2010年09月20日

■京都の漆掻きレポ(後編)

前編に続きます ♪

京都在住の木工家、臼杵さんが、今年漆を採取しているウルシの木を見せていただきました。
あいにく、案内してもらった日は、漆掻きの日ではなかったので、作業の様子は見られませんでしたが、大径木のオンパレードでもうビックリがく〜(落胆した顔)しました。

バッド(下向き矢印)クリックで写真が拡大します。
京都の漆掻き4

で、でかい〜〜!
京都の漆掻き5


こ、これも大きい〜〜!
京都の漆掻き6

これらのウルシの木、「すんごい山奥にあるんじゃない〜?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
でも、臼杵さんと待ち合わせをした四条河原町周辺から、わずか車で20分程度の場所なんですよ…。
ほんとに街からすぐ近くの好条件の立地です。
(地主さんにも忘れ去られているほど?人知れずだった木を、浄法寺帰りの臼杵さんが『漆オタクのレーダー』をフル稼働して、探索・発見、漆掻きに至るまでになったらしいです、スゴイ…)

現地の近歴はよく知らないのですが…。
状況からしておそらく、つい数十年前には植栽・漆掻きをされていた過去の漆樹液生産地で、(少し前まで小さな産地が日本各地にありました)世代が変わるごとに忘れられていった、そんな畑の名残のように思います。
これらの木はずっと沢沿いにあって(鴨川の上流だそうです)川が増水したりまたは伐られたりしていった苦難の末に、何十年経っても運良く生き残った木なのでしょうね。

…あ、まだまだ臼杵さんの「お宝」があるようですよ。


わっ、見てください、この太さ。
京都の漆掻き7
臼杵さん、うれしそうですね。

こんな太い木を掻けるなんて、うらやましい〜〜。ふらふら
(浄法寺や茨城にも、こんなに大きな木はそうそうないと思います)
以前、松本が高知県で大径木のウルシの木を漆掻きをしていた時のことを思い出しました。
楽しかったなあ。

バッド(下向き矢印)高知県(大豊町)で、漆掻きをしていた頃の松本です。高知県での漆掻き
この時の木は太かったです。今でも夢に出ます。笑

こんなに近くで、太い木を相手に仕事できるなんて…。
もう、うらやましがることしきりの松本です。あせあせ(飛び散る汗)
しかし、地元の香川県ではもうそんな木はないので、自分たちの畑のウルシの木が立派になるのを待つしかありません。

…臼杵さんは、次回分の木も確保していて、来年も漆掻きを予定されているそうですよ。(ホント、行動派ですね)
とっても楽しみです。ムード



さて、今回のレポの「おまけ」です。
見つけたもの臼杵さんと一緒に、山をウロウロしていた松本。こんなものを見つけてしまいました…exclamation これを見て松本、「う〜ん、木が可哀相やな」と一言。…って、そんなコメントですか!? (ちなみにこのお手製人形には、大人げないことがいっぱい書かれてありました)
山には、木霊のほかにもいろんな情念がこもっているようです。



posted by 宮崎佐和子 at 23:58| Comment(6) | TrackBack(0) |   西日本の漆樹液産地

2010年09月19日

■京都の漆掻きレポ(前編)

京都の「漆掻き」を見てまいりました〜。

今年、京都で漆を掻いてらっしゃるのは、2009年の「日本うるし掻き技術保存会」の長期研修生だった、木工家の臼杵春芳さん。京都にお住まいです。
この方、たいへんな実行派なんです。あせあせ(飛び散る汗)(※昨年は中国に行き、現地の漆掻きを取材されてます。詳しくはこちらを)
漆掻き研修が終わって、地元に戻ってのち、臼杵さんは京都で漆掻きをするべく、地元にウルシの木が残っていないか、たんねんに探しまわられていました。

