だと思い込んでいたんですが、実は巧みなフィクションなんですね。してやられました。読んでいて最後までだまされた人もけっこう多いと思います。笑
(あとがきで『モデルはいない』と書かれていますが、やはりゴールデン氏が取材し、ヒロインの原型とした実在の日本女性がいるそうです)


さて、本作といえば2005年に映画化されましたね。

SAYURI
主演:チャン・ツィイー

きっとごらんになった方も多いと思います。
…やはり日本では酷評が多いようですね。事実、私もそうです。
やはり外国人の女優さんでは着物の立ち居振る舞いに品を感じません。先輩芸妓の初桃さんの性悪ぶりが西太后か何かみたいだし…。髪型も中国風、メイクもアレンジしすぎて芸妓さんっぽくないし、演出も神社の鈴を振ると鐘を撞く音がする(!?)しで、なんだかさんざんでした。
…と観た当時はそう思っていました。

でも、あれからすこし経って今は感じ方が変わっていることに気づきました。
外国人のクリエーターたちが集まり「日本の素材」を使って作品に仕上げると、ああなったのではないかと。もちろん、日本文化を調べ尽くした上です。
日本人が観ると、違和感だらけですが、そのことは承知のうえのことなのでしょう。全世界に向けて発信するファンタジー作品としてはなかなかのだったのではないでしょうか。
…ファンタジー、そう、本書の「さゆり」もアメリカ人男性の書いた美しいファンタジー小説なんですね。

※文藝春秋/1999年発行

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2008年05月31日

■「中国の危ない食品/周勍 著」

中国の危ない食品


原題「民以何食為天」。
流行に便乗した、ただの告発本、糾弾本なのかしらと、手に取った時は思ったのですが…。
なんのその、一筋縄でいかない経歴を持つ著者の、文字通り命がけのルポです。
薬品漬けの食料生産現場、おそろしく不衛生な調理状況。塩や油でさえ信じられないものを使う、ぞっとする暗部を著者の執拗な目が追います。
なぜ、このような状況なのでしょうか。
周氏は、「役人の汚職と、強権がもたらした人々の底知れぬ不安」にあるといいます。貧しい人々は不安の中を生きなければならず、最低線を保つことができない。
「中国人がいま食べているのはゴミ、そして受けて来た教育、心の糧さえもゴミ」と言い切る著者は、中国はかつてのローマ帝国のように滅びるかもしれないと危惧します。

これらのことが本当だとしても、日本の私たちは「中国食品さえ食べなければ大丈夫」と思えるでしょうか。
人の作り出した構図の原型は、国境は問わないのではないでしょうか。似たような危険は、もっと身近にもありそうです…。

これは「段ボール肉まん」「毒餃子」事件以前に書かれたものですが、
日本の読者のため、昨年北京で行われたという訳者 廖建龍氏によるインタビューもなまなましいのです。(食品問題を世界に知らしめ、『やらせ』ということで幕引きをした『段ボール肉まん事件』も決してやらせでない、とインタビューで著者は語ります)

ほか、本著は中国のことわざや俗語(「女媧補天」「透支」「開門七件事」など)が多数引用されて、たいへん興味深いです。(原題の「民以何食為天」も俗語の「民以食為天」をもじったもの)
はたして中国は「天を繕う」ことができるのでしょうか。
家族や友人が続々とガンに倒れているという中、その答えを模索する周氏の姿に、あまりにも複雑な中国という大国の一側面をかいま見ることができた気がします。
2006年ユリシーズ国際ルポルタージュ文学賞。

※2007年 草思社発行


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posted by 宮崎佐和子 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ■ BOOK
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