当たり前なんですが、やっぱり「漆芸」には、漆が欠かせません。
でもこの「漆」というものはたいへんデリケートな素材でして… ウルシノキ由来の天然の植物樹脂なのですが、その時々の状態によって、立場や位置づけもめまぐるしく変わります。
木から生まれるので、樹液を生産した時は特用林産物ですし、流通する時は塗料としてあつかわれるでしょう。塗って仕上がると工芸品になったります。
そう考えると、とても不思議なものですね

さて、工房ではその「素材としての漆」を追求しているので、漆の木の育成はだいじな仕事の一つです。
先日、3年越しの苗(徳島産)をやっとに移植したところ。(その時の記事)
実は、その移植した苗を何本か工房に持ち帰っているんですよ。


この子たちはあまりにも大きくなりすぎて…。

ちゃんとひげ根が生えるまで、工房で毎日めんどうを見ることにしました。(ひげ根がなくって太い根っこしかないままで移植すると枯れてしまいます)
で、はるばる高松市から善通寺市に運ばれてきたこの木たちにも、ちゃんと春が訪れています。^^

そうそう、この田んぼで大きくした徳島産の漆の苗木ですが、いつもこの日記でご紹介している、工房の庭の漆の木と同じ株なんですよ。
もう少し詳しく言うと、同じ木の根っこから派生した兄弟で、遺伝子も同じです。(徳島には現地の漆かきさんが気に入って残している木があるのです)
岩手の漆の木とは、品種が違うようです。
工房では、地元産の漆の木を増やしています。
で、この「兄弟」と思われる工房の漆の木たちですが、育っている環境が違うので漆の芽の様子がぜんぜん違っています。


細くてあっさりしています。
上の栄養たっぷり田んぼ育ちのほうは、頭がすごくでっかくコテコテに太って芽も大きくむぎゅむぎゅ〜っとしているんですが…。
やせた庭土育ちの工房の庭のほうは、すらーっとして芽の数もまばらです。
別々に生えているので、二つ並べられないのが残念です。;;
左が田んぼ育ち、右がやせた庭土育ちです。


兄弟の命運?はこんなに分かれるものですね…。
左のほうは、今年の秋頃に五色台の漆畑に移植して、将来うるしを採られるために大きくなります。こんな幼いのにムッチリした姿を見ると、将来いい漆がたっぷり出そうで期待してしまいます。

ちなみに…。
こちらは、浄法寺産の漆の木(実生)です。

どことなく、また顔つきが違うでしょ?
工房で種から育てた、思い入れのある木です。
工房で種から育てた、思い入れのある木です。