そして。
かなりの本数の、しかも大径木のウルシの木を多々発見exclamation
昨年からさっそく、嬉々と?漆掻きをされているのです。

作品展で京都に出張だった松本が、臼杵さんに案内していただき、そのうらやましい様子を取材してきました。(取材日は9/1です)
ぜひ、ごらんくださいね。ムード


バッド(下向き矢印)そのお宝(うるし掻きの現場)はこのあたりだとか…。
京都の漆掻き1

バッド(下向き矢印)あっexclamationあれだ。
京都の漆掻き2
うわっ、沢のすぐ脇に、ウルシの木が…。
京都の漆掻き3

漆掻き中の木と、臼杵さん。
こんなに大きな木が、人知れず京都の町近くにあったなんて。ほんとにビックリです。がく〜(落胆した顔)


バッド(下向き矢印)この近くにある湧き水を飲んだ、漆大好き男二人ですが…。
名水

ふとカンが働いて、近くを見ると、

バッド(下向き矢印)ウルシのひこばえがありました。
漆の葉

ウルシの木を察知する、レーダーが備わっているのでしょうか??
臼杵さんの漆掻き中の木は、まだまだあります。
後編へ続きます。ムード


posted by 宮崎佐和子 at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) |   西日本の漆樹液産地

2009年12月13日

■丹波漆シンポジウムと漆植栽のお知らせ。

数少ない西日本の漆樹液産地として、がんばってらっしゃる丹波漆。(現在の福知山市の西北部の地域近辺になります)
福知山市夜久野町では、丹波漆の保存に力を入れて地元のおじさんたちが情熱を注いでいます。

その夜久野町で、毎年催されているシンポジウムが今年も開催されますので、お報せいたしますね。

丹波漆シンポジウム


第四回 丹波漆シンポジウム
日時/12月19日(土) 13:00〜17:00
場所/福知山市夜久野町ふれあいプラザ

澤野道玄氏(社寺建造物美術協議会会長)による「国宝・重要文化財建造物の漆塗りについて」のテーマで講演会が開催されます。
(14:00〜)

◆展示内容
 国指定重要文化財 島田神社修復作業パネル
 重要無形文化財保持者 村上明氏作品
 漆塗り建造物写真パネル
 丹波漆生産組合の漆の木および漆掻き道具 
 丹波生活衣館コレクション       他


****************************************



なお、シンポジウムの翌日には、漆の植栽が行われます。^^

◆漆植栽について
日  時/12月20日(日) 午前9:00 集合
集合場所/やくの木と漆の館
     福知山市夜久野町平野2199 
お問合先/電話 0773-38-9226(やくの木と漆の館)


4/3夜久野

実は、今年の春(3月)にも、丹波で漆の苗の春植えが行われたのですが、その時は弟子の芝吹が参加させていただきました。ムード(その節は丹波の皆さまにお世話になりました)
  ↓その時のレポ
※丹波漆の植栽に行ってきました。

この丹波は、漆の世界でもたいへんな「針の穴場」だったりします。ご興味のある方は、ぜひお問合せくださいね。

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posted by 宮崎佐和子 at 19:15| Comment(0) | TrackBack(0) |   西日本の漆樹液産地

2009年10月01日

■第12回「西日本の漆を守る会」/3

こんにちは、弟子の芝吹です。
9/19〜21に岡山へ第12回「西日本の漆を守る会」に行ってきました。3日目の様子をご報告します。
(1回目と2回目の報告も、合せてごらんください)
           ↓

※第12回「西日本の漆を守る会」/1
※第12回「西日本の漆を守る会」/2


3日目(9/21 月曜日)

バッド(下向き矢印)縄文時代の人が掻いていたであろう掻き方の後は、現代の掻き方で漆掻きをしました。

DSCN2136.jpg

この木は、直径20センチ弱くらいです。これくらいの太さの木がたくさんありました。

バッド(下向き矢印)掻きとった後のヘラに残った漆です。

DSCN2135.jpg


ここ蒜山の畑には、様々な場所で生えていたウルシノキを育ててあり、20種程あるそうです。ウルシノキの中でも樹皮がごわごわしたものとそうでないものがあったりと、違いがあるようでこれから各地域に生えていたウルシノキにどんな特長があるのかわかってきたらすごくおもしろそうです。


