毎日毎日鉄板の上でいるみたいですね〜。
朝8時くらいから、もうセミがわんわん鳴いていて、いっそう暑さをそそります。
さて、そんなお天気

の今日は、漆の精製にもってこい!
…ということで、太陽熱を利用した「天日精製」を行いましたので、ちょっとお見せいたしますね。


←この大きめのタライと、自作のカイを使います。
今回、精製する漆は、2007年産の浄法寺漆です。
大森俊三さんの末辺漆。よい漆なのですが…個性的な我が工房の漆たちの中では、いまいちキャラが弱いので、ちょっとテコ入れ?して特長を出そうということになりました。
(なんという理由…タレント事務所みたいですね

)
このままでは、個性派ぞろいの工房の国産漆の中で、埋もれてしまいそうです。
そこで精製で、ちょっと表情にエッジを立てるのが目的です。

このおとなしい子ちゃんの漆は、2キロちょっとくらいあります。

ちょっと風がありましたので、漆液がなびいています。
(量が少ないから、このタライでいけるだろうと思っていたのですが、これが後ほど困ったことに…)タライに入ったばかりの漆。

空気に触れた箇所は色が濃くなります。
漆樹液は、ウルシオールと水分その他の成分のエマルジョンです。
「漆の精製」は、その漆樹液を加熱撹拌することで、水分を飛ばし成分を均一化させることが一般的な目的です。
通常は、品質のよくない生うるしを精製して保存できる状態にすること、精製漆にして油や他の素材が混入しやすくするために行います。
人工熱で加熱し、専用の機械で撹拌することが大半の精製漆ですが、ここはノスタルジックにお日様の熱と人の手で行います。(だから、うちの工房では夏によく行われるんですね〜)

天日精製は、こんなセッティングでやってみました。

(ひそかにイベント好きのミルミルが控えています)
一般的ではありませんが好みのポイントとして、
(1)上にタープを張って、漆液の表面に当たる太陽光の量を調整
(2)扇風機で漆液の表面に送風
(3)パン発酵用のパンメーターを設置、温度を測る
…などがあるでしょうか。

ということで、漆液を手製のカイでゆっくりと持ち上げて落としていきます。

(ひたすらこのくり返しです)

…カラメルみたいな色ですね。いい漆はなんだか美味しそうな雰囲気を持っています。

温度を常にチェックします。最終近くはドライイーストのメモリあたりに上げていきます。

だんだんといい感じになってきました。もうちょっとで出来上がるかな?
…と、思っていたんですが…。
なかなか仕上りません。
ま、まだあがらないのはなぜ〜〜?

10時から開始して、すでに12時前…。
たった2キロの漆なので、もうお昼に余裕に間に合う予定だったのですが、意外とてこずっています。

もうちょっとなんですけど…。

どこまでを「仕上がり」をするかは、ガラス板に漆を薄く乗せて(いわゆるツケを取る)見てから決めます。

精製している漆をチェックする松本。もう少しのはずなのに、まだまだ。

12時半過ぎてから、やっとゴーサインが出て、精製完了となりました。

精製の終った漆ちゃん、キラキラです。
このあと、濾し上げされたました。

それにしても、けっこう時間がかかったのは意外でした。
ちょっと、このタライでは小さいうえに、深かったのかもしれません。

松本いわく、精製して表情を変えて見てみたい漆はわんさか控えているので、大きな精製用のフネをこしらえるかもしれないとのことでした。
…確かに、今回は2キロ強でしたが、五貫樽の漆(約19キロ)を精製しようと思ったら、かなり果てしないですものね〜。
さてさてそれにしても、大森俊三さんの末辺漆はとびきり変わった個性派ぞろいなので、おとなしめの漆は珍しいです。
どんなふうに表情が変わったのか楽しみです。

いつもありがとう…→ 