この後、郷原漆器の館に行きました。
ここには主に器類があり、地元の栗の木を木地から挽き、塗りまで仕上げているところです。


バッド(下向き矢印)木地師さんの作業見学です。
DSCN2147.jpg

この機械は刃が固定してあるので、体験したいとお願いしたらさせてもらえました。刃は木地師さんが調整して、私は側面の持ち手をまわすだけなのですが、一定にまわすのは難しかったですあせあせ(飛び散る汗) その後に、刃が固定していない木地だけ固定してある機械のほうでの作業も見学しました。刃の微妙な当て方でどんどん木地の形が削られ変化していくのは見入ってしまいました 目ぴかぴか(新しい)

郷原漆器の館のろくろ



今回の会は本当に濃い時間でした。漆に関する様々な人に出会えましたし、すごく充実した時間がすごせ、大変お世話になりました。ありがとうございました。


3回にわたり、ありがとうございました。


* * * * * * * *


宮崎です。
いつもながら、盛りだくさん?の企画だったみたいですねexclamation ここの会は、このようなイベントいっぱいなんですよ。また漆を愛する方たちとたくさんお知り合いになることができるので、弟子もとても楽しかったと思います。
お世話になりました、私からもお礼申し上げます。^^


10_1_kanban_.jpgさて、左は弟子が、蒜山の植栽地近辺で撮った写真です。看板には「漆植栽地につき立ち入りはご遠慮ください」の文字が…。この看板の周囲のウルシの木たちも、大きくなっていましたよ。ムード


posted by 宮崎佐和子 at 21:11| Comment(0) | TrackBack(0) |   西日本の漆樹液産地

2009年09月26日

■第12回「西日本の漆を守る会」/2

こんにちは、弟子の芝吹です。晴れ

岡山で9/19〜21に開催されました、第12回「西日本の漆を守る会」に行ってきました。2日目と3日目の様子をご報告します。


2日目(9/20 日曜日)
1日目と同じ会場で、採れた漆の分析結果報告がありました。この分析は、林原化学研究所の方がしてくださいました。岡山の備中漆は林原共済会が応援してくれています。

この分析では、漆樹液の成分だけでなく、ラッカーゼという漆樹液内にある酵素の活性も調べてあります。ラッカーゼ酵素の元気さの測定だそうです。ラッカーゼ酵素があまりに弱っていると漆が乾かないそうで、ウルシノキから樹液を採取して切り倒した切り株から出てくる漆樹液がそれに当てはまる結果でした。
熟成の糖質の変化も調べてありました。熟成開始時に0.8%あった糖質が、熟成3日でほぼ無くなるという結果でした。私はもっとゆっくり進むものかと思っていたので意外でした。

次に、縄文時代の遺跡の発掘をしている方の話がありました。
漆を掻いた跡のある漆材や漆樹液を用いた工芸品、赤色顔料のついた物など様々な物が発掘されており、6500年前には既にウルシノキを育て、掻いて、塗って、掻いた木を建材として利用する総合的な利用法がなされていたのではないか?と言われていました。まだ確定ではなく、現在調査中だそうです。ずいぶん前からいろんな利用法がなされており、人々が生活を営むということの根本はさほど変化していないものなんだなと思いました。


3日目(9/21 月曜日)

バッド(下向き矢印)この日は蒜山で漆掻き体験がありました。

DSCN2121.jpg

奥に見える木もウルシノキです。


バッド(下向き矢印)2日目に講演してくださった発掘調査をしている方が調査している縄文時代に掻かれていたであろうやり方で掻いてみました。

DSCN2131.jpg

幹か枝かわからないけれども、直径10p以内の細い材に15センチ間隔に一周傷がつけられていたそうです。先の尖った石器で傷をつけました。そんなにでてきません。漆樹液が塗られた物が大量に出てきているのにこの掻き方でほんとにあれだけの物が出来上がる量まかなえるかな、と思ったより量がないことに疑問が深まった様子でした。この掻き方でも時期や採り方などもっと工夫すれば出でくるような気はしましたが、縄文の人はどうしていたのでしょうexclamation&question

次は、この続きの様子と郷原漆器をご紹介します。
ありがとうございました。


* * * * * * * *


宮崎です。
詳しくご存じない方には意外?に思われるらしいのですが… 漆の文化の歴史は古く、なんと縄文時代までさかのぼります。
過去の日記でも、少し触れているものがありますので、よろしければごらんくださいね。ムード

※縄文の漆に触れた思い出。(青森県の是川遺跡)
※古墳時代の「うるし採取あと」を見て来ました。
(埼玉県比企郡吉見町西吉見条里遺跡)


それにしても…。
漆を「分析」という化学的な立場から、そして、古人の視点に戻って再び眺める…というのは対極的にも見えますが大事なことですよね。^^ なかなか心にくい企画じゃないですか…。
そして、最終になります、次回3回目の報告を楽しみにしてくださるとうれしいです。



posted by 宮崎佐和子 at 23:35| Comment(2) | TrackBack(1) |   西日本の漆樹液産地

2009年09月24日

■第12回「西日本の漆を守る会」/1

こんにちは、弟子の芝吹です。
9/19〜21に岡山へ第12回「西日本の漆を守る会」に行ってきましたので、そのご報告をします。
「西日本の漆を守る会」は、岡山、京都、徳島の3箇所を中心に漆の植栽や漆掻きなどを進めている会です。その会の集まりが年1回あり、今年は岡山で開かれました。


■1日目(9/19 土曜日)

バッド(下向き矢印)はじめに、備中漆を使った作品展を見学しました。漆芸家の山口松太氏による解説がありました。
DSCN2102.jpg

備中漆はとても透けが良いのが特長です。


その後、場所を移して丹下哲夫氏の講演がありました。
丹下さんは「備中和紙」の岡山県無形文化財保持者で、昭和23〜37年には備中漆掻きもされていたそうです。37年までしかできなかったのはダム建設のためのようです。その期間に掻いた木の様子の話をしてくださり、全体としての傾向があるものの一概には言えず、何事にもその木と相談しながら進めるのが大事だというとこでした。

次に、産地の植栽の様子の報告がありました。
丹波、阿波、備中以外でも奈良の曽爾村や広島の芸北、愛媛、鳥取、和歌山、香川などどんどんと広がっているようです。鳥取、和歌山、香川の方は個人で植えていて、香川の方が漆のお酒(漆の実を焙煎してホワイトリカーにつけたもの)を作ったそうですexclamation 見た目は薄いコーヒーのような色で、香りもコーヒーに似ています。


1日目はこれで終了し、ホテルでの懇親会がありました。

バッド(下向き矢印)今までの会には出てきたことのない洒落た料理だそうです。私はまだ2回目なので、過去はわかりませんが去年のキャンプ場のコテージの大広間でのお弁当とは違い、豪華ですぴかぴか(新しい)
DSCN2106.jpg

2日目は分析結果などの報告です。その様子は次に紹介したいと思います。
ありがとうございました。


* * * * * * * *


宮崎です。
昨年の「西日本の漆を守る会」は、参加した漆芸研究所の研究生「あじさん」がレポしてくれた記事がありますよ。^^

※「西日本の漆を守る会」参加レポ/1
※「西日本の漆を守る会」参加レポ/2
こちらも、ぜひごらんくださいね。ムード

「備中漆」の復興は、岡山の企業、林原グループがメセナ事業として取り組んでいる事業の一つなんです。地元の団体(岡山県郷土文化財団)と力をあわせて、岡山の県北に植栽を行ったりいろいろ活動しているんですよ。
弟子も、今回はじめて岡山の植栽地(蒜山)に行ったりと、たくさん勉強してきましたので、アップしましたらまた見てやってくださいねexclamation


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posted by 宮崎佐和子 at 23:38| Comment(4) | TrackBack(1) |   西日本の漆樹液産地

2009年04月05日

■漆の手グロメ会の様子。

前回のレポの続きです。

こんにちは、弟子の芝吹です。
夜久野町までは香川から普通電車を乗り継いでいったのですが、意外に電車が混んでいてびっくりあせあせ(飛び散る汗)でした。姫路から乗る播但線は空いているだろうな〜とのんきに思っていたのですが、そんなこともなく、ぎゅうっとつめた状態で座っても座れない人が出るくらいでした。


さて、午前中の植栽に続き、午後は手グロメをしました。
バッド(下向き矢印)場所は『やくの木と漆の館』です。
1やくの木と漆の館
漆に関する書籍があり、教室が開かれたりしています。近くに温泉もあるそうです。


バッド(下向き矢印)少量なので、陶器の大皿と電熱やドライヤーの温風を利用しました。

4/4手ぐろめ準備



バッド(下向き矢印)始めに、皿に生漆を出して、へらでかきまぜました。

てぐろめ

この行程を『ナヤシ』と言い、生漆を攪拌させます。これにより、生漆内の水分などが細かく分散され、きめの細かい表情になり、光沢のある塗面に仕上がります。高分散させるほど高光沢になり、分散させないと艶消しの表情になるそうです。
生漆は昨年夜久野町でとれた遅漆を使いました。


バッド(下向き矢印)10分程なやすとこうなりました。

なやし10分後



次に、ドライヤーの温風を使って温めながら、へらで混ぜました。
バッド(下向き矢印)20分後の様子です。温度計で測りながら42〜43℃の間で進むように気をつけました。
手グロメ中

この行程を『クロメ』と言い、熱により水分を蒸発させながら、攪拌します。水分が3〜5%になるまでするそうです。攪拌時間や加熱温度などの調整により、艶具合や、乾燥速度などを好みのものに仕上げていくそうです。


バッド(下向き矢印)途中ガラス板に漆をのばして、様子を見なから40分程くろめると、こうなりました。上がなやしくろめた方で、下は生漆です。だんだんと、茶色くなり、透けてきました。

tuke.jpg

なやしくろめた漆は、素黒目漆(すぐろめうるし)と呼ばれ、精製された漆です。
この一連のナヤシとクロメをすることが漆の精製になります。

はじめての夜久野町で植栽と手クロメを体験でき、漆に関する興味深いお話も伺えて、1泊2日とは思えない濃い時間をすごすことができ、大変感謝しております。その他にも色々とお世話になりました。
夜久野町では今まで植栽した総数は、今回のを入れて、400本程になるそうです。また夜久野町や他の所にうかがえる機会がありましたら、ご報告したいと思います。最後まで読んでくださいまして、ありがとうございました。

* * * * * * * *

宮崎です。
このたびは、お疲れさまでした。^^
弟子は、夜久野のみなさんに可愛がってもらったそうで… ほんとうにありがとうございます。以前からおつき合いがあるのに、なかなかご紹介できなかった所だったので、この機会に地元の皆さんの取り組みの一場面をお見せできて良かったと思います。
この春に植えた苗や種が、ぶじ芽吹くのが楽しみです。ムード


posted by 宮崎佐和子 at 18:09| Comment(0) | TrackBack(0) |   西日本の漆樹液産地

2008年11月19日

■「西日本の漆を守る会」参加レポ/2

さて、第11回西日本の漆を守る会の交流会の2日目です。
参加者の皆さんは美しい高原のキャンプで、いい朝を迎えたようです。
この日はふたつの講習会があったそうで、西洋のラッカー技法「ジャパニング」の研究をされた北川美穂さん、日本の漆事情に詳しい(株)箕輪漆行の蓑輪圭二さんが講師として、興味深いお話をしてくださいました。


2008年8月24日(日)

塩原高原キャンプ場にて
 ・「海外の漆事情」のお話
 ・「国産漆の現状等について」のお話


二日目は、朝から二つの講習会がありました。
ひとつ目は「海外のラッカー事情」です。
ヨーロッパにある日本の漆芸品は、

●開国以前の日本国内向けに作られたしっかりした仕事のもの
●輸出向け用のヨーロッパ人オーダーの華美なもの
●輸出向けの下地なしの粗悪品

と、いろいろあるようです。そのうちにヨーロッパでも漆器を作ろうと試みて出来た、他の材料で漆器ふうに見える塗装・塗料技術があるそうです。しかしながら熱に弱かったり、多にもいろいろ弱点があり、食器には使えないそうです。(あじ)


11/19講習会資料
海外に出た古い漆製品。
11/19講習会資料
漆の表現をめざした「ジャパニング」の製品。
11/19講習会資料
「ジャパニング」に使われた材料。


漆本来の素材性よりは、日本漆器の持つ独特の色や質感、図柄等の見た目の美しさに当時のヨーロッパの人々が惹かれていたことがよく分かりました。(あじ)

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ふたつ目の講習会は「国産漆の現状等について」です。
今、日本産漆は日光東照宮の関係での大量使用により流通が減っているようです。これは、5年ほど続くそうで、増産のための方策として、漆掻きを休業していた人に再開してもらいやすくするための、今までの三割アップの値で掻いた分をすべて組合が買い取るというシステムにしたそうです。
そのために、2〜3年は大丈夫だとのことでした。けれど、だんだんと漆の木がなくなってきたその後が心配です。
この前は、国産うるしがだぶついていた状態だったのに、急に「増産」と言われても木はすぐに育たないし、今後安定した収入で漆掻きを続けていくためには計画生産の必要がある語られました。
漆の価格も、今回のことや景気に左右されて値の変動があり、漆掻きを専業で続けていくのは大変難しいと分かりました。漆掻きはとても技術のいる仕事なのにそんな状況だと、この先年季の入ったベテランの方々がいなくなり、漆本来の美しい漆も途絶えてしまうかもしれないと強い危機を感じました。
漆の仕事は本当にスパンが長く、一世代どころか三世代分くらいを考えていなくてはいけないと思いました。

今回は奈良県曽爾村(ぬるべの里)の方が町おこしで漆産地にするために参加しており、その方が「日本産漆がまさかだぶついていた状態だったとは知らず。このまま植林して育てても、何十年後の流通や使い道を考えていないとただ木のある所になってしまう」と危惧しており、私も同様に感じました。
日本産漆が、漆屋だけでなく産地から直で買えるようになればいいのになと思います。漆の木が樹液だけでなく、種(昔はロウを採っていたとき聞きます)や掻き殺して伐採後の木材などなど全て含めて活用したり塗料以外の使い道でも利用できれば、少しは1本から得られる利益が上がるのかなあ〜と単純なことを考えたりしています。
今回の会には、漆の科学的利用の研究をされている方も参加していました。

はじめて参加しましたが、皆さんそれぞれとても漆に熱〜い方々で、その熱さに圧倒されまくり?の2日間でした。こんな熱い方々がいらっしゃるんだから、私も日本の漆に少しでも貢献できるようがんばらねば!と身の引き締まる思いです。
皆様、本当にお世話になり、ありがとうございました。(あじ)


あじさん、どうもありがとうございました。晴れ

…当初は別の方がレポしてくれる予定だったのですが、その子が急に行けなくなってしまい、急きょピンチヒッターとして?「あじ」さんが書いてくれることになったものです。あせあせ(飛び散る汗)
アップするのがずいぶん遅くなってしまいましたが(もう11月‥)
皆さん、いかがだったでしょうか。

私は、この西日本漆を守る会の発足当時からのメンバーなのです。(発足した時は、まだ松本も私も研究生‥。会場は同じ徳島でした)
しかし、仕事を始めてしばらくしてから、いつも交流会が行われる8月末は秋から始まる催事の準備で忙しく、ずーっとご不沙汰。今年も、丹波の漆掻きのおっちゃん達が「顔くらい見せに来い〜」とおっしゃっていたんですが‥。ゴメンナサイ。

残念ながら、西日本の漆樹液産地は、非常に小さく生産量は各地でも10キロを超えることはそうないと思います。本当に、地元の有志の方々に支えられてこそ残っているものです。
漆をとりまく状況は刻々と変わっていっています。
こうした「地元力」に支えられている、小さな漆樹液産地ですが、若い世代の人が頑張って、それを大きくしそして担えるように力を付けていかないといけないなあとつくづく思いました。


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posted by 宮崎佐和子 at 22:18| Comment(0) | TrackBack(0) |   西日本の漆樹液産地

2008年11月18日

■「西日本の漆を守る会」参加レポ/1

「西日本の漆を守る会」の今年の交流会は、四国で唯一の漆樹液産地の徳島県で開催されました。
さて、どんな様子だったのでしょう?
初めて会に参加する、香川県漆芸研究所で漆芸を学んでいる研修生「あじ」さんがレポしてくれました。ムード


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2008年8月23日(土)

午後1時、徳島県三好市山城支所前に集合
→移動 東さんの漆畑へ
 ・漆掻き見学・体験


8/23、24に徳島県三好市で開催された「第11回西日本の漆を守る会」に行きました。今回は50人近くの方が参加されていました。
まず、8/23の1日目は、徳島の漆掻き職人・東さんの掻いている漆の木での漆掻き見学・体験です。
細い山道を車で登り、車から降りて歩き山道をそれて少し下ったところに漆の木がありました。(あじ)


11/18徳島の漆かき体験
うるし掻き中の木を前に、
参加者の方に説明する東さん。


この三好市山城町は、阿波池田や祖谷にほど近い地で(先日、合併して現在は同じ市になっています)、土地は傾斜面が多く、町の9割以上が傾斜地です。
土は黒くよく肥えており、また雨も豊富で気候も温暖、漆の木の成長はかなり早いです。
漆の木は、浄法寺町のように集中した畑はなく、渓谷沿の道路に面した斜面に点在する、という感じです。そして以前から植わっている漆の木のほか、東さんがご自分の土地に10年以上前から木を植えて増やしているんですね。


さっそく、そこで漆掻きを見学・体験です。
ウルシの木は、直径15〜18センチくらいです。阿波の漆掻きは、木を傷めないようにキズの間が広めにとってあるそうです。試しに掻かせていただくと、木が意外とやわらかく、キズを入れやすかったです。(あじ)



11/18徳島うるしかき体験

キズを入れるよりも、にじみ出た漆をヘラで取るのが難しく、なかなか1回ですくいきれなかったです。力を入れずに、キズのみぞに添わせて採るのですが、ヘラから漆がこぼれてしまい、何度もキズをさわって採るようになってしまいました。
何度もキズにヘラをとおすと、木の弱りにつながり良くないのだそうです。(あじ)


11/18徳島うるしかき体験

漆の木1本の漆の量は(人の血液量が決まっているように)決まっているそうで、たくさんキズをつければたくさん漆が採れるわけではないそうです。
木を弱らせないように、ちょっとずつ漆をとっていく「生殺し状態」が量をたくさん採るコツだとおっしゃっていました。
採った漆は今回特別の容器(ペットボトルとフィルムケースで作ったお手製)に入れました。
最後に、酸化を防ぐためにチッ素ガスを容器に入れました。(あじ)


11/18


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→移動 塩塚高原キャンプ場へ
 ・阿波・丹波・備中・吉野の漆分析結果のお話>

たいへん興味深い、産地別の漆の成分分析。
次は(株)林原生物化学研究所の渋谷孝さんが、講師としてお話をしてくださったそうです。いったいどんな内容だったのでしょう。
ではあじさんのレポに戻ります。

漆掻き見学・体験の次は、キャンプ場に移動しました。
そこで、阿波・丹波・備中・吉野の漆の分析結果の講習会がありました。

※分析材料
 1.備中漆(新見産、岡山県新見市法曹)7/23 小野氏採取
 2.備中漆(蒜山産、岡山県真庭市蒜山)7/24 小野氏採取
 3.阿波漆(徳島県三好市山城町)7/24 東氏採取
 4.丹波漆(京都府福知山市夜久野町)7/23 岡本氏採取
 5.吉野漆(奈良県宇陀郡曽爾村)7/25 小野氏採取


分析する限りでは、山地で多少の漆の成分に違いがあるもの、木自体の性質の違いとまではいえないそうです。木自体よりも、採取法、保存、精製の方が影響が出やすいようでした。
さて、保存に関しては驚いたことがあります!
漆には糖分が(確か)1パーセントあり、その糖分と菌が働いて漆の状態を変化させるのだそうです。
その菌の種によって、漆をいい香りにする時と臭い匂いにする時があるそうです。
私は日本酒や漬け物、味噌、醤油等の発酵食品と同じことかなと思いました。漆はまだどの菌がどんな影響を及ぼすかわかっていないそうですが、それが発見されれば漆も日本酒のようになったりするのだろうかと思いました。
そうなれば、地酒ならぬ地漆!? (あじ)


あじさん、ありがとうございました。
漆の発酵は私たちにとっても、とても興味深い課題です。
この「発酵」がうまく進むかどうかによって、その漆がどれだけ出世するか(良くなるか)がかかっていることを体験で知っているので‥。
ほんと、お酒と同じだと思います。
そしてコンディションのよくない漆と、発酵に適さない場所でも保存は、うまく発酵せずに「腐造」してしまうことがあります。
本当にデリケートで面白いですね。



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 ・お風呂、懇親会


さて、長い一日でしたが、お疲れ様でした。
お風呂と夕食のあとは、恒例の?懇談会です。「漆」をキーワードに集まった、西日本の漆かきさん、漆作家さん、漆を学ぶ学生さん、その他漆に関わることをされている様々な年代や立場の方が、一同に集って楽しく談義します。
(残念ながら、あじさんは疲れて爆睡してしまったそうで…翌日、友達に「盛り上がったよ♪」と言われたそうです)

明日のレポも楽しみです。

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2008年11月17日

■「西日本の漆を守る会」参加レポの予告。

今は希少な素材となってしまった、国産漆。
この「和うるし日記」では国産漆の現状を、岩手県浄法寺町産中心に紹介してきました。(浄法寺町は日本最大の漆樹液産地で、文化庁も保存に力を入れています)
まず、漆の樹液生産地というと、岩手、茨城、新潟… という場所があげられるのですが、こうした東北を中心をした地にしか漆が採れなかった…、というわけではありません。
ほんの数十年前までは、日本各地で漆の木が植えられ、漆掻きが行われて豊穣な文化の根底を支えていました。


さて、「西日本の漆を守る会」という、京都・岡山・徳島の漆掻きさんと漆に関わる方の会があります。これは平成11年に発足した会で、ほぼ年に一度のペースで、京都(丹波)・岡山・徳島の漆樹液産地で交流会を行って、国産漆、中でもまだ知られていない西日本の小産地の珍しい漆を深く知ってもらおうという、アットホームな集まりです。
京都には芸大、四国には香川県漆芸研究所があり「若い人にも知ってもらいたい」という西日本の漆掻きさんの熱意もあって、漆を学ぶ学生さんたちの参加者が多いのです。

今年の会の集まりは、8月にありました。
今回の会場は、徳島県三好市山城町。
一人で、阿波漆の採れる徳島の産地を守っている漆掻きの東官平さんがいらっしゃる地です。
実は工房の漆畑の木は、この徳島の阿波漆を植えているんですよ。^^

11/17山城町の漆畑
会が発足した9年前の交流会での
東さんの漆畑見学の様子。

懐かしい! 第一回目の会場も徳島県三好郡(現三好市)山城町でした。もう10年近くも前になるんですねえ。

バッド(下向き矢印)まだ学生だったその当時、私は初めて漆の木を見ました。
阿波うるしの木(山城町)
…開催が3月だったので、残念ながら
漆の木に葉っぱがない時期でした。あせあせ(飛び散る汗)


東さんには、苗を分けていただいたり、公開植栽の講師をしていただいたり…と、私たちも地元のよしみで、今もお世話になっているのです。

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さて今年の交流会は、私達は参加できなかったので…。
今回、交流会に参加した、漆芸研究所の研修生の「あじ」さんが、会の様子をレポートしてくれました。
今年は京都・岡山・徳島の三産地に加え、奈良の吉野漆の復興に関わる方たちも参加されてなかなかのにぎわいだったようです。
ご紹介するのがすっかり遅くなってしまいましたが、次回から2回に分けてアップしたいと思います。
どうぞごらんくださいませ。ムード


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posted by 宮崎佐和子 at 23:35| Comment(0) | TrackBack(0) |   西日本の漆樹液産地
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